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【 君 の 瞳 に 見 惚 れ て 】
⚠︎ 多聞 攻 / 観崎 受 ⚠︎
静かになった校舎にチャイムが鳴り響く。用事を済ませてから遅れていつもの部室に向かい、ドアを開けるとそこには外を眺めているザキの姿が目に入った。
「 ……遅い 」
少し拗ねたように言う彼はやっぱり弟気質だ。まぁ、本当に弟なんだけど。ザキの目の前の席へ向かい荷物を下ろしてから、腰を下ろす。
「 ごめん、ごめん! モガリたちもまだ来てないの? 」
辺りを見渡しても彼以外の気配を感じないことに疑問を抱き聞いてみた。
「 おう。 なんか生徒会室に呼ばれてんじゃね? 知らんけど 」
そっか、と軽く返事をして何か始めようと手を伸ばそうとするが伸ばした先の行き先もなく、退屈になった手は膝元へ置くしか無かった。そう、ファントムバスターズはまとめてくれるコレシキがいないと何をすればいいのか分からなくて何も出来ない。すると前の方から声が聞こえ顔を上げる。
「 なぁ、昼の続きしよーぜ 」
なんかあったっけ、と記憶を辿らせるとはっきりと思い出した。
ちょうど今日の昼休み、俺は他人と目を合わせる練習がしたくてザキに頼み込んだんだった。一回試しにやってみたけどすぐ逸らしちゃって惨敗だったな…。
「 いいの? 助かるけど… 」
ザキが意外と乗り気なことに驚きつつも俺はスマしを用意しストップウォッチを準備した。
「 その代わり、チャリ2ケツさせて 」
絶対その口実を作るためにやろうとしてるでしょ。てか、チャリ2ケツはいつもの事だし!と思いつつも口には出さずに心の内に秘めておいた。姿勢を正して深呼吸をし、気合を入れてからスマホの画面へと指を伸ばす。
「 せーのッ 」
二人で声を合わせて合図を出した途端、目を合わせ始める。するとなんだか、いつもとは違う雰囲気の顔に少し緊張した。今のザキの眼は子猫でも見つけたかのような眼差しに感じた。優しい表情に飲み込まれそうになる。俺は気づけば自然と緊張が解けて、身構えていた身体の力も消えていった。もう目が離せない。ふと出た感情に自分自身も驚きつつも、やっぱり視線はザキから外せなかった。睫毛長いな…。鼻筋も通ってて、白くて綺麗な透き通っているような肌。綺麗な瞳の色…。もう出会ってから時間が経っている気がするのに、まだこんなに気付いていないことが目の前に沢山あったんだと思う。目の前にいる存在が愛くるしくて心臓の鼓動はどんどん早くなっていった。
俺がなかなか目を離さないと変に思ったのか、ザキは頬を赤くし、遂には目を逸らしそうになる。
俺はその眼を逃がしたくなくて…。
考えるより先に身体が動いていた。
「 ちゅっ 」と慣れていないリップ音が静かな部屋に響いた。
慌てて顔を離すと、彼は真っ赤にした顔で状況を理解できずこちらを見つめていた。自分でも何をしたのか分からないくらい頭が真っ白になった。
「 あっ、ごめッ 」
必死に言葉を紡ごうとするけど、彼は勢いよく立ち上がり荷物を持ってドアへ歩き小さく呟いた。
「 ちょっと俺、用事思い出したから帰るわ 」
後ろ姿を見つめていると、ほんのり耳が赤くなっているように感じたがそれどころじゃない…。
絶対怒った。だってファーストキスだよな、きっと。俺もファーストキスで自分からやったことだし後悔はしていないけど!……大事なファーストキスを奪ってしまったかもしれない。好きじゃない相手がファーストキスの相手だなんて嫌だろうな。しかも男。
俺のせいでファントムバスターズが崩れてしまったら、どうしよう。
そう思い詰めているところに、後ろから音がした。振り向くとモガリとコレシキが入ってきていた。
「 なーんかザキが来る途中帰ってったんだけど、どったの? 」
