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Dream of memorY.3
ーまた、今日が来る。
一体、今日がどれだけ過ぎただろう。
なんで生きてるんだろう。
楽になりたい。
幸せになりたい。
でも、
この命が尽きたら、幸せになれるの?
もっと苦しくはならない?
辛い思いはしない?
わからない。
何もかも。
わからないことだらけ。
身体を起こす。
学校に、行きたくない。
でも、家でも…
最近は親も、少し冷たくなった気がする。
先生が、嘘ばかり言うから。
一番だった場所まで奪おうとする。
学校につけば、
『またきたぞ〜!』
2人に両腕を掴まれて、もう1人に頬を殴られる。
何も、考えたくない。
これが、ほぼ日課になっている。
日に日に、ほんの少しずつ酷くなっている気がする。
『おはようございます、人狼君。今日も元気そうですねぇ。』
先生も、ろくな奴がいない。
そしてあの子も、
『うぅっ、』
酷い目に遭っている。
『やめろ!』
俺は、止める。
この子の分も、俺が受ける。
『調子に乗るなって言っただろ!』
『ぐぅっ!』
ボコボコにされた。
でも、これでいい。
これで…
俺は、痛みに耐えながら立ち上がる。
『狼夢さん、ごめんなさい。』
あの子は謝ってばかりだった。
おとといも、昨日も、今日も、次の日も、その次の日だって、
謝ってきた。
そして、
色々なところで、俺の後を追っかけてくるようになった。
『ついてくるな。』
俺は、冷たくあしらった
でも、ついてくる。
帰る時も、ついてきた。
『だから、ついてくるなって!』
俺は怒った。
『ひぃっ!』
あの子が驚いた。
だけど、
近づいてきた。
『くるな!』
まだ、信じてはいない。
嘘をついて騙しているかもしれない。
だから、後を追っかけて欲しくない。
醜い姿を見せて欲しくない。
だけど、
近づいてきた。
『狼夢さんは、優しい人ですか?』
『はぁ?』
いきなり、思ってもいないことを言われた。
優しいだなんて、
『んなわけないだろ!何を見てたんだ!思ってもないことを言うな!』
優しくしたことなんてない。
いつも冷たくあしらったのに、何を言ってんだ。
『いつも助けてくれるから、思いました。』
『助けてなんかいない。見ててイライラするからやってるだけだ。』
アイツらが気に入らない。
だから、アイツらに突っかかっているだけ。
『違うとお…』
『勝手なこと言うな!俺は、優しさなんか捨てた。だから、優しくなんてないんだよ!』
強く見せるため、舐められないため、俺は優しくすることをやめた。
『ごめんなさい。』
『だから謝るなって言っただろ!謝るくらいなら黙っていろよ!とりあえず謝ればいいと思ってそうでムカつくんだよ!』
『うぅっ…』
あの子が泣きそうだった。
冷たくしすぎたかな。
少し、後悔する。
『ごめん、言い過ぎた。』
だけど、
とうとう泣いてしまった。
『酷いこと言っちゃってごめんなさい。』
俺は、優しく声をかけた。
『やっぱり…』
その子は何かを言った。
『狼夢さんは、優しいです…』
あの子が、
少し笑顔になった。
初めて、この子の笑顔を見た。
ちがう!そうじゃない!
それは…
さっき、少しだけ昔のように優しくしようとしたから。
『ああーもう!さっきのは忘れろ!』
今考えると恥ずかしい。
もう、優しくなんてしない。
帰ろう。
家に着く。
と、
まただ。
母が電話をしていた。
今日も、先生は嘘をついている。
『でも、うちの子はやってないって言ってるんです。』
それは、
きっと無駄だろう。
少しして、電話が終わる。
結局、俺が悪いことになって終わった。
そして、父が帰ってくる。
『邪魔だ。』
父は、冷たくあしらった。
父も、元々人狼に悪いイメージがあるんだろう。
だから、昔と態度は変わらない。
母が俺のことを話しても、父は興味なさそうに黙ったまま、他のことをしていた。
まだ、手を出されないだけマシだとは思う。
あの子はどうなんだろう。
また、次の日。
あの子がきた。
あれ?
あんな傷あったっけ?
あまり覚えてないけど、家族からも暴力を振られているのかもしれない。
でも、どうすることもできない。
先生もそうだが、大人が悪くない子供に手を出すなんてみっともない。
いじめもみっともないが。
こんなにたくさん人がいるのに、誰も助けようとしない。
今まで手を出してこない人も、結局は敵だ。
この世界に、どれくらいの人が俺の仲間になってくれるのだろうか。
あの子が、こちらを見てきた。
俺は知らないふりをした。
でも、ちょこちょこ見てくる。
気になって仕方がない。
『何?』
俺は、目を合わせずにそれだけを言った。
『仲良しに、なってくれませんか?』
仲良しに?
