テラーノベル
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没 : 過去作に少し加筆したもの
やまさく(えんさく) / かめさく / WB腐
🏹ばっか優先しちゃう⛰️
それでモヤモヤしちゃう🌸。
最終的に🐢🌸になる予定でした
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『わりぃ、焚石に呼ばれたから行ってくるわ』
『あ、焚石! ちょっくら様子見てくるわ』
『焚石の凄さって言ったらそれはもう ……… !!!』
口を開けば焚石の自慢。 姿を見つければ直ぐに駆け寄っていく。
それは恋人関係にある桜の前でも遠慮なしに発揮された。
それを桜がどれほど気にしているのかを気づいていないのか。それか 気づいてわざとやっているのか。
『惚れたからだよ』
そのセリフには嘘はなかったと思う。
実際国崩大火の後もちょくちょくお茶に誘われたし、口説かれた。
最初こそ顔を赤くするだけでそこまで気にしていなかった。 だが、言われれば言われるほど意識し出して、ついには桜自身も棪堂と同じような感情を抱くようになった。
ある日のこと、いつものようにお茶をし、口説かれた時。
『俺やっぱ桜のことが好きだわ』
そう満面の笑みで言われた時、 いつもなら顔を赤くして何言ってんだ!ぐらい言うつもりだった。
なのに口をついて出た言葉は全くの逆。
「お、 れも … 」
多分そこまで大きな声ではなかったと思う。 だが棪堂の耳にはバッチリ届いていたようだ。
普段ではありえないほどに目を見開き固まっていた。 と思えば両目からありえないほどの涙がボロボロと落ち始めていた。
桜は最初こそ自分が口にした言葉に対して赤面して、今にも逃げそうな感じであったが、棪堂が涙を流し始めてからは棪堂に負けないぐらいのぎょっとした顔になった。
棪堂が泣くなんて思ってもいなかったため、かなり焦ったしかなりビビった。
棪堂曰く、元々叶わぬ恋としてこの状況を楽しんでいただけらしい。
まぁいつもの焚石を追いかける姿勢を見ればそう言われても頷ける。
棪堂は口癖のようにオレには見る目がない。 と言っていたが、今回ばかりは当たりを引いたようだと嬉しそうだった。
そうして棪堂と桜は付き合い始めた。
最初こそ恥ずかしさのあまり周りには隠していたが、桜がポロッと棪堂と付き合っているようなことを匂わしてしまったためにバレた。
もちろん風鈴からは大反対を食らったし、どこから噂を聞き付けたのか分からないが、獅子頭連にも反対された。
特に梅宮、椿野、柊、梶、蘇枋、楡井、桐生、十亀からは考えを改めるように言われたし、質問攻めにもあった。
何とかひとつずつ質問に答えている間に、どれだけ好きか、どれだけ大切にされているか伝わったらしく、最終的には皆渋々だが認めてくれた。(楡井だけ頑なに嫌そうな顔をしていたが)
そうして付き合い始めて早数ヶ月。 びっくりするほど棪堂は優しかった。 なんでも桜のペースに合わせたし、行きたいこともやりたいことも全て聞いてくれた。
そう、彼氏としては百点満点をたたき出していた。 なのに、ある点だけは零点以下のマイナスまでいきそうな点があった。
それは何をするにも焚石が第一な点だ。
例えばデートの予定が入っている日であっても、焚石がなにかすると言った途端その予定が先に決まっていたとしても焚石を優先する。 それは当日であっても関係なく発揮される。 所謂ドタキャンというやつを容赦なくやる。
また、デート中であろうと焚石を見つければ直ぐに焚石の方へと行く。
話すことはほとんど焚石の自慢。 焚石はどれだけ美しくて、綺麗で、など耳にタコができそうなぐらいに話す。焚石のことを話している棪堂の顔は遊んでいる時よりも楽しそうで、嬉しそうで、 思わず嫉妬したくなるレベルである。
ただ、その点は桜も理解していたため、仕方ないと思って受け入れていた。 それが棪堂なんだと、 少し寂しい気持ちもあった気がするが、感情の見て見ぬふりが得意な桜にとってはなんともない事だった。なんともないつもりだった。
だが、この日だけはどうも耐えられなかった。
〖悪い、今日無理になった〗
〖埋め合わせは今度する〗
待ち合わせ場所で待っている時、急にスマホの通知が鳴り、確認してみれば棪堂からの知らせ。