俺はさっき起こったことを恐る恐る話した。どうしよう、この二人にまで引かれて嫌われてしまったらと思いながらも顔を上げた。するとモガリが引くほどニタニタしながら言ってきた。
「 え、マジ!? 俺だったら激おこだわ! 」
「 好きな相手だったら話は別だけどな! 」
そうだよな、やっぱ怒ってるよな…。そう呟くとコレシキがモガリの横に並んで、モガリと同じようなニタニタ顔でこっちを見てきた。
「 うんうん、好きな人だったらもはや嬉しいけどね…。 耐えられなくて逃げちゃうかも 」
意味が分からずに困惑していると、流石の頭が良いコレシキが解決策を出してくれた。
「 やっぱり、まずは正直に謝ってその後に自分の気持ちを伝えるのがいいんじゃない? 」
「 だな。 ちゅーしたってことはタモン、ザキのこと好きなんだろ? 」
好き…。
自分で言っていて顔が火傷しそうなほど熱くなる。 やっぱり向き合うのが最適解だ。明日タイミングを見計らって謝ることにしよう。
翌日。昼休みになり彼は立ち上がってすぐにどこかへ消えてしまった。話しかけようとしてもどうしても避けられているように感じてしまう。今日放課後来てくれるかな…。不安になりながらも、もう決めたことなんだから、と冷静に気持ちを保つ。
ザキと二人になりたくて少し早めに部室へ向かう。静かにドアを開けると、誰もいないことを確認する。もうこの時間しかない。ここでタイミングを逃したらもう話せなくなるかも…。色んな思考が頭をよぎる中、ドアの向こうから静かな足音が聞こえてきた。
ドアがゆっくりと開かれるとこちらの存在に気づいた彼は気まずそうな顔をしている。
「 ザキ…、あの… 」
話をしようとすると顔を赤くしたザキは、体育座りになり膝に顔を埋めていた。俺はチャンスだと思いザキの目の前で頭を思い切り下げた。
「 ごめんなさいッ。 俺、あの時何も考えずに…ザキに、キ、キスしちゃって 」
必死に何を言おうか考えていたはずなのに、いざ面と向かって話そうとすると頭が真っ白になる。
「 ……ファーストキスだった…? 」
思わず口に出した言葉に彼は益々耳が赤くなっているのが分かった。
少しの間沈黙が流れる。あ、これ、地雷踏んじゃったかも。
そう思ってさっきの言葉をかき消そうとした時、小さくで呟くような声が聞こえた。
「 ……ファーストキスだったけど、 嫌な気はしなかった 」
「 えっ 」
予想もしなかった言葉に思わず声を漏らしてしまう。 何それ。可愛い。反則だよ。
俺は期待に任せて、気持ちを伝えることにした。
「 俺、ザキが好き。 友達じゃなくて、恋愛として。 長い睫毛も、真っ白な肌も、すぐ照れちゃう性格も、ちょっとわがままなところも…… 」
「 ザキの瞳も。 全部全部好き…! 」
そうだ。気づいた時にはザキの全部が好きになっていた。
「 …だから、俺と付き合ってくれませんか…? 」
頭を下げて、彼の前へ手を差し出す。在り来りな告白の仕方だけど俺にとっては初めての告白だ。心臓の鼓動がうるさいくらい鮮明に聞こえる。
「 ん…、俺も好き… 」
今にも消え入りそうな声だったが、俺は聞き逃さなかった。差し出した手には白くて細くて綺麗な手が握られている。嬉しさと安堵で俺は、ザキの小さな手を引き、自分の体に引き寄せ抱きしめた。
「 ザキ、好き 」
心の中でかみ締めた言葉を口に出す。頭1個分くらい小さい彼の体からは微かに心臓の鼓動が聞こえてきた。
しばらく抱きしめているとほんのり赤くなった顔を上げたザキが言った。
「 ん… 」
「 …セカンドキスもタモンがいい 」
何その言葉…。可愛すぎ。俺は幸せをかみ締めながら、そっと唇を落とした。
満足そうにしている彼は、悪戯っぽく笑いタモンの顔を見上げて言った。
「 サードキスも待ってる 」
ファントムバスターズ本当に良い作品ですよね。このままアニメ化まで行って欲しい…🥹確か、今年の初詣はこれを願った気がします。