何を言ってるんだ?
まさか、
友達になろう、と言ってるのか?
『なるわけないだろ。』
昨日、優しさを少し見せてしまったせいだろうか。
はぁー。
めんどくさいことになったな。
その後も、
ついてきては、
『仲良しに…』
『ならない。』
『な…』
『ならない!』
『うぅ、』
ならないと言っているのに、何度も訊いてくる。
本当に面倒だ。
帰る時も、
『仲良くなって欲しいです。』
『しつこいぞ!』
せっかく遠回りしているというのに、ずっと付きまとわれてはそればかり。
『仲良しな人、欲しいです…』
また、泣きそうになっている。
でも、そんなのはしらない。
『名前すら知らない奴なんかと、友達にはならないぞ。』
名前さえわかってない。
この子は、名前で呼ばれたことがなかったと思う。
まぁ、名前を知っていようが友達になる気はない。
『ごみ、』
『は?』
ゴミ?
何を言ってるんだ?
『私の名前、ごみです。』
『は?』
何度考えでも意味がわからない。
どうしても辿り着くのは、
この子の名前がごみだということ。
ありえない。
『お前、そんな名前でいいのかよ!』
五美だとかそんな漢字を使っているとしてもおかしいだろ。
一番に連想されるのは、汚物だ。
『いいですよ。私らしい名前だと思います。』
『ふざけるな‼︎何もらしくなんてないだろ‼︎』
その子の胸ぐらを掴んで怒鳴った。
『やめてください…お願いします……』
俺は、離してやった。
だけど、そんなのは、
どう考えたって明らかにおかしいことはわかる。
『いいんです。そこにあるゴミだっていい子なんですよ?』
『え、』
地面に落ちているタバコの吸い殻。
いい子…
よくわからない。
『やくにたつ?です。』
そういうことか。
ゴミでも、誰かの役に立ったから。
だから、いいってことか。
『変なことばかり言うな。喋り方も、いちいちですとか付けるな。』
気になるところばかり。
よくわからない奴だ。
『ゴミも、お金。』
・・・
そうか。
だけど、
そうじゃない。
きっと、この名前をつけた人は、
そんなこと、考えてはいないだろう。
ただ、良い風に言っただけ。
ごみだなんて言いたくない。
呼びたくない。
あの子を置いて、帰る。
帰ろうとするが、
ここはどこだ?
迷ってしまった。
確か、こっちだったはず。
でも、知らない道ばかりでわからない。
見たことがない場所。
うーん。
まぁ、帰っても嫌な思いをするだけなら、
ゆっくり帰ろう。
どうせ、心配なんてしてないだろう。
と、
『そこのガキ、何やってんだ。』
知らない人に話しかけられた。
『・・・』
そちらを見る。
弁当屋だ、
その中にいる男が、こちらを見ていた。
『大丈夫か?』
なんだコイツは。
こっちは怪我してんだ、大丈夫なわけないだろ。
『ほら、弁当持ってけよ。』
何を言ってんだ?
金は持ってない。
買えない。
『金はない。』
そう言って、立ち去ろうとした。
『金はいらない。これは処分しなきゃいけないんだよ。』
『しょぶん…』
『捨てる、ゴミになる。』
!
ゴミ…
『ほんとに、金はいらないのか?』
『あぁ、』
その態度、おかしいな。
俺は人狼なのに…
『俺は、人狼だぞ?』
『構わん。人狼の噂なんて信じちゃいねーよ。』
人狼の噂?
これは、
人狼のことを聞けるチャンスなのでは?
『人狼の噂ってなんだ?』
『人狼には、特別な力があると聞いたな。なんか、能力や筋力が普通より高いとか。だからいじめられるのさ。』
?
よくわからない。
『とくべつなちから…のうりょくやきんりょく…』
難しい言葉。
『頭がいい。力がある。』
本当にそういう意味なのかはわからない、
でも、さっきよりわかりやすい。
『家族は何人だ?』
『親2人と俺だけ。』
と、
弁当を3つ、袋に入れて、
『ほら、持ってけ。』
渡された。
『ありがとう。』
俺はそう言って、また迷いながら帰る。
なんとか家に着く。
『遅かったわね。』
『・・・』
俺は何も言わない。
『これ何?弁当?どこで盗んだの?』
母は、さっきもらった弁当を見て、盗んだものだと思ったようだ。
『盗んでない。弁当屋でゴミになる弁当をもらっただけ。』
『そう。』
それだけ言って、もう会話はない。
俺も、黙っていた。ー