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番外編① 「初お泊まり」
親戚の集まりの日。
夜遅くまで騒いでいた大人たちも、ようやく静かになった頃。
緋八マナは布団の上でスマホを見つめていた。
【ライ:起きてる?】
数秒後。
襖がほんの少し開く。
「……マナ」
「っ」
小声。
そこにいたのは、部屋着姿のライだった。
「来た」
「来ると思った」
「ひど」
笑いながらライが部屋に入ってくる。
親戚の家だから、もちろん別部屋。
でも付き合ってる今、“このままおやすみ”で終われるわけがなかった。
「隣いい?」
「……もう座ってるだろ」
「許可取った」
マナの隣に腰掛ける。
距離が近い。
静かな夜だから、余計に心臓の音がうるさい。
「今日、全然話せなかった」
「親戚多すぎたし」
「でもずっとマナ見てた」
「……やめろって」
照れる。
ライは楽しそうに笑った。
「マナ」
「ん?」
「こっち向いて」
言われるまま顔を向けた瞬間、軽くキスされる。
「っ……!」
「声出すなよ」
「出してない……!」
耳元で笑われる。
悔しい。
でも好き。
そのあと、布団の中で肩を寄せ合いながら小さく話す。
「……こういうの恋人っぽい」
「今さら?」
「うるさい」
ライがそっと手を繋いできた。
「泊まりっていいな」
「……うん」
「毎日一緒に寝れたらいいのに」
その言葉に、マナの心臓が跳ねる。
未来を想像してしまうから。
ライと暮らす未来を。
⸻
番外編② 「文化祭デート」
「……ライ、目立ちすぎ」
「俺のせい?」
「顔」
文化祭当日。
ライはマナの高校に遊びに来ていた。
“親戚のお兄ちゃん”として。
でも。
「マナのクラスどこ?」
「腕掴むなって!」
「はぐれる」
自然に距離が近い。
マナは周囲の視線が気になって仕方ない。
「緋八、その人誰?」
同級生に聞かれ、マナが一瞬固まる。
「あー……親戚」
「へぇー! イケメン!」
ライが笑って軽く会釈する。
その余裕が悔しい。
休憩時間、二人で人気のない階段へ逃げ込む。
「疲れた……」
「マナかわい」
「ライのせいだろ!」
「そんな警戒しなくても」
「するわ!」
ライが笑いながら、そっと頬を撫でた。
「でも今日のマナ、ずっとかっこよかった」
「……は」
「頑張ってる顔好き」
不意打ちで褒められて黙る。
するとライが少し近づいた。
「キスしたい」
「学校で!?」
「冗談」
「絶対嘘!」
ライは楽しそうだった。
でも帰り際、人のいない渡り廊下で。
「……っ」
一瞬だけキスされた。
「ライ!?」
「文化祭楽しかった記念」
「意味わかんねぇ……!」
真っ赤になるマナを見て、ライが満足そうに笑った。
⸻
番外編③ 「受験期」
最近、ライからの連絡が減った。
受験だから仕方ない。
分かってる。
でも寂しい。
【ごめん今日通話無理】
その文字を見るたび、胸が少しだけ痛んだ。
数週間後。
久しぶりに会えた親戚の集まり。
「マナ」
顔を見た瞬間、ライがぎゅっと抱きしめてきた。
「っ、ライ!?」
「会いたかった」
珍しく余裕のない声。
それだけで全部吹き飛ぶ。
「……俺も」
ライが肩に顔を埋める。
「最近ずっとしんどかった」
「受験?」
「それもあるけど、マナ不足」
「なにそれ」
笑うと、ライが少し安心したみたいに息を吐いた。
「もう少し頑張るから待ってて」
「……待ってる」
そのあとキスされた。
久しぶりだったから、余計に甘かった。
⸻
番外編④ 「夏祭り」
「ライ、浴衣ずるい」
「なにが」
「かっこいい」
一瞬沈黙。
そのあとライが笑った。
「今の録音したい」
「やめろ!」
夏祭り。
屋台。
花火。
人混み。
はぐれそうになるたび、ライが手を引いてくれる。
「ちゃんと掴まって」
「子供扱いすんな」
「迷子になるじゃん」
「ならねぇし!」
でも結局、指を絡められると離せなかった。
花火が上がる。
夜空が光る。
その瞬間、ライが小さく言った。
「マナ」
「ん?」
「好き」
花火の音に紛れてキスされる。
周りには誰も気づかない。
でもマナだけは、ちゃんと知っていた。
⸻
番外編⑤ 「大学生のライ」
「……なんか大人っぽくなった」
「今さら?」
大学生になったライは、本当に少し変わった。
服装も。
雰囲気も。
余裕も。
それが悔しいくらい似合っている。
「マナ高校生って感じ」
「馬鹿にしてる?」
「かわいいって意味」
「そればっか」
大学帰りのライと待ち合わせして、カフェに入る。
大学の話をしているライは少し新鮮だった。
「友達できた?」
「できた」
「……女子は」
「いる」
胸がざわつく。
するとライが笑った。
「嫉妬?」
「してない」
「顔」
「うるさい……」
ライが手を伸ばして、そっと頭を撫でる。
「安心して」
「……」
「俺の恋人、マナだけだから」
その一言だけで、全部どうでもよくなった。
⸻
番外編⑥ 「秘密がバレそう」
「ライくんとマナくんってほんと仲いいよねぇ」
その一言に、二人同時に固まる。
「え、そう?」
「昔からだよなー」
親戚たちは笑っている。
でもマナの心臓は爆発寸前だった。
なぜなら数分前。
廊下でキスしていたから。
「顔赤くない?」
「暑いだけ!」
「ライくんも赤いよー?」
「酒入ってるんで」
「飲んでないじゃん」
終わった。
絶対怪しまれてる。
その夜。
「ライのせいだろ!」
「マナが可愛かったから」
「理由になってない!」
でもライは楽しそうだった。
「もしバレたらどうする?」
「……知らない」
「俺は別にいいけど」
「は!?」
「だって好きなの本当だし」
真っ直ぐ言われて、マナは言葉を失った。
⸻
番外編⑦ 「クリスマス」
「はい、プレゼント」
「え」
クリスマスの夜。
イルミネーションの下で、ライが小さな袋を差し出す。
「開けていい?」
「どうぞ」
中にはネックレス。
「……っ」
「おそろい」
ライの首元を見ると、同じものが光っていた。
「やば……嬉しい」
「ほんと?」
「めちゃくちゃ」
ライが嬉しそうに笑う。
そのあと、人の少ない場所へ移動して。
「メリークリスマス」
優しくキスされた。
冬の冷たさなんて忘れるくらい、甘かった。
⸻
番外編⑧ 「将来の話」
「……同棲とかする?」
「ぶっ!?」
マナが盛大にむせる。
ライは平然としていた。
「いや、将来的に」
「急すぎるだろ!」
「嫌?」
「嫌じゃ……ないけど」
夜。
通話中。
ライの声は少し眠そうだった。
「一緒に住んだら、毎日会える」
「……」
「毎日キスできる」
「うるさい!」
でも想像してしまう。
一緒に暮らす未来。
朝起きたらライがいて。
隣で笑っていて。
「マナ」
「ん?」
「ずっと一緒にいような」
その声が優しくて、胸が熱くなる。
「……うん」
秘密の恋だった。
親戚同士で。
誰にも言えなくて。
それでも。
二人はこれからも、何度でも恋をする。