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飼い猫が居なくなって数年が経った。
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居なくなったのは5年前。
ある日私がまだ小学生だった時、誕生日にお父さんに黒猫を飼ってもらった。
「ルーシェ、黒猫を飼ってきたぞ。」
「にゃあ。」
愛嬌のある鳴き声に名前はロロと名付けた。
小さい体にまん丸な黄色い目が特徴。
たくさん可愛がってあげた。
お父さんは小さな店を経営している人だった。
そこまで有名でもなく評判でもない。
裕福のない家庭だったが何度も黒猫が欲しいとわがままを言った私の為に必死にお金を稼いでいた。
私は生まれた時から母が居なく、離婚して父子家庭で私を育て上げてきた。
お父さんはお母さんの事が大好きだったらしい。
お母さんもお父さんの事が大好きだった。
私はお母さんを一眼見たいとは思わなかった。
こんな優しい人を捨てるなんて、最低だと思ったから。
お父さんは私だけが居てくれればいい存在だった。
将来、お父さんと結婚したいと思う時が何度もあるくらいお父さんが大好きだった。
私とお父さんとロロ、2人と1匹家族でずっと幸せに過ごすんだと思っていた。
けどお父さんは居なくなった。
道端でお父さんの体の一部が発見されたらしい。
左手の薬指だけがその場に落ちていた。
お父さんと連絡も取れず、居場所も分からなかった。
突然のことで頭が回らなかった。
悲しむどころか身体中青く染めてただ一日中汗を流すだけだった。
お父さんが行方不明になって数日後
私はとある養子に引き取られた。
若い女性と見た感じお金持ちそうな中年の男の人。
もちろんロロとも一緒に新しい家に行った。
最初こそ環境に馴染めなかった私だったが新しい両親2人は私に優しくしてくれた。
お父さんが見つかれば私はお父さんの元へ帰る予定だったが
数ヶ月経ってもお父さんは見つからなかった。
数年が経つと家族以上の親しい関係になっていったのだ。私もロロも大きくなった。
でもロロだけは何か違った。
毎日気分が悪そうな顔をしていて
何よりずっと両親を警戒していた。
新しいお母さんとお父さんの手が近づくと
威嚇をしたり手を出したりしていた。
私には何もなかったが
昔は人懐っこかったロロがこれだけ人を警戒している姿に少し驚いた。
心配したお母さんはロロが病気を持っているんじゃないかと言って病院へ連れていった。
医者に見せてみたが特に異常はなかったらしい。
年齢もまだ若く身体に変化も無かった。
日頃のストレスなんじゃないかと医師は言う。
餌を与える事や遊ぶだけで特に私たちは嫌がりそうな事をしていなかった。
お母さんとお父さんにだけ当たりが強いというのは流石に言えなかった。
安静に優しくしておけば問題ないと医者は言った。
いつもお母さんとお父さんはロロに対して厳しくはしていない。餌も高級な食品を与えていておもちゃやトイレなども機能の高い製品を使っていた。
だけど最近のロロは餌をあまり食べなくなっていき、おもちゃにも目をつかなくなった。
『やっぱり何かおかしいのかな…。』
今度もう一回病院に連れて行こう。
そう思いながら膝上に乗っているロロをひたすら撫でていた。
数ヶ月が経った頃
お父さんの会社が倒産した。
多額の借金に人生に追い詰められたお父さんは
天井に紐を通して首を吊った。
まだ私が中学生になったばかりの頃だった。
私が私立中学に受かったら日本旅行に行ける約束だった。
私が憧れている日本に一度は家族全員で行ってみたかった。
お父さんを2人も失った私はただ黙っていることしかできなかった。
一方でお母さんはお父さんが亡くなってからまるで別人のように変わっていった。
私に対する当たりが強くなっていき、次第には食事を制限されたり一日中勉強されたり、自由が失っていく毎日になった。
夜はお母さんがお酒を飲みながら泣き叫ぶ声が毎日聞こえていた。
「返してよ、返してよぉ…!!」
扉の向こうだったのでよく聞こえなかったが
“返して”と言う言葉だけは聞こえた。
ロロも段々と弱っていった。
ついには水しか飲まなくなっていき身体は痩せていった。
私も痩せていった。腕を広げれば骨がくっきり見えるぐらいだった。
いつまでこの生活が続くのだろうと毎日感じた。
父が亡くなってから1ヶ月が経った頃
ロロは忽然と姿を消した。
お父さんが居なくなって唯一の家族だったロロが私の目の前から消えたのだ。
部屋中目を通したがロロは居ない。
お母さんを置いて家から飛び出して近くを探したが跡形もなく、夜まで捜索をしてもロロは見つからなかった。
疲れ果てて膝が崩れる。
冷たい風が吹く真っ暗な森の上で光る満月。
その下で自分は絶望する事しかできなかった。
1番大切な存在を2度も失ってしまった事。
何もできなかった事。
まだお父さんとロロに何もしてないのに
何もプレゼントしてないのに
ずっと私にだけ幸せを与えられた事がクソみたいに思える。
最低だ。自分。
悲しいのに、悔しいのに
なんで涙は出ないんだろう。
『ごめんね……ごめんね……。』
何もしてあげられなくて
本当にごめんなさい。
.
