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お泊まり会の金曜までの火曜日、水曜日、木曜日は長いようで、過ぎればあっという間だった。
いつも通り音成と妃馬さんを家まで送り届けたり
「今日はこの後恋ちゃんとフィンちゃんと3人で遊びに行くので、残念ながら今日は」
とメッセージを貰い、1人寂しく帰ったり、いつも通りだったが
心持ちは週末の匠邸でのお泊まり会がどんどん迫ってくるドキドキとワクワクだけはいつもと違った。
「大学から1回帰ってきて、行くのよね?」
「うん。じゃ、いってきまーす」
「はい。いってらっしゃい」
扉を開き、大学へ向かう。音楽と共に駅へ向かう。ホームで電車を待ち、電車で終点まで向かう。
なぜだかドキドキしていた。終点で降り、乗り換えて、大学の最寄り駅で降りる。
大学へ向かい歩く。いつも通り正門を過ぎ、コンビニに行こうとしたが
正門を少し通り過ぎたところで立ち止まり、なんとなく行くのをやめた。
正門から大学敷地内に入り、講義のある講義室へ入る。すぐに匠の綺麗な白い髪が目に入り、匠の隣に座る。
「おは、Yoー」
「おっはー。なんかテンション高い?」
「いや、なんかソワソワする」
「今日1回帰るんでしょ?」
「うん。1回帰って匠ん家行く」
「おけ」
「あ、だから妃馬さんにLIMEしとかないと」
「今日送れませーんって?」
「そ」
僕はテーブルの上に置いたスマホを手に取り、ホームボタンを押す。
するとちょうど妃馬さんかの通知があった。
「そういえば待ち望んだ今日ですね?」
その通知をタップし、返信を打ち込む。
「そうなんですよ。で、今日はちょっと送れなさそうです。すいません。」
送信ボタンをタップする。スマホをテーブルに置いて
なんともなしに入り口のほうを見たら、今まさに妃馬さんが講義室に入ってくるところだった。
たぶん音成を探す目線。妃馬さんと目が合う。
ニコッっと妃馬さんが笑い、胸の辺りで控えめに手を振ってくれる。
僕も胸の辺りに手を持っていき、妃馬さんに手を振る。
すると妃馬さんは僕の隣に視線を移し、会釈をする。僕も隣を見ると匠がペコリと頭を下げていた。
「今日鹿島来んのかな」
匠が呟く。
「さあ?今は何やってん?」
「「Strange My Life」よ」
「2?3?」
「3」
「お、3入ったか」
「ヤバい。全シリーズおもろい」
「ヤバいよな」
「てかさ、分岐めっちゃあって、全部コンプしたいんやけど」
「わかる。でもとてつもない時間必要だぜ?」
「そうなんよ。だからとりあえず3に進んでる」
「あ、あとからやるんだ?」
「そのつもり」
「わかる。分岐はコンプしたいよね」
振り返るとそこには鹿島がいた。
「おぉ、おはよ」
「おはよー」
「おっすー」
「匠と来んのかねって話してたとこ」
「来ましたー」
「京弥も1回帰る?」
「うん。1回帰って、荷物持って向かうー。あ、ちょっと後ろ失礼ー」
「あいあいー」
匠も僕もイスを引き、後ろを鹿島だ通る。
「何時にどことか決めた?」
「いや特に」
「京弥もう家へは来れる?」
「ん?あー、どうだろ。たぶん?」
「じゃあ家集合でい?」
「まあ、別にいいけど」
「てかまた怜ちゃんと待ち合わせして行けばえんでね?」
「まあ」
前の扉から構成の方が入ってきて
「それでは講義を始めます」
と講師の方が講義を開始した。
「それでは本日はここまでで終了します。お疲れ様でした」
講師の方が資料をまとめる。講義中は妃馬さんとLIMEをしたり
あつまれせいぶつの森の日課をこなしたり、鹿島とスプラタウンを一緒にやったりして過ごした。
「怜ちゃん行くよ!」
「は?」
「あの夕日に向かって走るよ!」
「は?いやまだ昼」
「いいから荷物まとめて」
「え?あ、はいはい」
鹿島に急かされて荷物をまとめる。
「はい、行くよ!匠ちゃんまた後でね」
「え?あ、うん。後でね?」
「え、あ、匠、また後で」
「あ、うん」
その後早足で歩く鹿島についていき
「妃馬さん音成さんまた来週!」
「あ、はい。また来週」
「うん。またねー」
と音成と妃馬さんに挨拶する鹿島に続いて
「妃馬さん音成また来週ね」
「あ、はい。また来週…あ、LIMEしますね」
「あ、はい。LIME。オッケーです」
「暑ノ井くんもまたねー」
「はい。またー」
急ぐ鹿島の後をついて講義室を出る。正門を出て、ようやくスピードが落ちて歩き始める。
