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すっかり辺り一面も薄暗くなり、やがてピノコニーの空にも星々が昨晩同様に再度顔を出すようになった。
真夜中にも関わらず周囲の建物はギラギラと目眩がするほど輝きを放ち、夢境へ足を運んできている者たちの騒ぎ声が嫌でも聞こえてくる訳で。
少しでもこの都会のような騒がしさを感じたい、けれどその場に行くのは気が引ける…そんなブートヒルはピノコニー中心部から少し離れたドリームリーフでただただ街を見下ろしていた。
冷える冬の風に当てられて、艶のあるホワイトな長髪と彼の散々な生き様を表すような切れ切れの年季の入った緋色のマントがひらひらと揺れる。
約束通りに来なかった彼を思い軽くため息を付けば、白い吐息が目に見えて。なんだか、死んでいるはずなのにも関わらず生を嫌でも実感出来た。
「アイツはいつになったら来んのやら…」
誰にも聞こえないであろう声でぽそりと本音に近い言葉を吐けば、視界をシャットダウンするかのようにそのまんま下を向いて項垂れた。
【明日の夜10:00、貴方の任務が終わり次第ピノコニーから少し離れた場所で今日はお会いしませんか?】
恋仲であるアルジェンティからそんなメールが届いたのは確か昨日の昼過ぎ。正直あの時はブートヒルも突然来たまさかのお誘いに気分が上がっていた。 それがとてつもなく嬉しかったようで、早く会いたい、そんな気持ちを表さんばかりに彼は今日の依頼をいつもの倍のスピードで。弾丸の速さ並に終わらせてきたのが、この男である。
言われた通り時刻も珍しくきっちり守って、場所もメールの後に指定された場所へ向かえば運良く一番乗りだったようで。
最初は物の数分で来るだろう、なんて。今になればこの甘い考えがダメだったのか?
一刻一刻と時計の針は進み、約束の時間はからどんどん遠ざかって行く。その度にブートヒルの不安は大きく募って行き、「アイツがどっかでキューティーらに絡まれてんじゃねぇか…?」なんて彼らしくない心配事も考えてしまう。
30分までに来なかったらホテルへ戻ろう。きっとオレ一人の期待しすぎだ。
心でそんなことを唱えては、再度目を伏せる。
ああ、早くアンタに会いたい。こんなにも楽しみにしてたのが馬鹿らしい。いつもは約束を守り、忠誠を誓う純美の騎士相手に少しばかり裏切られた気分で、意識せずとも歯を食いしばる。
「こんなに会いてぇのはオレだけかよ…。」
はは、と乾いた笑い混じりに呟いて柵へもたれてる。オレは勝手に期待して空振ってるだけではないか、そんな嫌な考えも脳によぎってしまう。
やっぱりアイツはオレなんかが絡む相手じゃなかったんだ…なんて考えも横切った刹那、 その今までの寂しさを断つようなハッキリ、堂々とした聞き馴染みの声が聞こえた。
ついでにドタバタと物へぶつかりガンダッシュしてくる大きな物音も。
「っ、ブートヒルさん!!大変申し訳ありません、大切な人との約束を破るだなんて、僕はなんてことを…ああ、きっとイドリラ様もお許し頂けない悪業です。貴方もきっと許し難いことだと思いますが、どうかこの僕をお許し…」
「ホーリーベイビー!アンタこんだけ待たせやがってまた長々と話すつもりか?ったく…そういう長話は良いっての。」
ああ、クソッ…このままじゃまた純美とやらに基づいた長ぇ謝罪が始まってしまう、ぶんぶんと腕を振ってオレは拒絶した。
ぜえはあ、とあからさまに肩を揺らして急いできたであろう純美の騎士は、到着した瞬間跪いては懺悔を始めて。これ以上待たせられるのはごめんだ。 彼の言い分を遮り、じっとひたすらに綺麗な緑を見つめる。