飼い猫が居なくなって数年が経った。
私は高校2年生になった。
働いて稼いだお金で高校に入ることは出来た。
お母さんはというと未だに気分が悪い。
泣き叫ぶどころか異常な人になっていった。
今の人生は心底どうでもよくなった。
何気ない日常がとてもつまらない。
家に帰ってもいい事はない。
いっそもう人生卒業した方が良いんじゃないかと思う時が多くなっていた。
けど私はまだ引きずっていなかった。
ロロだけは何としてでも見つけたかった。
もう死んでしまったんじゃないかと諦めかけていたが数週間前、森の近くで黒猫を見た人がいたらしい。
だからいつも学校が終わると森へ行ってロロを探している。
毎日見つからなくてもきっと見つかる。
そう思いながら探し続けていた。
______________
『……はぁ、はぁ。』
そこらじゅうの草を除けながら辺り噛まなく探したが今日も見つからなかった。
もう日は沈んでいる。
そろそろ帰らないとお母さんに怒られてしまう。
身体についた土埃を払って森を出ようとした。
すると後ろから小さい声が聞こえた。
「そこで何してるの?」
不気味な森の中、突然の声に思わず驚いて振り返る。
目の前にいたのは暗い髪色をした小さな少年だった。
夜だから暗くてあまりよく見えなかったが
私より背が低い7歳くらいの男の子だった。
『…猫を探してたの。』
「猫?…なんで?」
『…それより、何で君がここにいるの?』
『もう暗いから早く家に帰りなよ。』
『お母さん心配するよ。』
こんな夜に森の中に1人でいるなら
迷子なんだろう。と思っていた。
「いいの!それに俺、ここがお家だから。」
『お家…?』
そう言うと自信満々に「うん!」と笑顔を見せる男の子。
お母さんと喧嘩して家出でもしたのかな…。
森が家って…雑すぎない?
「おねーサンは帰らないの?」
男の子は人差し指を口につけながら首を傾けて問いかける。
…
『……帰りたくないなぁ。』
正直家に帰っても良い事はない。
それなら帰らずにここに居た方がマシだ。
「そうなんだ。一緒だね!」
『…うん。」
笑みを浮かべる男の子に不思議に思った。
こんな暗い森の中に居たら普通誰でも怖がると思うのに…。
『君、名前は?…私はルーシェ。』
「俺?俺はイデナ!」
イデナ…若い人の少ないこの島でそんな子居たっけ…。
『イデナ君はどこに住んでるの?』
「遠ーいとこ!」
「おねーサンは多分知らないと思う。」
『そっか…。』
どうやってこんな場所に来たんだろう…?
