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ATTENTION
・政治的意図はありません
・特殊設定
・陸が頭弱いです。
・↑の一人称が僕で情緒不安定
・戦ってる数が多いほうが兄、みたいな設定(史実は関係ないです)
↓
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時は1889年 2月11日、大日本帝国の名のもとに陸と海、それと空が生まれました。
三つ子でした。国は一国につき一人、というのがそれまでの常識でしたので、とても騒ぎになりました。
ある人は「嵐の予感だ」と言い、ある人は「神のご加護だ」と言いました。
そんな中生まれてきた三つ子は、国への無条件の信頼と闘う術を厳しく教えられながら育ってきました。とても立派に育ち、強くなった三つ子は国のため、入隊したときから高い地位についていました。
強いものは使って自分は何もせずに楽に勝ちたい、というのが人間の性。その欲に、三つ子は 利用されました。国は一国に付き一人、ならば一人いさえすれば我が国は生き永らえる事ができる。
そのひとりに選ばれたのは陸でした。陸は安全なところでお留守番。海と空は『最悪死んでいい』存在として戦場で指揮や戦闘を任されました。そんな状況になっても海と空は陸をイジメたりする事もなく普通に愛していました。
まあ、そんな日常が続くほど現実は甘くなく。
ある日の昼下がり。窓から差し込む日差しに微睡んでいると、「空が瀕死
の状態である」という報せが入ってきました。
陸は、現実を思い知らされました。
命が脅かされないというのは、大切な人を守れないということ。いつか、空だけでなく、海も失うかもしれない。独りになんてなりたくない。そう思った陸は、打開策はないか、考え続けました。赤紙から逃れれば?でもどうやって?考えて考えて考えて考えて。思いついたのです。
海と空を外に出さなければ。仮に見つかってももう行かなくてもいいように、丁種まで下げれば。
陸の弱いおつむではこれしか思いつかなかったのです。早速、と行動に移しました。 ですが、陸は大事なことを忘れておりました。
海と空にこの事を言っていませんでした。
そんなことにも気づかず、まず出撃準備をしている海のところに行きました。
「なんだよ」
「ね、ちょっとこっち、来て」
「お前喋り方おかしくね?いいけどさ…」
森につきました。一目で分かるほど深くて、一度入ったら迷子になりそうです。
「…なんで森?」
「いいから」
陸は海の腕を強く掴んでぐんぐん進みました。進むたびに闇が濃くなってゆきます。
「お前これどこ行っ」
「黙ってついてきて」
海は、陸のただならぬ雰囲気を感じ取り、静かに連れて行かれるがままに進みました。
ついたのは、小さな家。
家は家でも、見た目も纏う雰囲気は異質で、まるで牢獄のようでした。
海は、そんな明らかに異質な家に入ろうとする陸を見てギョッとし、
「こんなか入るのか…?」
「そうだよ」
「何のために?そもそもこれは誰の家なんだ!?」
「これからの僕たちの家だよ」
「もう嫌なんだ。空が死にかけるのも海が死ぬのも。そんなの見たくないんだよ。だから、もう戦場なんかには行かせないように」
そんな夢見事を言う陸の目は恍惚としていて、情事中すらをも思わせました。
今は、そんな目をした陸がただただ怖かった海は、
「…今すぐその腕を離せ」
「やだよ。だって逃げちゃうでしょ?」
「当たり前だ!!」
「そもそも何故俺等の許可も取らずに勝手に一人で話を進めているんだ!」
「俺等の気持ちも考えず一人で動いて!!そもそも、御国の為に死ぬ事こそが一番の誉れだろう!?」
そこまで言って、陸が言い返してこないことに気づきました。
「…陸?」
「……だって…ん…」
「は?」
「ッ!!」
「兄さんにはわからないでしょ!?いつ兄さん達が死ぬかわからない、死にかけても助けになんていけない、最期にすらも絶対会えない!!」
「兄さん達が怪我をして帰ってくるたびに無力を痛感して!最悪自分だけが独り!!」
「戦えないから馬鹿にされて!兄さんたちがいなければこんな目にはって思うのに心の支えは兄さんたちで!!」
「そもそもなんだよ御国のために死ぬのが誉れって!遺される側の気持ちにもなってよ!!」
「…だからって何か他のやり方が」
「じゃあどうすればよかったのさ!これでも頭を振り絞って考えたんだ!兄さんだって知ってるだろう僕が頭良くないこと!」
「…俺等のために考えてくれたのは嬉しいが、せめて言ってくれれば良かったじゃないか」
「…言ったとしてさ、兄さん『そうか。いいぞ』ってなった?」
「……ならない、な」
「でしょ。まあ安心にはならないかもだけどさ、ガッチガチにやる気はないよ。赤紙が来なければいいからね」
…お前そこまで考えられるようになったのか、の「に」まで言いかけて
そこで、
「つーかまえた」
にっこり。そんな擬音が似合いそうなほどに歪められた顔なのに、目の奥が全くと言っていいほど笑っていない陸に話は遮られました。代わりに抵抗ができないような体勢にされてなお、必死で抵抗する海を嘲笑うかのように家のドアはパタン、と小さい音を出して閉まりました。
海は家に入ってからもまな板の上の鯉の様にピチピチと暴れ続けるので、面倒くさいし時間もなかった陸に薬を打ち込まれました。
兄さんは、知っているかしら。
どうやっても絶対に赤紙が来ない条件を。
兄さんは、気付いているかしら。
僕がどれ程に本気なのかということを。
あとは空だけ。
空だけと言っても、病院から空を持ってくるだけのお仕事。
伊達に国じゃないし、家族なので病室に入ることは簡単でした。
国は再生能力が高い。ケガもすぐに治る。腕が切れてしまったのなら切断面をしばらくくっつけておけば腕が付く。そんな再生能力が高い国が瀕死というのは、僕にとっては衝撃的な事だった。特に空は痛みに強く再生能力も比較的高い方だったんだ。そんな空が瀕死。もし自分や、海が受けていたら。そんな事を考えてしまう。それで心がかき混ぜられたようにぐちゃぐちゃに混ざり合ってしまった。それが元は何の感情だったかすら、もう分からなくなったんだ。だからもう、そのときどう思ったか、もう分からないんだ。
寝ている空を病室から運び出しながら、そう思いました。
がらがら、と音が鳴ります。きっと、陸が空を運ぶ音でしょう。
がちゃり。ぎぃ、ぱたん。
扉が閉まる音がして、それを合図に三つ子は表舞台から身を引きました。
舞台が幕を閉じたあとの主人公はろくな目に遭わないのがお約束。
地獄の、始まり始まり。