シークレット~裏表の日常~
第一話。はるか向こう。(前編)
「…疲れた。」
家のドアを開け、中に入るとそのまま座り込んでしまう。彼女には額に汗も見当たらず、見える範囲での疲労の原因は見当たらない。
数分後、やっとその場から立ちリビングの電気をつけるな否やまたソファーに倒れる。両手に持っている大きな袋を投げるようにして机に置くと、2階に駆け上がり自室の扉を開けた。もう昼なのに雨戸も閉めたままそこらへんに小説や誰かからの手紙が散らばっている。彼女はそれを踏みつけて奥にある椅子に座り机に置いてあるPCの電源を付けた。電気をつける様子もなくヘッドフォンを付けた。起動画面を見つめる目はクマが濃く半目になっている。
『ただいま~。疲れた~。』
起動した瞬間、?マークのアプリを開くと手早くタイピングを始め上記を打ち終わるとエンターキーを勢い良く押す。表情が少し緩くなった彼女は大きく背伸びをするとまたタイピングを始める。
『お疲れ様!あれ?今日学校だよね。』
『ありがとう!今日は休み。ちょっと宅配取りに行ってて。』
いつも早く返信してくれる人だ、とボソッと呟く。メッセージを見た瞬間彼女は暗い表情にもどってしまった。
机にうつ伏せになり、そのままジッとしている。しばらくすると玄関から音がし、二階に向かって大きな声が聞こえてきた。
「峰!また二階にいるの?ご飯にするよ!」
その声にうんざりしたような表情をして、起き上がると部屋を出て下の階に向かって叫ぶ。
「分かった!ちょっと待ってて!」
相手の返事も聞かずに部屋に戻った彼女はまたPCでタイピングを始める。
『とりあえずお昼ご飯食べてくる。また後でっ!』
「何人かが返事を書いています」と表示が出たがまた誰かの呼ぶ声が聞こえる。電源を切り急いで部屋を飛び出して下に降りて行った。
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