「え?なに急に。どしたん」
「いや、よく考えてよ怜ちゃん」
「はい。考えます」
「匠ちゃんの告白が成功してたら、講義の後、いつも通り一緒に帰るでしょ?」
そこまで言われて鹿島の言わんとしていることがわかった気がした。
「あぁ〜」
「わかった?もし告白が成功してなかったら、一緒に帰るのは気まずいから一緒には帰んないでしょ?」
「名探偵かよ」
「そこで結果わかっちゃうから」
「うぅ〜ん…」
口を尖らせる。
「でもさ、ぶっちゃけなんとなくわかんない?」
「…まあ、ぶっちゃけなんとなくわかる」
「どうする?」
「どうする?ホンキ(ホン・キオーテの略称)行く?」
「クラッカーとか?」
「そうそう」
「コンビニでも売ってね?」
「じゃ、コンビニでいっか」
「おん」
駅構内にアナウンスが流れ、鹿島の乗る方の電車がホームに来た。
「んじゃ、とりあえず駅集合で」
「あいよー。また後でな」
「あーい。後でねー」
扉が閉まり、電車が動き出す。アナウンスが流れ、僕が乗る方の電車がホームに入ってきた。
電車に乗り、乗り換えの駅で降り、乗り換えをして
電車に乗り、自分の家の最寄り駅で降りる。家の扉を開き、部屋に行って
予め準備していた荷物を詰めたリュックを持って1階へ下りる。
洗面所へ行き、歯ブラシをリュックに入れて靴を履く。母がリビングから玄関へ来る足音が聞こえる。
「あ、もう行くのね」
「あ、うん。行ってくるわ」
「なんもなくて平気?」
「大丈夫大丈夫。コンビニとかでなんか買うから」
「あ、そう?あっ」
となにかに気づいたようにドタドタとリビングへ行く足音がする。
靴を履き終え、母を待つ。ドタドタと戻ってきて
「はい。これ」
と五千円札を差し出していた。なにも言わず受け取る。
「これでなんか買いなさい」
と言ってくれた。
「おぉ、ありがと」
母に感謝をして、財布にしまい
「じゃ、いってきます」
と扉を開ける。
「いってらっしゃい」
母に手を振り、駅へ向かう。駅についたとき、改札を通らず券売機の前の広場で鹿島にメッセージを送る。
「もうついた?ついてないなら猫井戸集合にしない?
やっぱホンキ(ホン・キオーテの略称)でクラッカーとか買おうや」
そう送ってしばらくするとと鹿島から
「オッケー」
と返信が来た。しばらく待っていると鹿島が改札から出てきた。鹿島はワイヤレスイヤホンを取り
「おっすー」
と僕に近づいてくる。僕もイヤホンを取り
「おっすー」
と返し、2人でホン・キオーテに向かった。
ホン・キオーテで大きなクラッカーや小さなクラッカーを買い、歩いて匠の家へ向かった。
鹿島が人用の門の壁の右側についているインターフォンを鳴らす。
インターフォンから返事はなく、ただ門がウウィーンと音をたてて鍵が開く。
カチャンと門を開けて中に入る。閉めると自動的にウウィーンと鍵が閉まる。
飛び石のように置かれたタイルの道を進む。今度は玄関のインターフォンを鳴らす。
「あ、開いてるからー」
と匠の声が聞こえ、扉を開き中に入る。
「おっ邪魔しまーす」
「お邪魔しまーす」
靴を脱いで中に入る。リビングのテレビ前のソファーにリュックと
ホン・キオーテの黄色いビニール袋を置いて、お風呂場の洗面台で手洗いうがいを済ませる。
リビングへ戻るとキッチンで匠が
「飲み物なににするー」
と冷蔵庫の前でキッチンにグラスを3つ置いて立っていた。
「え、あぁ、そうな」
「匠ちゃんなに飲もうとしてたん?」
「ん?オレ?オレはねぇ〜リンゴジュースかな」
「じゃ、オレも同じで!」
「じゃあオレも同じにしようかな」
「おけー」
匠がリンゴジュースの瓶を取り出し、コルクを外し
瓶特有のトポントポントポンという液体を注ぐリズミカルな音が鳴り響かせ
3つのグラスにリンゴジュースを注いでくれた。
グラスを持ってテレビ前のソファーに移動する。座った瞬間鹿島が
「で!どうだったん!?」
と匠のほうに身を乗り出す。
「おぉいきなり。今?今言うの?」
「そりゃ今日のメインイベントなんだから」
「メインイベントこんな早くにやるん?」
「いいからいいから。怜ちゃんだって今聞きたいっしょ?」
「まあ、気にはなるよね」
「まあ、いいか」
匠が溜める。鹿島も僕も黙る。テレビもついていない。
防音なのか、外の音も聞こえる気配がない。シーンとした部屋。
「告白…」
匠のその一言だけが聞こえ、また溜める。鹿島と固唾を飲んで匠の次の言葉を待つ。
「失敗…しました」
え?