「す、すみません…。実は僕もピノコニー自体は早めに着いていたのですが、途中道に迷ってしまい…害を及ぼす醜悪らも沢山いたため、次来る人を思い片付けていたらこんな時間に…」
かなり反省しているのか、しなしなのぺしょぺしょになってしまった純美の騎士は、謝罪と共に戦ってきた後であろう疲弊の顔も見られる。疑っている訳では無いが、どうやら一発殺ってきたのはマジらしい。
「わかったわかった、純美の騎士サマが善人活動をしてきたのは十分理解したぜ。だけど…オレが欲しいのは謝罪でも、反省することでもねぇよ?」
だから、こんなことすんな。ちゃんと立て。とアルジェンティに一声かけて勢いよく腕を引っ張る。
向こうは驚いてふらっ、とバランスを崩しかけたが、すぐに立ち直る彼を見て再度体感の高さを実感したような気がした。さすが純美の騎士だ、なんてつくづく思う。
「ですが…この一件を貴方にどう返せば良いのか。ブートヒルさんがお好きなものといえば…やはり、今からモルトジュースをめいっぱい僕から送るなんてどうでしょう?」
「ンー、アンタのその意見は気に入った、それもいいかもな。けど、違うぜ?」
頭にクエスチョンマークを浮かべてきょとん、とする目の前のダーリン。アルジェンティなりに考えた結果が、オレの好物をめいっぱいくれるという話。正直嬉しいモンだし、その案でもオレからすりゃもちろん良かった。だが…せっかく二人っきりなら、もっとキュートで尚且つ素敵な物を貰わなければ。
「アンタはオレを待たせすぎたんだ、好き勝手しても許されるよな」
「え、ええ…?お相手が貴方となれば決闘でも、その他なんでも引き受けますよ!」
ふふん、っとどこかやる気に満ちてる彼を見て思わず吹き出してしまう。今からするのはそんな戦闘なんかじゃねぇっつーの!
柵から離れては、アルジェンティと一気に距離を詰め、鼻が触れ合う寸前まで顔を近付ける。
突然の行動に純美の騎士は目をパチクリさせれば、段々と頬から顔全体まで赤く染めていった。
「ブートヒルさん…え、ええっと…なんだか気恥ずかしいですね…?」
「はっ、キューティーが!あえてそうしてるんだ」
初心な彼の反応が愛おしくてたまらない。 なんて、素直で可愛い恋人なのだろうか…。
そのまま頬にそっと口を付ければ、嬉しそうにくすくすと笑うもんだから、なんだかこっちまで嬉しくなってしまう。
「ン、何笑ってんだよ…」
「いえ、すみません。貴方が愛らしいが故に…」
「オレに可愛いなんか言う前に、まずは自分が可愛い事を知っといた方がいいぜ?」
「それは僕のセリフです、ブートヒルさんだって自身の魅力を知らないままではないですか!貴方は可愛らしさの中に美しさも兼ね備えたまさに僕の思う純美に相応しい人物…!きっと恋仲ということもありますがなにより…」
「アー、待て待て!分かった、分かった!!」
アルジェンティの熱弁が高まっては、ひらひらとバラがどこからともなく散ってくる。それと共に出てくる長ったらしい賛美。こんなに聞かされれば嫌でも恥というのが出てくるもので。
今のでオレは体内温度が急激に増えた、きっと見なくても相当顔が赤いだろう。これ以上は御免だ、とアルジェンティの口を手で抑えた。
「!?」
「ふ、良い子のベイビーなら少しの間黙っててくれ?…ほらいい加減場所変えんぞ。」
羞恥心を振り払うようににっ、と弧をかいて笑みを浮かべれば、向こうは素直に従ってくれた。外で、しかも風もある場所でずっと話してるのもオレにとってはもう飽き飽きだ。
彼の手を引いてそのままピノコニーの夜景と、屋上を後にする。
2人のいた後を表すかのように、情熱的なバラの花びらを床一面に残して。