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『明日の夜、涼ちゃんの家に行きたい』
元貴から夜遅くにメッセージが届いて、それを何度か読み返す。
「明日····」
元貴が来てくれるのは嬉しい。
久しぶりのことだし、ゆっくり話もしたい···けど、明日はクロさんに会えるかもしれない日で。
少し迷いながら元貴に返信する。
『うん、待ってるね』
元貴を好きな気持ちに変わりはない。
けどそろそろ、この片思いも終わりにしないといけないのかなぁと寂しく考える自分がいた。
だって、報われない恋なんて···寂しいだけ···。
ベッドに潜り込み気付けば眠っていた。 夢に出てきて後ろから追いかけたその人は元貴にも見えたしクロさんのようにも思えた。
「お邪魔しまーす、あれ、涼ちゃん部屋綺麗にしてる」
「あのねぇ、人が来る時くらい片付けてるよ」
確かに前に元貴が来てくれた時より片付いてるか、としばらく前のことを思い出す。久しぶりに部屋で2人きりと改めて思うと少し照れくさい。
「ところでどうしたの?急に···何かあった?」
お茶を入れてソファに2人で座ると元貴は僕を見つめて少し怖い真剣な顔をしている。
「···何かないと、来ちゃだめってこと?」
「そんなことないよ!けど急にだったから···何かあったのかなぁって心配しちゃった」
なにもないならそれでいい、元貴が会いたいと思ってくれて嬉しいし、なんて思いながらゲームを取り出す。
「久しぶりに一緒に···ぇ?」
辛うじてゲームを落とすことは無かったけど、なんで?
なんで僕は今、元貴に抱きしめられている···?
「ムカつく」
「はぃ?」
抱きしめられながらなんか僕怒られてる?理解出来ない状況に身動きが取れずに驚いていると元貴の顔が首に押し当てられて、刺激が走る。
「ぁ···っ?」
ぞわぞわと気持ちよくてヘンな声が出る。元貴の舌が首元と鎖骨あたりを舐めて、ぢゅっと強く吸われる。
「もとき?!ん、ぁ···っ!なんで···」
なんで···?その問いかけに返事はなく、元貴は柔らかい唇と舌を僕に押し付ける···気付けば手がTシャツの裾を捲くりあげてお腹のあたりに触れていた。
「ちょっと待って!なんでこんなことするの···?や、だよ··· 」
いくら好きだからって···ううん、好きだからこそこんな風にされるのが辛くて元貴の手を押さえた。
「···俺はだめなの?」
「どういう意味?元貴の言ってることもやってることもわかんないよ···」
離れようと身を捩ると両腕を押さえられて強く唇を押し付けられる。
その柔らかさと甘さに一瞬だけ流されてしまいそうになる。
けどこのまま流されて受け入れてそのあとは···?僕はどういう扱いになる?
「だめ···っ!!」
思いの外、強い力が出て元貴を押しのける。元貴は驚いた顔をしてから、眉をハの字にさせて傷ついたような寂しそうな表情になる。
「···ごめん、嫌なことして···」
カバンを掴むと元貴は家を出て行った。静まり返った部屋で元貴と僕の間で何がおきたのか理解するまでに少し時間がかかった。
なぜかわからないけど、怒った様子で突然抱きしめられて首元と唇にキスされた。
なんで元貴は怒ってたのか、それなのにあんなことをしたのか。
わからない、わからないけど···。
「キスがいやだったわけじゃないよ···」
ひとりで悩むには難しすぎて僕は急いでクロさんに会えますようにと願ってけさあの携帯だけを掴んで家から飛び出した。
気持ちがぐちゃぐちゃで誰かに聞いて欲しい、その想いだけで。
コメント
3件
なんてすれ違いっぷりなんだ。切なっ!藤澤さんに「好き」って気づいてほしいわ
更新ありがとうございます✨ ❤️君も💛ちゃんも両方想い、切ない💦 思わずクロさんの所へ行っちゃうのね🥹 どうなるのか、続きが楽しみです✨
続きが楽しみです!