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#独り言
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Riri
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第四話 再征
若井は多摩地区に車を走らせていた。
藤澤が見せたいものがあるという。
車から降りるとジワジワとした暑さが体を包む。
「しばらく歩くよ」
藤澤はそういうと歩き始めた。
鬱陶しい暑さに溶けそうな若井とは対照的に高坂は前をさっさと歩いていく。
「この暑さ何とかならないのかな」
若井が呟くと高坂がカバンからスプレーを取り出した。
「はい、使っていいよ」
若井が手に取るとラベルには”シャツクール”と書いてある。
「あぁ、ありがとう」
とりあえずシャツに何度か吹きかけると高坂に返却した。
こういった物の効果をあまり期待しない若井だが、しばらくすると本当に涼しく感じた。
「あ、ちゃんと涼しい」
「そうでしょ、こういうのは積み重ね
捜査と同じ」
「え、他にもある?」
そういうと高坂は得意げな顔をして若井を見た。
「まずね」
高坂がそう話し出すと彼女こだわりの夏グッズの紹介が始まった。
若井はそれを一つ一つ試していると目的地に到着した。
「はい、ここ」
藤澤がいうと手を広げてこの辺り全体を示した。
高坂が顔をしかめる。
「ただの道路だけど」
藤澤が首を振ると服のポケットから資料を取り出した。
「これ」
そういうと大森の供述調書を指さした。
しかし、若井はすぐに釘を刺す。
「重要資料の持ち出し、だめだからね」
「あ、これだけ持ってきた」
「そういう事じゃ」
若井が戸惑うが高坂はどうでもいいと言うように先を催促した。
「そんで?」
「うん、この肝試しってどこ行ったんだろうって」
高坂が資料を覗き込む。
すると、大森は友人と共に自転車で心霊トンネルへ向かったと書いてある。
「それで調べた
施設から自転車で行けるトンネル」
そう言うと藤澤がスマホで地図を示す。
そこにはトンネルの名前が表示されている。
「ここ以外は?」
「トンネルはあるけど自転車じゃ到底行けない」
若井は頷いた。
ならここで間違いないだろう。
「それでここから帰ると必然的にこの高台を通る」
藤澤はそう言うとそこからの景色を指した。
「みて、どう思う?」
藤澤の意図が分からず、高坂はチラリと若井を見た。
若井は目を細めて景色を眺めている。
「緑が豊かだね」
若井が口を開くとそう言う。
高坂は同じく意図が伝わってない若井の様子にほっと息をついた。
「で?何が言いたの」
高坂が聞くと、藤澤は写真を取り出した。
「これ、この前の爆発事件を例の高台から撮った写真」
若井が藤澤に顔を寄せると写真を睨む。
「例の高台って俺らが事件日に登ったにあの高台?」
「そう」
「あ、似てるね…」
高坂が呟いた。
「似てる?」
若井が聞き直すと、高坂は写真を目の前の景色にかざした。
「ほら、ここ高速道路でしょ」
写真を指さしてから景色を指さす。
目の前を見ると同じような位置に高速道路があった。
「この目立つ大通りは…ほら、あれ」
写真の中の大通りを示してから、高坂は流れる川を指さした。
「確かに」
そう言うと藤澤が横から入ってきた。
「ちなみに施設の位置はあの茶色い建物
今は変わってるけどね」
高速道路、横に流れる川、施設の場所
写真の景色と目の前の景色
それぞれの位置関係は瓜二つだった。
「ね、薄いけど関連性があるでしょ」
藤澤が写真を眺めながら言う。
高坂は目の前の景色を眺めた。
「大森くんは、ここから爆発を見たんじゃないかな」
藤澤は頷いた。
「その通り
大森は帰り道で施設の爆発を見て慌てて帰宅した
帰り道で施設が見えるのはここからだけ」
藤澤のその言葉に若井は目の前の景色を見つめた。
もしも大森が犯人だとして
目白の施設を爆発させたあの日も高台から景色を見たんだろうか。
「今回の事件」
藤澤が口を開く。
「やたら執念深いんだよ
だから模倣には感じなかった」
景色を眺めていた藤澤が若井の方に体を向ける。
「でも、もしこれが大森が体験した事件の再現だとしたら辻褄が合う」
若井と高坂は言葉を失った。
藤澤は指で顎を撫でるとゆっくり言葉を話した。
「ここからは僕自身の見解だけど…もし再現だと仮定したら唯一、違うところがある」
「違うところ?」
高坂が鋭く拾う。
藤澤は高坂を見ると質問した。
「ねぇ目白の爆発、生き残ってた2人はどうなった?」
高坂は一瞬、眉間に皺を寄せると低い声で答えた。
「どっちの子も火傷が酷かった
最後の子が今日の朝、息を引き取ったみたい」
「それ絶対マスコミに流さないで」
藤澤が素早く言った。
「大森が犯人だとすれば、生存者がいることそれが弱みになる
なぜなら大森は自分自身が生き残りだから」
藤澤の言葉に高坂は足元を見つめると思考を回した。
