波の音が懐かしい・・・直哉はベッドで眠ってしまった彼女を、じっと抱きしめ見つめていた
内田和樹の言った通り、ずいぶん顔色が悪い、コピー用紙のように真っ白だ
貧血だろうか・・・さっき裏口に立った時も心なしか、フラフラしていたように感じる
思わずベッドに寝かせたけど、今の彼女はあまりにもか弱く儚い
ここまで放っておいた自分を呪った、てっきり彼女は自分と別れてせいせいしていると思っていた
とにかくここでは彼女に色々してやれない、家に連れてかえろう、あそこにはお福さんもアリスもいる、きっと彼女の力になってくれるだろう
直哉は紗理奈のクローゼットを開け、スーツケースに色々衣装を詰め込んでいった、当面必要なものだけにして後はまた運べばいい
スーツケースをゴロゴロ引きずって、リビングを横切る時、ソファーに座っているレインボーキティに目がいった
「お前もいっしょに来るか? ん? 」
レインボーキティを小脇に抱え、スーツケースをトランクに詰めキティもその横に置く、そして最後に紗理奈を運んだ
そっと助手席に彼女を乗せると、眠そうな目を擦って彼女が起きた
「ナオ・・・・どこに行くの?」
車のシートに身を沈めながら紗理奈が言う
「シー・・・幌ほろを降ろすから、眠ってていいよ、着いたら起こしてあげる 」
彼は紗理奈のおでこに優しくキスをした、疲れ切って言い争う気にもなれず、紗理奈はゆったりとシートに身をゆだねると目を閉じた
直哉は全部屋の戸締りをしっかりし、最後に24時間可動式の給湯器の電源を切った
全てのブレーカーの電源を落とし、水道とガス栓の元をしっかり閉め、最後に鍵をかけて尻のポケットに入れた、当面はここに帰ってこないだろう
眠っている紗理奈の横に再び、乗り込んで来た直哉の気配を感じた
彼のボディーソープの香りが紗理奈の頭を満たした、エンジンの規則正しい振動が心地よい
「ナオ・・・まだ何処へ行くか、聞かされていないわ・・・ 」
眠りながら理性だけは行き先を知りたがっている、直哉は少し笑って答えた
「俺の城成宮牧場だよ、今日から君はそこで暮らすんだ」
:.*゜:.
「紗理奈・・・着いたよ 」
耳元でやさしく囁く声がする
「サリー・・・」
「うう~ん・・・」
「歩けるかい?」
「ううん」
クスクス笑いが聞こえたかと思うと、紗理奈は逞しい腕に抱き上げれられていた、自分はどこかへ運ばれている
ナオの心臓の音・・・耳元に彼の厚い胸があって、二人の鼓動が溶け合っているようだ、力が入らない腕を彼の首に回す気力もない、頭を彼の顎の付近にもぐりこませた
直哉の履いているスケッチャーズのスニーカーの、踵の音が変わったどこか家の中に入ったのだ
重い片目をうっすら開けると、そこには広々とした大きな階段が目に入った
だがそれもつかの間、また自然とまぶたが閉じてしまう、ふわふわと階段を上っている
あまりに眠い
目を開けらていられない
しっかりしなければと思う固い意志は、弱々しく消えてゆき、彼のたくましいぬくもりに身を寄せた
部屋に入るとセンサーで明かりが薄暗く灯った、紗理奈は目を閉じたままだったが、まぶたでそれを感じた
ベッドに横たえられてはじめて目を開いた、上方に天蓋が見える
「ほんとうにもうご用はございませんか?」
「ああ・・ありがとうお福さん、彼女の面倒は俺が見るから遅いのに起こしてしまって、すまなかったね・・・おやすみ」
「おやすみなさいませ」
声は聞こえているものの目を開けることが出来ず、紗理奈はまた深い眠りに落ちて行った
ドアが閉まると部屋は静まり返った、直哉がベッドの端に腰掛けたので、紗理奈の体が沈んだ、彼はやさしく彼女の頬を撫でた
「ずいぶん衰弱してるな・・・大丈夫なんだろうか・・・」
直哉は紗理奈をみて眉に皺を寄せた、心配でたまらない、こんな事ならもっと早く彼女に会いにいけばよかった
忘れていた彼女の強情さを
そっと頬にキスをして顔を上げると、無意識だろう紗理奈の微笑みが浮かんでいた、少女のように可愛い
何か良い夢でも見てるのだろうか、直哉は人差し指で彼女の唇の端に触れた
片手を紗理奈の首にあてがって、頭を持ちあげるとそっと枕を差し込んでやった
豊かで真っ黒なシルクのような、直哉が大好きな髪は扇のように広がり、艶やかに波打っている、何かの動物の毛の様だ
その髪の小川に手を入れ、指でやさしく梳く、ずっとこうしたくて夜も眠れなかった
服を脱がせた方がいい、シルクのブラウスのボタンを開き、片腕ずつ抜いてそれを脱がせた
えんじ色のレースのブラジャーに包まれた、美しい美乳にできるだけ目をやらないようにして、ブラジャーをはずし下のスカートも脱がせる
彼女の姿に直哉の股間が熱くなったが、欲望を抑え、淡々と着替えさせた
華麗な女性遍歴のせいか、直哉は女の下着姿にショックを受けるようなことはほとんどなかったが
それでも紗理奈のブラジャーと同じ色の、ガーターストッキングを目にした時は、驚かずにはいられなかった
パンティストッキングとばかり思っていたのに、彼女はガーターベルトを装着するタイプの女性だったのだ
さすがだ
彼女のこの優雅な趣味は称賛するべきだ
自分の奥さんになる人の下着の趣味には、大変興味が湧いた、そのひとつひとつをこれから発見していくのだ
また直哉は紗理奈をじっと見つめた、永遠に見つめていられる、嫌らしい気持ちではなく絵画を鑑賞するように
乳房が呼吸にあわせて静かに上下する
彼女は他の女とは違う、直哉は彼女にいつも驚かされ、興奮させられる
なんたって最初の出会いは、男娼に間違われたのだから
彼女に会って以来退屈な事はなかった、こんなことは生まれてはじめてだ、自分が一人の女性にここまで執着するなんて
器用な手つきでガーターを外すと、くるくるとストッキングを丸めて下ろして行く、しなやかな太腿から形の良いふくらはぎ細い足首へと
はじめて会った日に、この脚を隅々まで自分の唇でたしかめた、内太ももの柔らかさを舌が覚えている、感じやすい親指を口に含むと紗理奈は欲望に燃えた
また直哉はいかん!いかん!と首を振った
鮮やかに蘇る記憶がいまいましい、今は欲望のままに彼女を抱けない
まずは容態を把握して健康な体にしないと、メシを食っていなかったのだろうか、少しあばら骨が浮いている、早急にお福さんやアリスの助けがいるだろう
ガーターベルトもストッキングもすべて外して床に放り
持ってきた紗理奈のナイトドレスに着替えさせた、眠っているのに我妻はピンッと乳首を尖らせている、それがナイトドレスを突き上げている
なんだか今夜は苦しい夜になりそうだ、放っておくといつまでも無防備に寝ている、彼女をじっと観察してしまう
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