テラーノベル
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お目汚しを失礼します。
拙作です。
犯罪描写・グロテスクな描写・性的な描写が含まれており人を選ぶ作品となっております。
閲覧は自己責任でお願い致します。
数ヶ月前のことでございます、
ええ、貴方様もご存知でしょう。あの婦女暴行殺人事件のことで。
巷でも噂になりましたよね、あの町一番の別嬪が最期にゃ薄暗ぇ森にポイだ。何とも悲しいことだと、ああ、劇まで作られたが未だに犯人は分からず。シャアロックホウムズだか、ポアロだか知らんが江戸川乱歩の小説に毒された探偵気取りがアイツが怪しいアイツが犯人だと当てずっぽうのような『名推理』をしているそうで。
あっし?あっしは奴等とは違います。ここの出来が違うんでね、ええ、いや彼等を阿呆と言っている訳では。まぁお聴き下さいな。
こういうのは犯人視点に立つのがいい、同じ人間なのだからある程度は理解出来ることも在りましょうぞ。
帰るのはご勘弁を、まぁ貴方も気になるでしょう?
なんせあの悲劇的な事件、犯人を見つけられたら貴方も大変でしょう。
それではあっしの頭の中をご覧にいれましょう。
暇である。ああ、恐ろしく暇である。
暇というものは注意力を鈍らせる人間の大敵である。
仕事中の身でありながら頭はアルコールでいっぱいだ。
ああ、酒、酒、黄金の液体に白い泡を冠した人間の労役の対価、堕落の象徴。
制服姿であることにも構わず店でキンキンに冷やされたビール瓶を1本買う。
この蒸し暑い中、冷えた麦酒を飲む爽快さと言ったら……!
ごくごくぐびぐびと喉を鳴らす。突き抜ける炭酸、ああ、ああ!これこそが仮世の天獄!
アッという間に空になった瓶を川に投げ捨てた。
ぼちゃんと音を立て、プカプカ浮かぶ空き瓶の周りに水面が広がる。
……嗚呼、またやってしまった。
勤務中に酒を飲むのは此れで何度目だろうか。幸い片田舎の勤務のため支障は来たしていないもののバレれば首が飛ぶことは必然だろう。
火照った体を夕暮れの涼しい風が撫でる。
心地好い、その風を肺いっぱいに溜め込もうと大きく息を吸った時であった。
汗の匂いに青梅のような甘酸っぱさが混じったいい匂いがした。ああ、何処ぞのお嬢様なのだろう。食いもんが良い女は体臭も良いのだ。体から俺ら市民とは違うのだ。
その時、ムクムクとある欲が膨らんだ。
市民の、もっといえば下賎な身である自分がその高貴な女を犯すのだ。
白魚のようなほっそりとした腕を掴み汚らしい地面にねじ伏せ、華やかな着物を剥ぎ取り男を知らぬその体に下衆の種をぶちまけるのだ。想像すればするほどその欲は抑えきれぬものになった。アルコールが入っていたせいもあるのだろう。
男はただただその獣のような本能を剥き出しに、哀れな兎の匂いを辿った。
ああ、あの女だ。
腰まである黒い髪を靡かせ、手にはシルクで出来た手袋をはめ、可愛らしい日傘を差している。
夕日のせいか、将又この暑さのせいか、ほんのりと頬を染め首筋には汗がつぅーっと流れている。この扇情的な耽美さに男の興奮は絶頂に達していた。
そうとも気付かぬ哀れな娘。
「あら、鼻緒が切れてしまったわ」
どうしましょうと首を傾げる姿すら色気のあるその女に猛獣は声を掛ける。
「これでは歩けまい、私めが貴女様のお屋敷までおぶっていきましょう」
これをすんなり信じた女。ああ、彼女は心優しいから周りも彼女に親切にしていたのです。だからその悪意ある申し出も親切なものだと信じて疑わなかったのでしょう。けれども彼女を責めるのはお門違いであることは貴方も重々承知していることでしょう。純粋無垢な娘を食い物にした悪漢こそ責められるべきでありあの娘は哀れな被害者なのです。
話を、話を続けましょう。
男は女をおぶって森の奥へ奥へと進みます。木の枝が女の柔肌をさいても、女が悲鳴を上げ、泣き叫んでも止まりません。おのが欲を満たすため、どんどんどんどん鬱蒼とした森の中へ…………。
ああ、嗚呼!哀れな娘……。
人っ子一人通らぬ薄暗い森の、腐った落ち葉や虫のいる汚らしい土に叩きつけられ、父が十八歳の祝いにと贈った艶やかな着物を剥ぎ取られ、真珠のような肌を獣に晒した!