高坂が口を開く。
「ってことはあんなに爆弾用意したのも殺意じゃなくて、生き残りを残さないため?」
藤澤は頷くと続けた。
「そうだね」
「じゃあなんで爆発させたんだろう
誰も死ななきゃ生き残りもないのに」
若井が苦々しく吐き捨てた。
藤澤は再び高台からの景色を見つめた。
「そこが大森の核だよね
大森はあの日の爆発をどう解釈してるかな」
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ーーーー
爆発事件から4日目、続く捜査に徹夜が3日目から4日目に入ろうとした頃。
若井は相棒の高坂から帰宅していいと許可を貰った為、自宅のベッドで就寝していた。
しかし、若井はスマホの着信音で起こされた。
薄目を開けると光の元へ、手を伸ばす。
「はい、若井」
『若井寝てた?』
高坂の声だ。
てっきり事件発生の連絡だと思っていたので胸が跳ねた。
「う…ん、どうした?」
『今から会える?』
若井はつい息を飲んだ。
しかし、すぐに思い直す。
相手は高坂だ
深い意味は無いだろう。
「会えるけど…どこ行けばいい?」
『LINEで場所送る』
高坂がそう言うと電話が切れた。
そのあと送られてきたのは、ある漫画喫茶を示したMAPだ。
若井はため息を吐くと、とりあえずベッドから起き上がった。
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近くの駐車場に車を停めると若井は漫画喫茶の方向へと足を進めた。
するとお店の正面入口に高坂が立っている。
珍しく髪も下ろしていてラフな雰囲気だ。
何かを考えているのか
腕を組んだ先の指がトントンと動いていた。
「お待たせ」
若井が声をかけると弾かれるように高坂が顔を上げた。
そして漫画喫茶の店内を指さす。
「行くよ」
「え?」
若井が戸惑って聞き返したが高坂はさっさと入って行ってしまう。
追いかけて店内に入ると流されるように会員証を作らされ、店員から部屋の案内を受ける。
「あ、はい…ありがとうございます。」
若井が部屋の鍵を受け取ると高坂が後ろからやってくる。
「涼くん待ってるから、早く」
「え、涼くんもいるの」
高坂がこくりと頷くと廊下を足早に歩いた。
貰った鍵でオートロックの扉を開ける。
「…う、わ」
若井はつい眉をひそめた。
漫画喫茶の個室が散らばった資料でめちゃくちゃになっている。
若井は辺りに人がいない事を確認すると慌てて扉を閉めた。
この汚さの温床はやはり藤澤だろう。
藤澤は相変わらず、ぶつぶつと資料を見つめながら独り言を話している。
鼻が付くほどに紙が近いが文字は読めているのだろうか。
すると突然、高坂が手を叩いた。
若井は驚いて飛び上がる。
「涼架!!」
同時に高坂が名前を呼ぶと藤澤が顔を上げた。
「…あ、はい」
なるほど、そう呼べばいいのか
若井は感心して高坂を見つめた。
「あ、若井くん」
藤澤がぺこりと頭を落とす。
高坂は足元に散らかる資料を退かすと、その隙間に腰を下ろした。
「あ、あぁ…動かさないで」
藤澤が悲痛な声を出したが高坂は無視して口を開いた。
「昨日、捜査終わった後」
そこまで話すと高坂が周囲を見渡す
そして、藤澤が持っている資料に目を向けるとそれを取り上げた。
「ぁ、」
藤澤が眉を下げると高坂を見つめた。
高坂はその資料を若井に見えるように示した。
「昨日、捜査の後ここ行ってきたの」
若井がそれを見ると大森元貴についての資料だった。
高坂が示した文字は “戸滝ゆめ園” という施設だ。
「これ…涼くんが作ってくれたの?」
「うん」
藤澤が頷く。
わざわざ藤澤が資料を作るなんて珍しい。
相当この事件に興味があるようだ。
「この戸滝ゆめ園っていうのは?」
高坂が説明を加える。
「大森がこばとの家の爆発事件の後、移動した施設」
若井が高坂の言葉を思い出すと慌てて顔を上げた。
「え、ここに行ってきたの!?」
「そう、昨日の夜」
高坂が頷く。
若井は気まずそうに頭を書いた。
「俺も連れて行ってくれれば」
「警察手帳使ったから」
高坂があっさりと言った。
「…は、まじで?」
それはまずい、実にまずい
若井は頭を抱えたい気持ちになった。
捜査の線と関係のない捜査は上に報告できない。
そんな事をすれば個人的な捜査だと処罰を受けるからだ。
しかし個人的な捜査を隠蔽することもできない。
それをすれば警察官としての信用問題に関わる為さらに問題視される。
唯一残された道は警察官である事を名乗らず、知人などの第三者を装い情報を集める事。
しかし高坂は警察手帳を見せたので、そうはならない。
「大丈夫、私の独断」
「大丈夫じゃねーよ
俺にも責任あるでしょ、さすがに」
しかし高坂は首を振った。
「退勤後だから責任はない
そもそも若井は直前まで何も知らなかった
実際そうでしょ」
「実際って…」
若井は言い返そうとして違和感を感じた。
高坂の言う “直前” とは何の直前だ?
