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 どこかでそうなのかもしれないと思いながら、翔馬との蜜のようなひとときに執着していた。そのことを、こうやって他人から全否定されると、キツイ。
 「それから、駒井っちのご主人のことだけど」
 「そ、そうです、主人だって浮気してるんだから!」
 「違うよ、そんなことしてないよ。少なくとも私が知る限りはね」
 「だって!!」
 つい大きな声になってしまったのは、自分の浅はかさを少しでも誤魔化したい気持ちの表れなのかもしれない。
 「落ち着いて。あのね、ご主人の帰りが遅くなってるのはアルバイトをしてるからだよ」
 「は?」
 「半年くらい前から急激に仕事量が減って、お給料が下がったみたい。それで定時後にアルバイトをしてるみたいだよ。それが偶然にも私の友達のとこでね」
 「そんなこと、一言も言ってなかったし…」
 「心配かけたくなかったんじゃないの?駒井っちにさ。愛する家族にお金の心配をさせたくないんだよ。なんかさ、プライドがあって本当のことが言えないって、本人も言ってたし」
 「……」
 「愛するって、そういうことじゃないのかな?そこにお金を絡めてきたら、愛情なんかないと思うよ。だからカレは駒井っちのことなんて愛してなんかいない、ていのいい性欲の吐口と金ヅルなんだってば!」
 「そんな、どうしよう、私そんなこと知らなくて…」
 なんてことをしてしまったんだろう?当てつけのように翔馬とあんなことをした挙句、お金まで渡して。それも、夫がアルバイトしたお金まで使い込んで。
 ぴこん🎶
 その時、翔馬からLINEが届いた。
 
 《高速バスで、すられた!最悪だよ!ミハルに会いたいよ》
 ___まただ!
 この詐欺師野郎!とでも返信しようとしたら美和子に止められた。
 「その、カレからなの?」
 黙ってうなづく。
 「駒井っちの情報はどこまで漏れてる?住んでる所とか、仕事場は?」
 「住所も会社も言ってないし、名前も偽名…」
 「じゃ、もうやり取りは切って。今この場でブロックして」
 「でも、お金を返してもらわないと…」
 「それは無理、諦めなさい。これ以上関わらない方がいい。せめて被害が30万で済んだと思うようにして、ね!」
 「でも…」
 本当は100万だと言えなかった。言ったとしても返ってこないのは同じだ。美和子が言っていることもわかるし、なにより美和子にこれ以上呆れられたくなかった。
 
 「これ以上関わると、ご主人や家族にまで被害が出るかも?そう思ってすっぱり切る!これしかないよ」
 家族にも被害が?ないとは言い切れないかもしれなかった。狡猾に私からお金を搾取していったのだから。
悲しいより悔しい気持ちが大きかった。なんとかしてこの悔しさを翔馬にぶつけたいと思ったけれど。
 「とにかく、全て削除して忘れなさい」
 美和子にそう言われて、 LINEをブロックして、翔馬のデータを全て消した。