不規則な呼吸音。時々聞こえる嗚咽。
(また…過呼吸…)
パニックになりながらも何とかひとりで過呼吸を抑えようとしていた。規則的な呼吸音になってもすぐに不規則になってしまう。
もしかしたらと思った僕はズボンのポケットを探る。薬か呼吸器を求めて、過呼吸を落ち着かせることも忘れて、一心不乱に探した。けどポケットには何も入っていなかった。
それで更に不安が強くなった僕は過呼吸が酷くなる。
かひゅっ
と息を吸う音。
ふっ
と息を吐く音。
時々、
お゛えっ
と聞こえる嗚咽。
だんだんと立っているのが辛くなる。立つこともままならなくなり、レンガで整備されていて少し土がのったザラザラした地面の上に座り込む。膝から崩れ落ちるように。
両手で服をぐしゃっと縋るように掴んだ。
けど過呼吸は止まらない。
むしろ辛くなった。
息が苦しくなる。
目に熱いものが溜まっていく。次第に視界は涙と酸素不足で歪んでいく。
やばい倒れると思ったとき、BOOMと聞きなれた音がした。
「どうせこんなこったろォと思ったわ」
「…かっ……ちゃ…」
ぼやけた視界で捉えたミルクティーベージュの髪色と赤い瞳。
爆発の個性と声と口調。
ほのかに香る甘いニトロのような匂い。
僕の幼馴染みのかっちゃんだ。
「てめぇまた過呼吸かよ。薬は?」
かっちゃんの問いに僕は首を横に振った。
「まァ薬あンならとっくに飲んでんわな」
かっちゃんはズボンのポケットに手を突っ込み、シートに入っている薬を取り出し、錠剤をひとつ自分の口に放り込む。
しゃがんで、僕と目線と合わせるとそのまま僕に口付けをする。
舌を入れ、錠剤が口から口へと移動する。
かっちゃんの舌で奥まで入れられた錠剤をごくりと飲み込んだ。
飲んだらすぐ収まる訳じゃないけど薬を飲んだのとかっちゃんが傍にいるって言うことで安心して少し落ち着いた。
飲んだのが分かると僕とかっちゃんの唇が離れる。
「ん、…はぁはぁ…」
かっちゃんは慣れた手つきで目に溜まった涙を真っ白で綺麗なハンカチで拭うとじわぁっとハンカチが染みた。
「苦しいな、出久」
そう言い、しゃがんだまま抱きつき背中をとんとんっと優しく叩く。
薬が効いたのかそれともかっちゃんがいることで安心しているのか呼吸がだいぶ落ち着いてきた。
「ん…かっちゃんもう大丈夫だよ、」
「あ? てめぇの大丈夫は信用ねぇんだよ」
「えぇ…ほんとに大丈夫なんだから、」
「…そうかよ、」
そう言うとかっちゃんは叩いてくれてた手を離した。熱が一気に離れ、だんだんと冷えていく。
「…戻ンぞ」
「…うん!」
かっちゃんは僕に手を差し伸ばす。
僕は差し伸ばされた手をとった。
手を繋いで2人で寮へ戻る。
少しだけ
ほんの少しだけ
かっちゃんの隣に
たくさんいられますように。
だって、僕は君が好きだから。
コメント
1件
めっちゃ好きです!!