簡潔で無駄のない文。いつも通りのドタキャンのメッセージ。
いつもなら仕方ないって受け入れられたはずだった。 だが、今日はどうしてもモヤモヤしてしまった。
理由としては今日は棪堂と付き合い始めてちょうど半年のため、記念になにかお揃いのものを買おうと前々から予定を立てていた日だったから。
どうしても理由が聞きたい。 いや、理由なんて分かりきっているが。それでも、もしかしたら本当に大変なことがあったのかもしれないと、今考えれば僅かな希望にすがりたかっただけなのかもしれないが。
〖なにかあったのか〗
少し時間はかかったが、なるべく早く打ったつもり。
少し待っているとまた通知が鳴り、棪堂からのメッセージが表示された。
〖焚石が喧嘩行くって〗
〖だからこれから返信無理だわ〗
「、そんだけ 、 ? 」
そこまで出て思わず口に手を当てた。
自分は今何を思って何を言おうとした。
棪堂にとっては大切な事だとわかっていたのに、”たったそれだけのこと”と思ってしまった。あまつさえそれを言葉にしようとした。
その事実に思わず吐き気がしてくる。
人の価値観は人それぞれ。 それはよく知っている。
自分だってその価値観によって傷ついたし、心無い言葉を沢山かけられてきた。
痛みを1番わかっているはずなのに、人に平然としようとした。
頭がクラクラしてくる。
だが、それに反するように黒くどろどろとした感情に飲み込まれそうになる。
どうして、自分を優先して欲しい、そんな嫉妬心。
今までこんなこと思ったことない。自分が怖い。
自分が思っている以上に、桜は棪堂のことを気に入っていたようで、今まで見て見ぬふりをしていた感情が今日爆発したようだった。
こんな自分が醜くてしかたがない。 自分自身が気持ち悪い。
そんな自己嫌悪に陥っていた。
今の桜を棪堂が見たらどんな反応をするだろうか。 答えは分かりきっている。 きっと嫌われるだろう。
棪堂に嫌われる。 想像しただけでも耐えられない。
視界が少しずつぼやけていき、頬に冷たい筋が走る。
久しぶりの感覚。 “これ”はもう出ないと思っていたのに。 とうの昔に枯れたと思っていたのに。
目を擦っても擦っても視界が良好になることは無い。
『あれ ? 桜 ? 』
不意に後ろからよく知った声が聞こえた。
亀のようにゆっくりとしたテンポ。優しい声色。
思いつく人は一人しかいない。
その声を皮切りに振り向きそうになるが、寸前で固まる。
今の自分の状況を良く考えれば、人に見せれるような有様では無い。 ましてはかっこいいやつになれと言ったやつに見せられる姿ではない。
「、とがめ か … 」
平常を装うために精一杯に出した声。 だがどこか少し震えている声。 それを聞き逃すほど十亀も甘くない。
『桜、どうしたのぉ ? なにかあった ? 』
「いや、 … なんもねぇよ ただ散歩してただけだ 」
そうは言うものの、一向に十亀の方を向こうとしない桜。 怪しいことこの上ない。
『 そっかぁ じゃあオレも一緒していい? 』
「や、 … ちょっとこれから用事で … すぐ帰らねぇとだから … 」
じゃあな。 それだけ言って走り出しそうとする。 その背中は普段の桜からは考えられないほど弱々しく、小さく見えた。
このまま帰したらダメだ。 本能がそう訴えかけてきた気がした。
『ちょ、 っと待って 桜』
勢いのまま桜に近づき腕を掴む。
多分喧嘩の時の癖だろう。 勢いよく桜が十亀の方を向く。
その時十亀の思考は停止した。
あの桜が目に涙を浮かべている。
いつもキラキラしていて綺麗な2色の瞳が今日は一段とキラキラしていた。
思わず綺麗と思ったがそれに続くように怒りがふつふつと沸いてきた。
「とがめ、腕痛い 力込めすぎ」
その言葉にハッとする。 無意識のうちに怒りのまま腕を強く握っていたようだ。
ごめん、そう言って手を離すと桜は目を擦って不器用にいつもの表情を作った。
「わりぃ、 こんなだせぇとこ見せて」
どうやら十亀の怒りは桜にも伝わっていたようだが、別の意味で怒っていると捉えられたようだ。
『 … 誰のせい? 』
自分が思う以上に低い声が出た。
「 えっ、 や、別に 、 なんでもねぇよ …… ほんとにっ 大丈夫だから 」
別に誰が悪い訳では無い。 強いて言うなら、 弱い自分がいけないだけなのだ。
『 本当は、 彼氏持ちにこんなことしちゃダメなんだろうけど … 』