戸滝ゆめ園に向かう直前には何も聞かされていない。
聞かされたのは今だ。
「…直前?なんの」
そう言うと高坂の目が細くなった。
「次、爆発する養護施設が分かったの」
高坂はもう一度、戸滝ゆめ園を指さした。
「ここに行った時に聞いたんだけど
大森はここで虐待に遭ってた可能性がある。」
「虐待…」
若井は眉をひそめると資料を目線を落とした。
「まず施設の人に聞いたんだけど職員は大森を知らなかった。
記録もろくになかったし…
だからその後、児童相談所に話を聞いたの」
若井は話の先を促すように頷いた。
「そしたら当時の彼を知る相談員から話が聞けた。
彼女は大森から何度も虐待の相談を受けてたらしい」
そこまで話すと高坂は首を振った。
「でも改善されなかったって
大森は施設の移動もお願いしてたみたいだけど当時は空きがなかったみたい
結局、18歳で施設を出るまで虐待が続いてたんじゃないかって」
「つまり大森の目的は復讐?」
若井がそう言うと、高坂は頷いてから言葉を続ける。
「んで、ここの施設長
新しい養護施設作ってんの
それがここ、ひまわり園」
「それで」
藤澤が言葉を挟み込む。
「周囲の防犯カメラを調べたら昨日だけでも6回映りこんでた人物がいる」
そう言うと藤澤はノートパソコンの画面を若井見せた。
流してた映像を停止、そして拡大するとそこには大森の姿があった。
高坂がパソコン画面の向こうから顔を出すと質問してくる。
「どう?この子、大森くんでしょ」
若井はゆっくりと頷いた。
「よしっ!!」
高坂がぐっと拳を握りしめる。
若井は謎の興奮から唇を舐めると結論を促した。
「つまり…次、爆発するのはこのひまわり園?」
高坂が頷く。
「そのはず、しかも動機もあるし確保の可能性もグッと上がる」
若井はつい眉間に皺を寄せた。
「確保?児童たちの避難が先だよね」
若井がそう言うと高坂が動きを止めた。
「そうだ…ね」
「よし、報告しよう
下手したらあと数時間でって事も」
若井がスマホを取り出すと高坂が腕を掴んだ。
「まって!!」
若井が目線を走らせると高坂は瞳を揺らしてこちらを見ている。
「…避難させたら大森に気づかれちゃうんじゃない?」
「そりゃそうだろうけど」
若井はあっさりとしたトーンで返す。
しかし、高坂も食い下がる。
「じゃあ、例えばさ…ギリギリまでひまわり園の周辺を警戒して来たところを確保とか」
「爆発予告も来てないのにギリギリが分かるの?」
そこまで言うと高坂はやっと口を閉じた。
若井はスマホを操作すると管理官の電話番号を表示した。
しかし、高坂の独断捜査を思い出して係長に変更する。
「お疲れ様です。係長ご相談が」
『お、若井か。ちょうどいい
今、久世が重要参考人として同行引っ張って来てな』
「え、同行…?」
通話中の若井が高坂の方を見る。
高坂はまるで般若のように眉をひそめた。
「待ってください、こっちも緊急なんです」
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若井と高坂は車で捜査本部に向かっていた。
藤澤はやる事があるようで漫画喫茶で解散した。
先程、若井は係長に詳細を話したがとりあえず顔を見せろとの事だ。
警視庁の正面に車を停め、エレベーターで5階へ向かった。
捜査一課の執務室に向かうと既に久世班がいた。
「ぅっわ」
後ろで小さく高坂が唸る。
「お疲れ様です」
若井がお辞儀をすると、高坂も同じく挨拶をしてお辞儀をする。
「お疲れ様ですじゃねーぇよ!!」
久世の相棒、倉井の怒号が響く。
隣の高坂がギュッと瞳を閉じた。
「高坂、こんな忙しい時に何を旅行してんだ!!
