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夕暮れの教室、窓から差し込む橙色の光の中で、京介はノートを閉じる。
「……なぁ匠海。お前さ、俺といるとき顔に出すぎ」
「え、何が?」
「何がじゃねぇよ。お前、俺のこと好き好きって顔に書いてある」
拗ねたように笑う京介の言葉に、匠海は肩をすくめた。
「そらそうやん。恋人なんやから、隠す必要あらへんやろ?」
「……バカ。誰かにバレたらどうすんだよ」
「バレてもええけどな」
「……っ、そういうとこほんっとムカつく」
口では毒づきながらも、京介の耳は赤く染まっていた。
街灯が灯る道を並んで歩く。
京介が「腹減った」と呟けば、匠海は笑ってコンビニに寄り、京介の好きな甘いパンを買ってくる。
「ほれ。俺の彼女に貢がなあかんからな」
「……誰が彼女だ、バカ。……でもありがと」
パンを受け取る京介の横顔は、照れ隠しの笑みで満ちていた。
その夜、匠海の部屋。
ベッドに並んで横になり、互いの手を握る。
「……なぁ京介。ほんまに幸せや」
「当たり前だろ。俺と付き合えんだぞ。感謝しろ」
「はは、そやな。……でも俺の方が幸せにするから、覚悟しときや」
そう言って匠海が唇を重ねると、京介も自然に目を閉じて応えた。
もう、兄弟だから、とか、周りにどう見られるか、とか。
そんなことはどうでもいい。
「俺らは、恋人なんや」
匠海の囁きに、京介は目を潤ませながら笑った。
「……ああ。俺の恋人は、お前だけだ」
互いを強く抱きしめ合い、夜は静かに更けていく。
その温もりがあれば、どんな未来も怖くない。
二人はもう、兄弟ではなく、かけがえのない恋人だった。
そしてこれからもずっと――甘く、熱く、隣り合って生きていく。