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ある日タケルは幼なじみのカナコと真っ黒な部屋に閉じ込められた。ドアには一枚の紙が貼られていて、
《貴方達ニハ簡単ナゲームヲシテモライマス。ソレハ「デスマッチ」デス。勝負ハ3回マデ、勝ッタ方一人が出ルコトガデキマス。ナオ、ドンナ手ヲ使ッテモイイデス。相手ノ番ノトキノ妨害行為ハ禁止、ゲーム開始シタラ止メルコトハデキマセン。ソレデハオタノシミクダサイ。》
と書かれてあった。彼女の方を見ると訳の分からないといったように肩を震わせている。かといって俺も人生でこんな真っ暗で何もない部屋に閉じ込められたことなんてなかったからそれなりに震えていた。一刻も早く2人で出られる方法を探さなくては…。
「おい、大丈夫か?」
「……ッタケル君」
俺を見て目を見開くカナコ。
カナコはしばらくして落ち着いた。
「…どうゆうことなのタケル君?」
「俺にもよく分からないんだ」
しばらく沈黙が続く。沈黙を先に破ったのは彼女の方だった。
「わ、私こんなとこずっといるのなんて、無理!タケル君早く助かる方法探そう」
「そんなこと言ったってどうするつもりなんだ?」
「知らないわよ、出方なんて。だから探すのよ」
先ほどとは全く違う彼女にカツを入れられるように強い言葉を掛けられた。そうして色々部屋を探索したが出られるようなものはドアしかなかった。鍵が掛かっているわけではないドアは簡単に壊せそうだが不思議なことに開かない。
「…クソッ」
どうすることも出来ない状況の中で、彼女は言った。
「やっぱり、ゲームしたほうがいいのかな」
ゲームをした場合、どっちかはこの部屋からは出られない。そんなことが合っていいのか…
「な、なに言ってんだ…片方しか出られないんだぞ、ゲームしたら…」
「だって、これしか方法がないじゃない!」
「だからって!お前はそれでいいのか…?」
「……タケル君、ときにはヤらなきゃイケない事ってアルんだよ…?」
…もう手遅れだった…彼女はすでに
狂っていた…。
「さぁ、タケル君デスマッチヤりましょう?」
「目を覚ませ!カナコ!」
「なにヲ言っているノタケル君?ただのデスマッチだよ?」
そ…そうだ…ただのデスマッチだ…ジャンケンをして手の甲を叩くか叩かれるかの簡単なゲームなんだ。怯えるな…俺…!
「わかった…。やろうカナコ」
「やっとその気にナってくれタんだネ…」
ゲームを開始したらもう後戻りは出来ない。勝ちたい…でも、カナコをこんなとこにずっと居させたくない…!俺はどうすればいいんだ…。
『ゲーム開始!』カナコが叫んだ。
「…!」
いきなりゲームが開始してしまった…。一刻も早く考えなければいけない。いくら考えても時は流れていく。
「タケル君、ルールわかるよネ?絶対手離さないデネ?」
「あぁ…わかってる」
鼓動が早くなるのを感じた。
「…じゃんけんぽん」
タイミングを合わせて出した。俺が出したのはチョキ、カナコはパー、俺の勝ちだ。カナコには悪いが俺は彼女の手の甲を強く叩いた。
「…ッ!!」
強い刺激に目を瞑るカナコ。俺はふと違和感を感じた。デスマッチのルールは手を繋いでじゃんけんをし、勝ったほうか相手の手の甲を叩く。そのとき、「痛い」と言ってはいけない。また、手を離してはいけない。制限時間などはないはず。なのに、勝負は3回までとは…?
「アハッまずは負けか~」
明らかにカナコは楽しそうだ。
「ドウシタノ?一回目は勝ったんだよ?嬉しくないノ?」
「ち、違うこのデスマッチは…!?」
いきなりカナコに首を捕まれた。
「…ッ!」
「うるさいなぁ、死にたくないならやりナよ」
怖い…こんなカナコ見たことがない。
「…どーしたらヤル気になるかなぁ?そーだ!私、タケル君のこと、ずっと嫌いダッタの。なんでかわかる?わからないよね!そりゃタケル君は私のこと好きなんだから」
なにを言っているんだカナコは…?どうして、そんなこと知って…いや、こんなこと考えてる場合じゃないだろ!しっかりしろ!
「ホントきもーい。だからさ…私ここから出たいの。一人でね。そのためならタケル君を殺すことだってする。なんてったってルール違反にはならないからね…」
「そんなルールっ!」
ドアに貼ってある紙を再度見ると、
《どんな手を使ってもいい》
と書かれてあった。
「……」
このままでは俺は死んでしまう。雫が手の甲に落ちた。そうだ、勝てばいいんだ。最初からそうだったろ?
「2回戦目をやろう」
「あら?ヤル気になった?笑」
「じゃんけんぽん!」
俺はぐー、カナコはパー。カナコの勝ちだ。
「これで同点だね♪」
俺は手の甲を叩かれた。痛い。だが、もうそんなことどうでもよくなっていた。
「次、始めよう」
「せっかちねぇ」
「じゃんけん」
『ぽん…!』
グッ
「ぐぁ!」
俺はカナコのじゃんけんした方の手をつかみ、そのままカナコの首を絞めつけた。カナコの首に2人分の力が加わる。
「…!や…めて…!」
カナコがどれだけ止めてと言っても止めるわけにはいかなかった。
「こ、こん…なこと…して、ルール…違反…」
「ルールには書いてないよ?あくまで相手番の時になにかしたら違反だけど、まだじゃんけんの途中だから…ね?」
俺だって生きたい。
「俺は…カナコが好きだ…ずっと…だからこの手をどけることは出来ない」
「…ハァ?」
涙がカナコの頬に落ちてく。
「こんな狂ったカナコ、俺は見たくないんだ!これはきっと夢で、俺がここから出れば全て終わるんだ!」
勝手に口から出任せの言葉が出てくる。
「…グァ…ハッ…!」
カナコの口から出た血がお互いの顔に飛ぶ。
「血が飛んだよ?…綺麗だね❤」
「…!」
カナコの目が大きく見開かれたと同時に俺の手はさらに強い力を入れた。
次第にカナコが動かなくなった。俺は…勝ったんだ…。
ドアが開く音がした。これで俺は出られる…。嬉しい…でも、悲しい…。俺は好きな子を殺したんだ。涙が沢山溢れてとうとう声を出して泣いてしまった。昔から俺が辛いとき、悲しいときはいつも寄り添ってくれたカナコ。これからもずっと一緒だと思ってたのに…。
しばらくしても俺は涙を流しながら動かないでいた。ドアに貼ってある紙が風に吹かれて俺の手元に落ちた。
《…タノシンデクダサイ》
こんなデスゲームを楽しむなんて…出来るわけがないだろ…!ふとさっきまでのカナコを思い出す。
『どうしたらヤル気になってくれるかなぁ?』
『うるさいなぁ、死にたくないならやりなよ』
『私、タケル君のこと嫌いダッタの!』
カナコはこのデスゲームを楽しんでいた。俺には全然理解が出来なくて崩れた。カナコは俺のことが嫌いなのか…
「カナコ…」
俺はカナコがまだ好きだ今この瞬間も。紙を眺めながらカナコの死体の上に倒れた。カナコの最期にこんなことするのはきっと不愉快だろうけどさ、すまない許してくれ。
「…チュッ」
口付けを落とし、ドアに向かった。
「いままでありがとう…カナコ…♡」