心は未成熟といえど身体は十分女としての、いやそこらの女の倍は良い身体をしていた。
小さくほっそりとした体躯には見合わぬ豊かな胸。それは将来娘が選んだ相手と結婚し、子を産んで育てるためのものであって決して下衆の玩具にしていいものでは無かった。
娘は泣き叫んだことでしょう。未知の痛みに苦しんだことでしょう。恐怖に顔を歪ませ、父母に助けをこうたかもしれません。それとも、恥辱に震え、男に恨み言を吐いたでしょうか。それすらも興奮の材料のなったのですか。ああ、あっしには知る由も御座いません。
娘の身体はその獣にとってそうとう気に召したのでしょう。何度も何度も娘を犯し、汚らしい欲を何度も何度も吐き出した。そして冷静になったのです。
このままでは不味い、この娘はあの屋敷の娘だ。自分が陵辱したことが知れたらタダじゃ済まない。
男は息も絶え絶えの娘の首をキュッと締めました。……その瞬間ですら挿入したままだったのでしょう。首が締まり悶える娘に興奮を覚えたのか、将又体が反応して締まりが良くなったのか。ああ、最期まで娘は男の玩具に過ぎませんでした。何故分かったかって?可哀想に、おぼこ娘であったためか、将又乱暴に扱われたせいか、その娘の陰部は傷だらけだったのです。その中には死後にできた傷もありました。アア、アア、惨たらしいことこの上ない。
娘の首にくっきりと指のアザが浮かび、チットモ動かないのを確認して、漸く安心した。之で秘密を知る者は俺とこの俺の使い古した女だけだ。しかしやっぱり恐怖は戻ってくる。この人ならざる、獣の如き所業を誰かに知られたら?恐怖はどんどんどんどん膨らむ。それはやがて八つ当たりにも似た他責思考へと変化する。そもそもこの女が悪いのだ。俺を誘惑したこの女が。この女のせいで俺の人生は滅茶苦茶になるのかもしれないのだ。
そう考えると憎くて憎くて、男は哀れな骸をより一層薄暗い木々の生い茂る所へと蹴飛ばした。
時刻は草木も眠る丑三つ時であった。誰も男の悪行を知る者はいない。
娘が消えて数日後、屋敷の主の祈りも虚しく娘は蟻や蛆等にたかられた状態で発見された。
黒曜石のような瞳はどろりと零れ落ち、蟻がせっせとその中から彼女の欠片を運び出す。体の柔らかい部位は野犬にでも食われたのだろう。骨にへばりついた僅かな肉を蛆等の幼虫が喰い破り命を紡いでいた。
その肉塊とすら呼べぬ畜生共の残飯が娘だと分かったのは、父親が娘に与えた着物が落ちていたからである。奇妙なことに、この着物だけは破れることなく完全な状態であった。それがより一層両親を悲しませたことは言うまでもない。
さて、あっしの思考はどうでしたかな?ああ、まぁ、娘を襲うところは流石に想像出来ませんでしたな。あんたにとっちゃただの若い女でもあっしにとっちゃかけがえのない娘なもんで。ずっとアンタが娘の仇を見つけてくれると信じていたんですぜ?でもあっしも父親だ、ただ黙った指をくわえて警察の捜査を待つことなんざ出来ねぇで。素人なりに何度も何度も調べて漸く犯人を見つけたんでさぁ。こんな物乞いのようなボロっちい身なりをしているのも、下層階級の喋り方をしているのも犯人を警戒させずにするためでして。いやぁ、やっと、やっと娘の仇を討てる。玩具の様に扱われ、恐怖と怒りの中死に絶え、死後はゴミの様に捨てられた儂のたった一人だけの美しい愛娘。死して尚、演劇やら小説やらのモチーフにされ、受けた屈辱を大衆娯楽として消費される哀れな我が娘。貴様には分かるまい、必死に娘の無念を晴らそうと犯人にを血眼になって探す親の心が。受け入れ難い現実を見せつけられ、妻は娘のあとを追ったよ。儂も抱えきれぬ絶望と喪失感に何度死を希ったか。だが、儂ら家族をこんな目に遭わせた犯人を野放しにする訳にはいかない。奴への怒りだけでここまで生きながらえたんじゃ。
ああ?漸く分かりましたかな?警察さんよ。
儂はアンタが犯して殺した女の父親だ。
コメント
4件
教祖様ー、オプの利用一日制限されちゃったからお話しできない
何故だろう。興奮したのは私だけだろうか…!最初の語り口調的に旅館とか夜の店とかの店主みたいなポジションかな?噂話を客に話しながら畳の上で事細かく悠長に鮮明に…人を引き寄せるような文才力…想像できてしまうほどの表現力がまた生々しさや感情が湧き立つようなこの感じ女性の酷い有様、私欲を満たす男、一つ一つ記憶に刻み込んでいるその愚かで馬鹿な娘の父親。聞き手の警察官全てが素晴らしい!!!!!!!胸糞悪さよりも興奮という感情が高鳴る、今までで1番好きかもしれない…最後の語り手が被害者である娘の父親だったことが1番鳥肌が立ったと同時に父親はどんな感情でどんな顔で警察官に話していたのかが気になり過ぎる”!!!!!作品一つ一つが癖過ぎていつか刺さり過ぎて大きな穴空いちゃいますってぇ教祖様