【 プ ロ ロ ー グ 】
── きっかけなんて 、 ほんの一瞬だった 。
いつものように煌は 、 夜の配信を終え
ベッドに倒れ込んでいた 。
リスナーのコメントを見返しながら 、
SNSのタイムラインをぼんやりと流していたそ
のとき 。
企業の公式アカウントが上げた
なんでもない広報写真が目に止まった 。
「 …… あ 。 」
画面の隅 。
書類を抱えてエレベーターから降りてくるスーツ姿の青年
周囲に埋もれるように写り込んでいる 、
ただそれだけの存在
だけど 、 目が離せなかった 。
まるでそこだけ 、
空気が違うように見えた 。
── 、 この人
指が勝手に動く 。
アカウント名を辿って 、
会社のプロフィールを覗き 、
さらに関連の投稿を漁って 。
ようやく名前を見つけた
“ 深瀬 仍樹 “
「…… っ、名前も可愛いとか 、反則だろ……」
煌はほとんど眠れなかった 。
配信者としての人気も 、
そこそこの稼ぎも 、
今の生活も――
すべてどうでもよくなっていた
「行くか … _ _なおくんのとこ@東京__」
明くる朝 、 煌は会社に退職届を提出した 。
数日後には荷物をまとめて 、
深瀬の元へ引っ越した 。
何をするにも
どこへ行くにも
何を見るにも
頭の中にはずっとスーツ姿でこちらを見ない
淡い光を纏ったような彼の姿があった 。
最初は 、 DMさえ読まれなかった 。
それでも送った 。
毎日 、
くだらない写真や 、 応援の言葉 、
どこかで見かけた可愛い動物の話題 。
── 「 怖い 」と思われても構わなかった 。
ただ 、知ってほしかった 。
あの写真を見て 、
自分の心がどう変わってしまったかを 。
ーー そして数ヶ月後
静かに 、 でも確かに返事が来た 。
『 会ってみますか 』
たった一言 。
それだけで 煌の人生が
世界ごと 報われた気がした 。
今 、 隣にいる彼は口数が少なくて
いつも静かだ 。
だけどたまに 、
ふと視線を合わせてくれるだけで 心臓が跳ねる 。
── この人のために 、人生変えてよかった 。
そして今日も 。
こっそり撮ったとなりの寝顔を SNSに上げそうになる手をぐっと堪える 。
「 なおくん、マジで可愛いんだけど……もう、無理…… 」
すっかり溺れきった声が
夜の部屋に零れ落ちた 。
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橘 煌 (たちばな こう) ・25歳 / 攻
会社のSNSに写ってた深瀬に一目惚れし 猛アタックの末、 現在は完全両想い&煌→仍樹溺愛中
身長 : 180代半ば
職業 : ゲーム実況者 ( 顔出し無し )
深瀬 仍樹 (ふかせ なおき ) ・ 22歳 / 受
会社の広報でちょっと写っただけなのに、人生を動かすことに
身長 : 181cm
職業 : 広告会社
※ 発達グレーゾーンを抱えており発達特性あり(ASD/ADHD傾向)だが未診断
静かで口数が少なく人付き合いも得意ではない