テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
初めて見た夕陽は、目が焼き尽くされると思うほどの眩しさだった。
「兄貴ー、起きろー」
まだ人工太陽が昇っていない時間帯に起こされた。あまり朝が強くない俺ーー楠木透は少々不機嫌の状態で再度毛布に包まる。
「ぅー………寝かせろ」
「いやそっちが昨日頼んだじゃん。今日祭りでしょ?」
「………あ」
祭りの存在をすっかり忘れていた。毛布を蹴飛ばしながら勢いよく起き上がり、急いで朝の支度をする。
弟ーー凛は馬鹿だなと言わんばかりの目で見てくる。
何を隠そう今日は本物の太陽が昇る日なのだ。俺らみたいな子供は勿論、両親と祖母の世代からまともな太陽が来ていない。曽祖母と曽祖父以前の時代にはあったらしいが、ぶっちゃけ信用はされていない。
俺の記憶上では2人はこの祭りをかなり嫌っていたが。
そうこう余計な事を考えている内に着替えと食事と歯磨きを済ませたので、ようやく祭りに行ける準備が整っている。
両親は、行ってらっしゃいと笑顔で言ってくれた。
人工太陽が昇っていない時間帯ながらも、人はそれなりにいる。朝焼け、というのを見に来るためだろう。もう30分したら人が更に増えるであろうから、今のうちに穴場スポットを探す。
「あーマジで楽しみ!これが浮き足立つ、ってやつ?」
「そんな日をすっぽかしそうだったけど」
「ははっ、黙れ」
そんな掛け合いをしつつも、しっかり捜索していく。だが、探せど探せど開けた場所には人が必ず集っていた。近くの川の土手なら、と思ったが、やはり埋め尽くされていた。
途方に暮れつつ土手から降りて数分経った頃だった。
「なぁ、こんな所に駅なんてあったっけ?」
全く知らない駅があった。中は昔ながらの木材でできていて、直ぐに路線が見える。
「いや、知らない。それどころか電車も鉄道も見えなかった」
2人顔を見合わせる。目は恐怖で震えつつも好奇心で輝いていた。4回くらい目が合ったタイミングでようやく2人とも足を踏み出した。 もしかしたら綺麗な朝焼けを見れるかもしれない。
本当に昔ながらという言葉が似合うくらい昔だった。改札口が無く、あるのは券売機。ただ疑問に思ったのは、無料で買えるということだった。
近くに説明書もなさそうだった。まぁ多分車掌さんに切符を切る際に払うんだろうな、そう思って2枚分機械から出す。
「「眩しっ!」」
路線を見れるくらいの距離まで歩き進めると、シンクロするくらい目を刺すような光が視界に入り込んだ。地面はオレンジ色で埋め尽くされていて、それの反射がキツい事に気づいた。
ゆっくりと目を開けると、その眩しさなんて打ち消せるくらい綺麗な景色が目に入った。
「………すげ」
「こんなに綺麗なんだ……」
日光の位置から朝焼けではなく夕焼けだと分かる。
その感嘆に浸っていると、電車がやってきた。