コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
摩浪side
試合再開
梟谷に1歩リードされてる状況。それと俺の右手は怪我が完治してない。サーブ、ブロック、スパイクをする度に痺れがはしる。
摩『うーん』
たぶんバレていないと願いたい。でも、北さんは気づいてるというか、昨日の準決勝から気にかけてるんだと思う。そんな事を考えていると俺のサーブターンが回ってきた。
摩『(無理そうなら天井に切り替えよ)』
右手に力を込めボールを強く打ち込む。痛みはさっきの比じゃないけど、威力は変わらず強いまま。小見さんの腕の上で弾かれコート外へ出る。
侑「右手の負傷であれだけの威力出せる摩浪の方がバケモンや」
治「それ本人に言え」
角「絞められると思う」
侑「それは嫌や!」
サーブを打って5回目になった時、相手が辛うじて上げ攻撃まで繋げた。
摩『うん大丈夫』
赤木「嘘は良くないなぁ?」
後ろから肩を掴まれた。振り向くもニコニコした赤木さんがいたが圧を感じる。
摩『大丈夫です』
赤木「信介と交代して少し手を休め」
摩『はい』
ちょうど笛が鳴り北さんと交代。ベンチに戻りテーピングをやり直す。テーピングを取ると、少し出血していた。
摩『我ながらよく我慢したな〜』
コートを見ると3年生が4人揃っていた。北さん、尾白さん、大耳さん、赤木さん。彼らにとって、決勝は本当に最後の試合。
摩『(早く戻りたい)』
監「3年のために試合しとるんか?」
摩『いえ。この試合は俺にとって成長の場。そこに“3年生最後”が着いてくるだけ』
確かに3年最後というのは重要。でも、彼らのためだけに試合をしていたら自分のプレーを見失うかもしれない。
摩『今までの俺ならチームのためだけの試合をしていたと思います。でも、稲荷崎に来て、彼らに会って、自分のための試合をしていい事を学びました』
決して単独で、勝手なプレーはしない。自分の力を活かしつつチームの勝ちに繋げるプレーを学べた。
摩『彼らにはたくさんの事を学びました。ここで優勝することが、少しでも彼らへの恩返しになれば良いと思ってます』
監「そか」
摩『でも、3年が輝いてる所を見るのは大好きだから彼らを輝かせるプレーをしたいです』
ローテが回り北さんが前衛に上がる。そのタイミングで俺と交代。
試合終盤。梟谷の攻撃陣は3枚。誰にでも託せるこの場面、後衛から木兎さんのバックアタックがきた。
摩『(うっわぁ無茶するね〜)』
唐突な攻撃ではあるけど彼ならやりかねん。それでもドシャットで止める。バックアタックは烏野戦で攻略済みだし、稲荷崎ブロックも簡単に通すほど甘くない。
侑「ナイスブロック!」
摩『今のは尾白さんと大耳さんのです!』
侑「いや3枚揃えたやん」
摩『それでも今のはお2人の!』
尾白「まぁ落ち着け」
大耳「珍しいな、ムキになった摩浪は」
確かに3枚揃えたけど止めたのは2人だし俺の手柄にはならないと思う。
試合が進む。相手の強い攻撃も守備も、俺にとっては楽しさに変わる。後衛の時、俺の横には赤木さんが居て彼のレシーブを見る度に嬉しくなる。
摩『(あーでも、終わっちゃう)』
一瞬だけ寂しさがよぎった。俺の横にいる赤木さんと、前にいる尾白さん。そして後ろで控えてる北さんと大耳さん。一緒にバレーができる最後の日。
楽しい瞬間があと数分で終わると考えてしまって、頭の一部が白く染まった。
赤木「摩浪く〜ん」
摩『あ、はい』
赤木「考え事ですか〜?」
摩『はい』
赤木さんが目の前にいた。気づいてなかったみたいいつの間にかタイムアウトでベンチの前で立ってた。
赤木「今日少し変やで?」
摩『変ではないですよ』
赤木「さっきから暗い顔してんで」
摩『……すみません嘘つきました。ちょっと余計な事考えました』
スクイズを元の場所に戻す。試合がもうすぐ終わることは当たり前のこと。今、必要なのは勝つための思考。寂しいとか悲しいとか、そういう思考は今は絶対に不要だった。
赤木「謝る必要は無いけど、何考えとったん?」
摩『内緒です』
今は教えない。教えたら雰囲気が悲しくなるとかでは無いけど、これを言うのは今じゃない。
タイムアウト終了後コートに戻る。
そして試合が終了に近づいた。
摩『(この1本が先輩達への恩返しになるのなら本望です)』
この試合最後の一撃。右手に精一杯の力を込めボールを打ち込む。ボールは真っ直ぐ相手コートにinし地面につく音がした。
直後、終了の笛の音と会場中から今までにない歓声が響く。その音は俺の体に響き震えた。
摩『(あーあー、終わった)』
少し寂しさに浸っていけど後ろから侑さん達に抱きつかれた。その瞬間に、嬉しいという感情が込み上げて自然と笑っていた。
赤木さん達は嬉し泣きしてて、俺は打ち切って良かったと思った。この人たちのこの顔を見るために打って良かったと。