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蝉の声が聞こえる、梅雨明けの時期。外は梅雨明け独特の湿気を纏っている。部屋の中は冷房がきいているが、湿気のせいで肌がベタベタしていて気持ちが悪い。除湿をつけても変わらないこの湿気さに嫌気をさす。
そんな中、ピンポーンと家中に音が響く。ちょうどテーブルを大人っぽく青系の色で統一し終わった私は、玄関を開ける。
そこには、高校時代からの付き合いである親友2人がいた。
事情があり、私は高校1年生の冬に東京から静岡に転校することになったが、この2人とは連絡を取り合っていた。でも、お互い学業などで忙しく、あったとしてもLINFのビデオ通話で楽しむ程度。
そんなこんなであっという間に6年間が過ぎ、大学もある程度落ち着いてきた頃、親友の1人である結衣に集合をかけられた。結衣が声をかけたのにも関わらず、集合場所は私の家という矛盾があったが、3人の都合が揃う日はなかなかないので快く引き受けた。
お邪魔しますという2人の声を背中でききながら先程セッティングしたテーブルがあるリビングへ案内する。
ビデオ通話なので顔を合わせていたとしても、実際に対面するのは6年ぶりとなる。嬉しくてたまらない感情を抑えながら席に着こうとしたその時、後ろからガバッと抱きしめられた。いきなりのことすぎて小さく声を上げ、後ろを振り返ると泣きそうな、でもどこか安心しきっているような顔をしている結衣がいた。その後ろにいるもう1人の親友である姫乃も同じような顔をしていた。何事かと思い、大丈夫かと声をかけながら椅子に座らす。綺麗に整えられたテーブルには似合わない雰囲気だったが、あまりにも彼女らが今にも泣きそうな顔で私を見てくるのでオロオロしていると、結衣が口を開いた。
「よかった」
と。一瞬なんの事か分からずにいると、言葉を補うように姫乃が「ほら、高校の時色々あったじゃん。そこから6年間も実際に会えてないと思うと色々心配で…」と言った頃には全てを理解していた。
私の最後の記憶にある高校1年生の時の2人の印象を比べてみると、手の爪先まで綺麗にネイルをして整えられ、服装もしっかり気品のある2人を見るのは初めてで斬新だったが、こういう優しいところは全然変わらないんだなと思いながら大丈夫だよ、と宥める。「でも、ほんとに元気そうでよかったんだもん」という結衣を見て、私は力強く言った。
「大丈夫。あの頃の私はもういない。」
これは、初めてできた親友2人に〝普通〟を教えられ、私の人生が変わった高校1年生の時のお話。
第2話 あの日の出来事
coming soon𓂃❁⃘𓈒𓏸