そうボソッと言ったかと思えば、十亀は自身の胸に桜を押し込むように、でも優しく迎え入れた。
「 は、 ちょっ! は、 離せ!! 」
ぐいぐいと胸を押して抵抗してみるが、ビクともしない。 なんなら抵抗すればするほど力が強まっているような気がする。
『 ごめんねぇ、でも今 桜を離したら後悔することになりそうな気がする
それにもう、気づかないふりをして泥を被るような、ダサいまねはしたくないんだぁ 』
二度と繰り返さない。 繰り返させない。 太陽が雲に隠れることがないように、 いつまでも、 みんなの道標として堂々としていられるように。
「 なん、 だよそれ … っ 、 … 」
ずりぃ …… とまでは口にできなかった。 その代わりにまた涙がポロポロとこぼれ落ちる。
十亀は桜の言えなかったことがわかったのか、今からすることへの断りなのか静かにごめん。といい、桜の頭をゆっくりと撫でた。
大きくて暖かい手と伝わってくる体温、そしてどこか懐かしさを感じる甘い香りが桜を酷く安心させた。
「 わりぃ … ダセェとこ見せた … 」
河原に腰掛けながら、 目を真っ赤に腫らして、ずびっと鼻をすする。 痛々しくも、可愛く思えたのは桜には秘密だ。
『 大丈夫だよぉ 別にダサいなんて思わないしぃ 』
むしろ嬉しかったよ。 なんてことを言ったらそれなりの力でポカポカ殴られた。 ちょっと痛い。
『 桜が嫌じゃなければ、 何があったのか教えてほしいな 』
「 ……面白い話じゃねぇぞ 」
そこから桜は棪堂の素行について話した。焚石第一で焚石のためならドタキャンでも途中離脱でもすること。今日は付き合って半年記念だからって前々から約束をしていたのに、ドタキャンされて泣いてしまったこと。 ありのままを全て暴露した。そのおかげか少し心もスッキリした。
「 な、 くだらねぇだろ 」
自傷気味に笑う様子を見て、十亀は腹の奥底から黒くドロドロしたものがふつふつと湧き出る感覚がした。
自分たちから桜を奪っておいて、そんな雑な扱いをするなんて到底許せる話ではなかった。
『 殺す …… 』
いきなり立ち上がったかと思えば、物騒なことを言い出す十亀。 さすがに殺すのはまずいので作務衣の裾をグイグイ引き、また座るように促す。
「 別に…… 元々あいつが焚石が一番なのは知ってた…… けど…… 今日ぐらいは …… 」
それ以上は言葉に出来なかった。 言葉にしてしまったら醜い嫉妬がドロドロと出てきて、歯止めが効かなくなる気がしたから。
どんどん思考がマイナスの方向へ引っ張られていき、頭も次第に下を向いていく。
「元々 …… 俺が悪いんだ …… 愛されることを期待しちまったから…… 」
一番を、望んでしまったから……
『 桜 』
怒りを含んでいそうな声に身体が大袈裟なほどビクッとする。 言いすぎたか、甘えすぎたか、 失望されたのか ……
目の前がゆっくり真っ暗になっていく。すると両頬を優しく包まれ強制的に顔を上げさせられる。
『 桜 』
目の前には常盤色の瞳が二つ。 芯が通っている強くて綺麗な瞳。
今の桜にそれは眩しすぎて、目を逸らそうとするが、それを許してくれるような相手ではなかった。
『 目、 逸らさないで 』
俺を見て。それは命令でもなんでもなかったのに、妙に圧があって、従わずにはいられなかった。
『 よく、 今まで耐えたね 』
「 っ! でも っ 、 !! オレは!!」
自分勝手に醜く嫉妬して、 勝手に泣いて、異常者のくせに愛されることを望んでしまったのに……
『 大丈夫 、 桜は何も悪くないよ 、 逆によく頑張った方だよ 』
そうしてまた桜の頭を優しく撫でる。
閉められた涙腺が緩んでくる。 甘やかされていてはダメだとわかっているが、今この温もりを手放すのは惜しくて、どうしても払い除けることが出来なかった。
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没理由
↪︎ 続きが上手く書けない
↪︎ どこか気に入らない
(2025/07/22 18:24:59)
コメント
2件
Buono ... ( ? ) 神小説家ってよく没でも神作生み出すよねなんなんですか???🙂👊 亀さんまじ弱酸性 桜くんの顔くらいでかい手で撫でてる光景浮かんだわ ‼️‼️😭 尊いぞ ‼️‼️😭