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4月28日
高校1年生の春。
今日は暖かいわけでも寒いわけでもない。
ただ、心地の良い風が静かに吹いている。
屋上で風に吹かれているとさっきまで隣で眠っていた彼が目を覚ました。
「 ねぇ .. ? わかい。」
その声はまだ寝起きでぽやぽやしていた。
「 ん? どうしたの? 」
彼はゆっくりと俺に身体を預けてきた
「 人ってどうやって死ぬのかな。」
いつも笑顔で楽しそうな笑い声をあげている彼がこんなにも悲しく、切ないことを言い出すもんだから俺は心配になった。
「 … な、んでそんなこと聞くの .. ? 」
彼がどういう意図でこの質問を投げかけてきたのか俺は分からなかった。
「 んー … 気になっただけだよ。」
そう言いながらふわっと優しい笑顔を俺に見せる。
でも、その笑顔はいつもと違った。
まるで、心の奥底にある何かを押し込めるているような優しいけど少し辛そうで泣きそうな笑顔だった。
「 そっか … 、」
俺の返事が遅く、考え事をしてたことが分かったのか彼は俺の手を包み込むようにぎゅっと繋いでくれた。
「 … 元貴は死なないよね ? 」
向かい合って両手を握りしめた。
どうやって死ぬのかなんて聞かれたら流石に不安になる。
なのに元貴はずっと笑っていた。
握りしめた手は冷たくて、でもどこか温もりを感じた。
朝の太陽は薬指に輝いているお揃いの指輪だけを照らし、生きていると思わせてくれた。
.
その日の夜。
元貴が死んだ。聞く話によるといじめのせいだと。
意気地無しな俺のせいで傷つかせてごめん。
そんな気持ちは元貴に届かず、暗闇に沈んでしまった。