テラーノベル
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夜の街は、春の眠りに包まれていた。
家を飛び出してきた俺は、行き先も決めないまま夜道を歩いた。
冬の名残を含んだ風が頬を撫でる。
それでも、どこか柔らかく、冷たさの奥には春の気配が滲んでいた。
街灯の下を通るたび、風に揺れた桜の花びらが足元へ落ちてくる。
やがて、見慣れた公園が見えてきた。
誰もいない夜の公園。
静かな遊具と、淡い街灯の明かり。
そして、夜風に揺れる桜。
俺は、その中へ足を踏み入れた。
やがて、小さく息を吐いてブランコに腰を下ろす。
鎖が、かすかに軋んだ。
夜風が髪を撫で、桜の花びらが視界の端をひらひらと横切っていった。
きい、きい、と規則的に響く音だけが、静まり返った公園に残る。
俺は何も言わずに、自分の足元ばかり見ている。
「何でこんなことになっちゃったんだろう…」
胸の奥がぎゅっと締めつけられて、気づけば視界が滲んでいた。
お父様は俺が医者になることは許してくれなかった…
俺は…医者にはなれないのかなぁ
俺は俯いて涙を堪える。
だが、堪えようとすればするほど、胸の奥から込み上げるものが大きくなっていった。
俺の夢…
なくなっちゃったな…
俺は今まで医者になるために勉強も
運動も…
習い事も頑張ってきたのに…
俺は悔しさから下唇を噛んで、俯く。
「ねぇねぇ、君って一ノ瀬四季君⁉︎ 」
聞いたことのない声から俺の名前が呼ばれた。
俺は反射的に顔を上げた。
声の主は淡いピンクの髪色の持ち主だった。
チャラそう…
俺のその人への第一印象はこれだ。
「京夜、いきなりすぎだ」
「こいつフリーズしてんぞぉ」
「あぁそっか汗、ごめんね?」
俺が唖然としているとピンク髪の人の後ろにいた黒髪の二人組がそう言ってくれた。
一人は背が高くて凄いかっこいい人。
もう一人は俺より背が低くて、ポーカーフェイスっぽい人。
「ねぇ君ってやっぱり一ノ瀬四季君だよね⁉︎ 」
「え…あ、はい…」
この人、どうして俺のこと知ってるんだろう…
「やっぱり⁉︎ 遠くから見てそうかも!って思ったんだよねぇ✨」
「へ、へぇ…」
「俺達ずっと四季君と話してみたかったんだ!」
「そ、そうなの…?」
「うん!」
ピンク髪の人はとても明るくて、俺は返事をするので精一杯だった。
「思ったより普通だな、お前」
「真澄、失礼だぞ」
「本当のことだろ」
「ちょっとまっすー!…って四季君どうしたの!その耳!」
「え?…あぁ、まぁ色々あって」
「ちょ、手当するから耳だして!」
「いいよいいよ、赤の他人の手当てなんてしたくないだろ?」
「そんなことない!」
「!!」
「京夜はそんなこと思う奴ではないから安心しろ」
「チッ、いいから手当てされとけ」
「…」
この人達は温かい人なんだろうなぁ…
「よし!じゃあパパッと手当てしちゃいますか!」
「…ごめん」
「いいっていいって!」
そこからはしばらく誰も言葉を発さなかった。
俺は手当てをされながら、暗闇に光る月を眺めていた。
「このまま時間が止まっちゃえばいいのに…」
思わずそう溢したが、四季は口に出ていたことに気づいていなかった。
時間が止まれば、勉強もしなくていい…
何かに悩む必要もない。
それに…
父さんに会わなくて済む
「…四季」
「ん?」
「何かあったのか?」
「…え?」
「なぜこんな所に一人でいた?」
「…」
何でだろう…
自分でも分からない。
ただ今は、お父様の近くにいるのは苦しかった…
…
どうして苦しかったんだろう
別に今までと対して変わらない
怒鳴られるのも
物を投げつけられるのも
今までも何回かあったはずなのに…
あぁ、そうか
俺は悲しかったんだ
きっと応援してくれると思ったんだ
俺が医者になることを
でも実際は違った…
「…俺ずっと夢があったんだけど、父さんに反対されちゃってさ」
「…」
「いやぁ、それでちょっと喧嘩になっちゃって笑」
「ちょっとじゃないでしよ?」
「え?」
「この傷四季君のお父さんにやられたんでしょ?こんな怪我してる時点でちょっとじゃないよ。」
「はは笑、大袈裟だって」
「大袈裟ではない」
「ふっ笑、大袈裟だよ」
「じゃあ何で泣いてたんだよ」
「え…」
「目の下赤けぇんだよ」
「…」
この人達すげぇな
そんなことに気づくなんて…
「…四季君僕ね!医者になるのが夢なんだ!」
「!!」
「誰かの役に立ちたい。誰かの命を救いたい。だから俺は医者になる。たとえ、親に止められてもこれだけは曲げるつもりない」
そう言うピンク髪の人の瞳には強い意志を感じた。
あぁ、この人ならそうだろうな…
今だって赤の他人の俺をこんな丁寧に手当てしてくれてるんだから。
きっとこの人に担当してもらう患者さんは安心するだろうなぁ。
俺にはそんな技術も、優しさもない。
最初から医者になんて向いてなかったのかもな…
「ありがとう…俺決めたよ」
「!!、それなら良かった!」
「…」
俺はお父様の会社を継ぐ。
この人の言葉を聞いたらそう思えた。
この人には敵わない。
俺は医者には向いてない。
「よし!手当て終わったよー」
「さんきゅー」
「良かったな」
「おう……なぁ」
「チッ、何だよ」
「名前教えてくんない?」
「もちろん!俺は三組の花魁坂京夜」
「無陀野無人だ」
「淀川真澄」
「みんな名前かっこいいな!」
「そうか?」
「うん!」
「えー!ありがとう!」
「チッ」
「無陀野さんと淀川さんも三組?」
「そうだよ!僕達三人は小学校から一緒なんだ!」
「え、まじ⁉︎ すげぇ仲良いんだな!」
「えへへ、でしょ?…ってもうこんな時間⁉︎ お母さんに怒られる!汗」
「おぉ、まじか」
「ほらダノッチもまっすーも早く帰るよ!またね、四季君!」
「あぁ」
四季はどんどん遠ざかる三人の背中を見送った。
面白い人達だったなぁ
四季は深く深呼吸をして、家へと足を進めた。
皆さん、こんにちは♪
★HOSI★です!
第六話「三人との出会い」をご視聴いただきありがとうございます!
私事ではあるんですが、今日は私の誕生日でした!
友人からは真澄さんと京夜さんのイラストを描いてもらいました!
嬉しすぎるー!!!
次回も読んでいただけると嬉しいです‼️
コメント
3件
うわああ第6話読んだよ〜!!😭💕 夜の公園の静けさと桜の描写がめっちゃ綺麗で、四季くんの切なさがじんわり伝わってきた…!「時間が止まっちゃえばいいのに」って呟き、胸がぎゅっとなったよ。そこに現れたピンク髪の京夜くんたちの温かさが沁みる…!「医者になる夢」を堂々と言い切る姿まぶしすぎたし、四季くんが心から「敵わない」って思う気持ち分かるなあ。でも決して劣等感じゃなくて、新しい一歩を踏み出そうとしてる感じが尊い。 それに、作者さんの誕生日おめでとうございます🎂✨ 友達が描いてくれたイラストも最高ですね!次の話も楽しみにしてまーす!🌸