土産もしょぼいもん持ってきやがって!!」
係長がまぁまぁと倉井を窘めた。
「すみません」
隣の高坂が素早く謝ると一呼吸も置かずに反論した。
「でも」
「でもじゃねぇ!!
こっちは同行で一杯って時に」
声を荒らげる倉井を追い越すように高坂が怒号を上げた。
「でも!!
しょぼいお土産じゃないです!!」
「ぁ゛あん!?
じゃあ言ってみろ!!」
まるでヤクザのような面構えになる倉井に高坂が言い放った。
「次、爆発する施設が分かったんです!!」
「おいお前さ」
倉井が片方の口角をあげると高坂をジトリと睨みつけた。
「さっきの話でそうなってんじゃねーよな」
さっきの話というのは若井が係長に話した詳細の事だろう。
倉井にも伝わっているらしい。
「え?」
高坂が聞き返す。
「だから、お前が係長に話した物的証拠だけで決めてんじゃねぇのかって言ってんだよ」
高坂が斜め上を見ると不思議そうに返事をした。
「…はい」
「はいじゃねぇ!弱すぎんだよ!!」
高坂が慌てたようにすると一歩、踏み出すと捲し立てた。
「な、なんでですか?
だって大森は施設長から虐待を受けてたんですよ
今も施設長を恨んでいて、移動先のひまわり園を爆発
自然な流れじゃないですか」
すると久世が口を開いた。
「それはお前だけの筋書きだ
正しいと思うなら、なぜ上に報告しなかった
なぜ独断で動いた?」
その言葉に高坂が眉を顰める。
「それは…まだ証拠が」
「なら今の証拠なら十分なのか
監視カメラに何度も映ったから怪しい?
なら近隣住民や職員はどうなる」
高坂と若井は2人とも並んで足元を見始めた。
「施設長と関係がある園が次の爆発施設?
施設長は他にも園を経営してる。
全部爆発するのか?」
高坂が小さく唸ると言う。
「確かに…そうですね」
そういうと倉井が高坂を鼻で笑った。
「お前、始末書がんばれよ」
倉井が肩を叩くと高坂は悔しさで唇を噛み締めた。
倉井と久世が執務室から出ていく。
「まぁ…あの」
若井は高坂を慰めようと手を伸ばした。
それを高坂が強く叩き落とす。
「いって、俺にまで当たらなくても」
「係長」
高坂が係長の元に早足で歩いていく。
係長は背筋を伸ばすと高坂を見つめた。
すると高坂は時計を指さした。
「まだ出勤時刻じゃありませんよね」
係長は時計を2度見すると困惑しながら答えた。
「ああ…そうだね」
「そうですよね、じゃあ帰ります」
「え?」
係長が気の抜けた声を出す。
若井も困惑していると高坂がアイコンタクトをしてきた。
よく分からないが若井も係長に挨拶をする。
「お疲れ様でした」
「うん…お疲れさま」
若井が後を追いかけると、何故か高坂は走って階段を駆け下りて行った。
「え…えぇ」
若井も仕方なく速度をあげる。
そもそも馬力で業界を渡ってきたタイプなのですぐに追いついた。
「はっや」
若井の足の速さに高坂が笑う。
「まぁ、俺かけっこで負けたことないから」
二人で停めた車に乗り込むと高坂がエンジンをかける。
そして前のめりになると言った。
「ぶっぱなしていい?」
「ほどほどでお願いします」
高坂は道路にでると赤色灯のスイッチに手を伸ばした。
「え…ちょ、待って許可」
赤色灯が回り始めると、サイレンの音が鳴り響く。
それに合わせて高坂がアクセルを踏み込んだ。
「うそだろ」
「どうせ始末書、書くなら同じ」
「まぁ、うん…すげーや」
若井は高坂の吹っ切れぶりに、つい笑ってしまった。
「んで、こんな急いでどこにいくの?」
「ひまわり園」
若井は目を見開くと高坂を見た。
「まじで?」
「まじ」
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むずかしいけどめっちゃおもろい 読んででたのしい💗 続き楽しみにしてます!🫶