思った解答と違い、頭の中が真っ白になる。鹿島も固まっている。
失敗?
どう声を掛けよう。買ったクラッカー隠さないと。
今日どういうテンションで過ごしたらいいんだろう。そう思っていると
「嘘だよーん」
と僕の不安な気持ちをビリビリに破くように、匠のおちゃらけた言い方の言葉が耳に飛び込んできた。
「は?」
「え?」
匠が満面の笑顔で
「告白は成功いたしました」
とダブルピースする。鹿島と僕は顔を見合わせて
「お前なー!」
「うぉらー!」
と両サイドから匠をくすぐる。
「あっ!ごめっ!やめっ!」
「おらぁー!」
「こんにゃろー!」
「失敗って聞いたとき、どうしようかって思ったじゃねぇーか」
「ほんとだこのやろー。今日どういうテンションで泊まっていいかわかんなかっただろこらー!」
「ごめって。ごめんごめん」
「ったく」
2人で同時にくすぐるのをやめた。鹿島がホン・キオーテの黄色いビニール袋に手を入れ
ガサガサとし、僕に小さめのクラッカーを投げ、僕はそれをキャッチして
「ま、とりあえず」
僕と鹿島は顔を合わせて頷き
「「おめでとー!」」
パンッ!パンッ!とクラッカーの紐を引いた。
微かに火薬の煙が上がり、火薬の香りがする。キラキラのテープがかかった。
「おぉ〜ありがとぉありがとぉ」
「火薬くさっ」
「でもオレ火薬の匂い嫌いじゃない」
「わかるわかる」
「まあ、ね?…なら」
鹿島がまたホン・キオーテの黄色いビニール袋に手を入れ、ガサガサとし、僕に小さめのクラッカーを投げ
「匠ちゃんこれやる?」
と大きめのクラッカーを渡す。
「あ、オレ?自分で?」
「一番大っきいやつだから主役に」
鹿島と僕は先程と同じ小さめのクラッカーを持ち
「せーの!」
鹿島の掛け声で3人でいっぺんにクラッカーの紐を引いた。
パンパンパンッ!先程より火薬の煙が濃い。火薬の匂いも強かった。
「フゥ〜!」
鹿島が拍手をする。僕も鹿島に習って拍手をする。
「いやいや、どうもどうも」
匠が照れくさそうに、自分にかかったテープを取る。
「マジいらんサプライズだったわー」
「な。マジクラッカーどうしようかと思った」
「わかる!オレもどうしようかなって思ってた」
「ごめんごめん」
「散らかったなぁ〜」
「デカいクラッカー1つでよかったね」
「だろ?鹿島さ、3つ買おうとか言って」
「小さいの4つに大っきいの1つでこんな散らかるとは思わなかった」
「片付けるか」
「いや、すぐ片付けるのは勿体無いから夜までこのままでいいよ。賑やかだし」
と匠が言う。
「ま、家主が言うならいいか」
「え?どんな感じだったん?」
「え?今聞く?」
「え、気になるやん」
僕はスマホを取り出し、ホームボタンを押す。妃馬さんからの通知。時刻は17時8分。
「まあ、匠が言わんとしてることはわかる」
スマホをポケットへしまいながら言う。
「どゆこと?」
「今時間みたら5時10分だった」
「あぁ、まだ早いと?」
「んーまあ?」
「そーゆーこと」
「夜のほうがいいんじゃね?ってことでしょ?」
「そーゆーこと」
「ん〜まあ、夜ご飯食べながらでもいいか」
「そうね」
「夜なにがいい?」
「あ、そうか。京弥が作んのか」
「忘れてたんかーい」
「忘れてたん?大丈夫?キッチン使う許可…」
「あぁ、それはね取ってある。京弥の言葉で思い出した。好きに使っていいからとのことです」
「うっし。匠ちゃんなにがいい?」
「んん〜そうなぁ〜。アラビアータとか」
「アラビアータアラビアータ…辛いやつだっけ?」
「そうそう。ペペロンチーノとトマトソースパスタ混ぜたみたいな感じ」
「アラビアータ…アラビアータ…」
鹿島がスマホをいじる。
「唐辛子…にんにくにトマトね。はいはい」
「あとはいっかな」
「一品?」
鹿島が半笑いで言う。
「いや、一品だとあれだから…」
また鹿島がスマホをいじる。
「アラビアータ、合う料理」
「そんなん出んの?」