少なくともここは海より遠い所だから、
間違えて船に乗ってこの島に上陸しても何十キロも歩かないと着かないはず…。
ますます不思議な子…。
「おねーサン!俺ね、とってもキレイな所知ってるんだー。」
『綺麗な所…?』
「うん、行ってみる?」
そう言うとイデナは私に手を向けた。
まるでついてきてと言わんばかりに。
こんな暗い枯れた木ばかりの森で綺麗な所なんてあるのか…と思っていた。
『良いけど…終わったら一緒に帰ろうね?』
『流石に親御さんが心配すると思うし。』
「うーん……。分かった!」
その後安心したかのように私はイデナの手を繋ぎ森の奥深くへと進んだ。
風に靡いて響く草の茂み、虫の鳴き声
フクロウの鳴き声が聞こえてとても不気味に思っていた。
よくこんな所にズカズカと入れるものだな…と思うばかりだった。
しばらくしてイデナは足を止めた。
「着いたよ。」
『…?何もないけど…。』
足を止めた後、辺りを見渡したが歩き出す前の場所とあまり変わらなかった。
何処が綺麗…?なんて考えていたが
イデナの方に目線を向けると彼は空に向かって指を指していた。
「お空。みて。」
彼の言葉通り空を見上げた。
私は目を丸くした。
木で隠れていた空だったが私たちのいる周辺だけ葉が枯れ散っていて空が大きく写っていた。
空には数千を超えるほどの星が広がっていて流れ星も所々流れている。
今まで見た事ないくらい綺麗に輝いていた。
『綺麗…。』
「俺のいちばんのお気に入りの場所なんだ。」
「おねーサンにも見せたくって。」
『…こんな特別な場所、私が見て良かったの…?』
私がそう言うとイデナは一瞬私を見て驚いたがすぐに空の方へ顔を向けた。
「いーの。おねーサンには特別。」
『そっか…。』
やっぱり不思議な子だなぁ、と思いながらも空を見上げる。
こんなに綺麗な景色を見ていると、お父さんとロロにも見せたかったなぁって思った。
今、元気にしているかな、ロロ…。
あの家なんかに帰りたくない。
もうずっとこうして星を見ていたい。
そう思っていると
自然に涙が頬を伝っていた。
「…おねーサン、泣いてるの…?」
私を見たイデナは心配そうに声をかけた。
『あ…何でだろ……。』
『何で涙が……。あれ、止まらない。』
手で何度も拭き取っても涙は溢れるばかり。
いつのまにか空を見上げる事なく、腰を下げてしゃがんでいた。
「大丈夫?…よしよし。」
その場を見ていたイデナは、しゃがんで頭を下げるルーシェの背中を撫でていた。
「おねーサン、辛いコトでもあったの?」
『……。』
『…あったらどうしてくれる…?』
顔を少し上げてイデナの目を見ながら
涙ぐんだ声で話すルーシェ
「…。」
「俺がぜんぶ聞いてあげる。」
『…!…っ、わた、私…。』
『もう…どうしたら良いのか分からない…。』
『お父さんと飼い猫が居なくなって、お母さんがダメになって…。』
「うん。」
『自分の存在も分からなくなって…。』
『もう全部、全部…。』
「うん。」
『全部が、嫌”になったぁ〜…。』
泣き声を上げて叫ぶ。
今までの溜め込んだ気持ちを全てここで吐き出した。周りなんかどうでもよく思った。
「イイ子。全部吐き出せて偉いね。」
イデナは微笑みながらルーシェの頭に手を置く。
こんなに悩みを聞いてくれて褒められると少し嬉しくて安心する。
その瞬間に目の周辺に生温かいものが触れる。
私の涙をイデナが舌で舐め取ったのだ。
『…、?イデナ…?』
舌を引っ込めたイデナは目を合わせ、口を開く。
「俺、おねーサンの事もっと知りたくなっちゃった。」
→後編へ続く。
コメント
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お と と !? お 久 し ぶ り !! つ ゆ で す 覚 え て ま す か ❕ 相 変 わ ら ず ス ト 最 高 過 ぎ て 溶 け そ う
おと久しぶりなのにすと覚醒してるって何事ですか
おとと!!!!! 久しぶり‼️‼️‼️‼️‼️‼️🌚 ぐおおストに感情移入しすぎて途中涙目だったのがイデナのメロさで引っ込んだ