「出た出た。んん〜っと?…あ、オニオンスープ合うね。
あ、ホタテのカルパッチョとかもいいじゃん。じゃ、夜ご飯は京弥くん特製アラビアータと
オニオンスープ、ほたてのカルパッチョに決定しました〜。イエーイパチパチィ〜」
鹿島が拍手をする。
「「イエーイ」」
匠と僕も拍手をする。
「んならスーパー行くか」
「おけー」
「あーい」
ソファーから立ち上がる。財布をスマホだけを持ち、玄関のほうへ向かう。
「あ、出てていいよ。オレチャリ出すから」
リビングからひょこっと顔を覗かせた匠が言う。
「おけー」
「はーいよ」
鹿島と玄関で靴を履き外に出る。すると隣の車庫が開く。
車が2台止まっていて、車の隣から匠が自転車を押し、出てくる。匠は鍵のケースを車庫に向けたかと思うと
すると数秒して車庫がガッコン、ガシャガシャウウィーンと音を立てて閉まり始めた。
「あ、ちょ持ってて」
と僕に自転車を渡してくる。匠は鍵を取り出し、玄関の鍵を閉める。
「じゃ行きますか」
と言って自転車を押しながら3人でスーパーへ向かった。
「いやぁ〜自転車あってよかったね」
自転車の両ハンドルにビニール袋がぶら下げられ、前の籠にもビニール袋が入っていた。
「重い重い。交代」
「次オレか」
鹿島にハンドルを渡す。
「おっも」
「なんで酒買ったん」
「えー今日お祝いだしー?」
「わかるけどー。缶が重いんよ」
「これなんミリ?」
買ったお酒缶を取り出す。
「350か。となると?350かけ6で?」
「えぇ〜と」
「サブロク18…」
「2100か。となると2リットル。2キロ」
「まあまあだね」
「てかこれ期間限定じゃん」
「そうだよ。だから買った」
「ストロベリー・ベリー・ブルーベリー。どんだけベリーなん」
「そんなのあったんだ?」
「な。オレはいつも通りアイスティーサワーと桃」
「オレは白いサワーと桃」
「オレはさっきのとグレフルソルティ」
そんな会話をしていると匠邸に到着する。人用の門から中に入り、匠は自転車を車庫に入れに行った。
するとすぐに玄関から入ってすぐ左の洗面台があるところの奥の壁の扉が開いた。匠の姿があった。
「あ、ここガレージに繋がってんだ?」
「そそ」
「すごっ」
すると今度はウウィーンガシャガシャと車庫が閉まる音が聞こえる。
「あ、受け取る受け取る」
匠がビニール袋を持って入ろうとしていたので手を出し、匠からビニール袋を受けとる。
「お、さんきゅ。じゃ」
「うおっ」
2つのビニール袋を受け取った。
どっちのビニール袋にもお酒の缶は入っていなかったがそこそこの重さだった。
「へい、パス」
背後から鹿島の声がする。振り返ると両手を前に出していたので両手に2つのビニール袋をかける。
「おうっ。両方なのね」
「たのんます」
鹿島がリビングへ向かう。
「たーく。それもちょーだい」
と自転車の籠に入れていたビニール袋を指指す。
「いんすか」
「本日は主役ですから」
匠からビニール袋を受け取り、リビングへ行く。さすがにお酒の缶が入ったこの袋は重かった。
とりあえず1回キッチンに置いて、お風呂場の洗面台で手洗いうがいを済ませる。
キッチンへ戻り、冷蔵庫に入れるものを冷蔵庫に入れる。
「ハレルヤ、テレビつけて」
匠の一言で大きなテレビがつく。ニュース番組がやっており、左上の時刻表示は18時54分。
「あ、もうこんな時間か。じゃ、作り始めるから、あっちでゆっくりしてていいよ」
「お、さんくす」
「手伝うことないん?」
「ないかって言われるとなくはないけど、いいよ」
「あ、そ?」
匠と2人でソファーへ歩く。
「あ」
と鹿島のほうを振り返り
「そのままでいいん?汚れないん?」
と鹿島に言う。
「あぁ〜…そうね…。あ、リュックの中に部屋着のTシャツあるから、それ取ってくんね?」
そう言われたので鹿島のリュックに近づくと匠が
「これ?」
とTシャツを掲げる。
「そうそれ!ヘイ!パース!」
匠がTシャツを投げる。しかし鹿島のところまでは届かず
操縦者のいなくなった凧のようにひょろひょろと床に落ちた。僕はそれを拾い、鹿島に手渡す。
「2人ともさんきゅ!あ、ちょ待って」
鹿島はその場でTシャツを脱ぎ、僕に渡す。
「リュックに入れといて」
「あいあい」
ソファーに戻り、鹿島のリュックに畳んで入れる。
「あ、ポシェモン(ポシェットモンスターの略称)の時間だ」
と言った匠がハレルヤにチャンネルを変えてと頼み
大画面で2人でポシェモン(ポシェットモンスターの略称)を背後で鹿島が料理している音を聞きながら見た。
その後の百舌鳥の太鼓さんの番組も見た。その後も番組を見ていると
「でけたよー」
と鹿島の声が聞こえる。匠と2人で振り返る。
ダイニングテーブルの上にはアラビアータの盛られたお皿が3つ。
オニオンスープが入っているカップが3つ。中央にはホタテのカルパッチョが盛られたお皿があった。
「「おぉ〜」」
立ち上がり、ダイニングテーブルへ向かう。イスに座る。
「さあ、召し上がれ」
「いただきまーす」
「いただきます」
「どーぞー」
スプーンを壁にしてフォークでパスタを巻き取り、ソーセージを刺して口へ運ぶ。
トマトの味にニンニクが香り、少しピリッっと辛く
トマトソースにニンニクと少し重いかな?と思ったが、トマトソースの酸味でサッパリと
そして唐辛子の少しの辛さが食欲を増させ、どんどん食べられる味だった。
「ん!んまい!」
匠も目を輝かせて鹿島を見る。
「どうだ!京弥ズキッチンは」
「最高っす」
「最高っす」
今度はオニオンスープを飲む。というか食べる。
「オニオンスープはフランスパンなかったから、こーゆー丸いパンをカリカリに焼いて使いました」
オニオンスープがフランスパン入ってるとか
そもそも「スープ」なのに主食並みにガッツリパン入ってるとか知らなかったので
「ふーん」と頷き、左手で取手を持ち、フォークで溶けたチーズの乗ったパンを刺し
口へ運ぶ。一口噛むとオニオンスープがジョバババとパンからカップへ落ちた。
基本的にコンソメスープだが玉ねぎの甘さが滲み出ていて
チーズの香ばしさ、玉ねぎの香ばしさ、パンの香ばしさが鼻から抜ける。
「んん〜うまい」
「オニオンスープうまっ」
「良かったです」
「まさか京弥がこんなに料理うまいとは」
「だろ?家族のお墨付きだから」
取り皿にホタテのカルパッチョをよそう。ホタテとほうれん草とネギをまとめて口へ運ぶ。
ホタテの甘さにレモンの酸味が加わってサッパリと
オリーブオイルの香りとレモンの香り、ネギの香りと黒胡椒の香りがマッチし
味良し香り良しのとても美味しいカルパッチョだった。
「高級イタリアン」
「それな」
「怜ちゃん高級イタリアン食べたことあんの?」
「ない」
「なかったー」
「匠はあるだろ」
「まあ自分で「高級イタリアンやー」って言ったけど
高級イタリアンって大概これくらいのお皿にこんくらいしか乗ってないやつ多いから」
匠がアラビアータの盛られたお皿の端にアラビアータを巻いてちょこんと置く。
「あぁ〜イメージあるわ」
「まあ、イタリアンに限らず高級レストランでのコース料理って
味ももちろんだけど、見た目でも楽しんでほしいっていうか、食べられる美術館みたいな?」
「オシャレぇ〜」
「オシャレぇ〜」
「あ?そお?」
そんな話をしているとあっという間にテーブルの上のお皿は空のものばかりになった。
「あぁ〜うまかった〜」
「満足満足」
「いやぁ〜喜んでもらえてよかったわ」
「ご馳走様でした」
「ご馳走様でした」
「はい。どうもでした」
みんなでキッチンへお皿を運び、お皿洗いは食洗機に任せた。
みんなでテレビ前のソファーに行って腰を下ろす。
「さて、メインはここからです」
「え?まだなんか作ってたん?」
「あ、違う違う。匠ちゃんの話ね」
「あぁ、そーゆーね」
「そーゆーこと。で匠ちゃんどんな感じだったん?」
そこから匠の告白までの話を聞いた。