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R15 rdgt
こっそりとキスが大好きな🌵の話
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「こっち見て?ぐちつぼ」
青くて冷たくて、でも愛おしそうに細められたその瞳に真正面から射抜かれる。
なんでも、目の前のコイツは俺の頬を耳ごと挟むように手で覆うもんだから。
逃げるも何も、ズレた眼鏡の位置を直す暇すらなかった。
あぁクソ、ズルい奴だ。
今すぐにでも奴を蹴り飛ばして逃げ出したいのに、どうしようもなく顔が熱い。
冷房は惜しげも無くガンガンに付いてるはずなのに、俺を取り巻く体温が、空気が熱い。
「ぁ…、」
堪えるようにして小さく小さく漏れた母音は、酷く情けないものだった。
「ふふっ、お前顔真っ赤だよ。ガキやん」
そう言って笑う顔が、憎くも嬉しくもあったけれど。出てきたのは「うるさ、」なんてぶっきらぼうな言葉。
鼻の先が触れてしまいそうなくらいのゼロ距離に居るのに、何をするわけでもなく彼はニコニコとこちらを見るだけ。
いつの間にか、頬には汗すら滲んでいた。
頼む、勘弁してくれ。マジで。
ちょっとだけ荒いお互いの呼吸。
ウンザリするほど激しい鼓動。
フィルターを通して聞こえるエアコンの稼働音。
静寂と言えばの静寂が部屋中に木霊する。
彼の顔がゆっくり近付いて、10秒、20秒……
ああ最悪だ、チキンレースだこれ。
「ぐちつぼ?」
25秒、30秒。
らっだぁの指先が耳の縁を掠める。
33秒、34、35。
唾を飲む。ごくりと音が鳴る。
……。
「……あの、き、…キスとか、は…しない感じ?」
思わず、言っちゃった。
ハッと気づいた頃には、全力で目を逸らしながら、まんまと震える声で全部言い終わっていた。
これは負けとかじゃなくて、不可抗力だし。
こういう戦略だし、アイツもこれを望んでたはずだし…。
「ふははっ、ははっ…えぇ??笑」
「い〜や? するよ、今から」
「ぅわ、」
そんな俺を知ってか知らずか。
コイツは一頻り笑ったあと、俺の上に跨るようにしてもっと密着する。ズルいセリフと態度と余裕そうなその表情に、うわ、と感嘆にも似た何かが口から飛び出した。
彼を置いてけぼりに、勝手に昂っていく期待。
終いには、眼鏡が没収された事にも気づかなかった。
いや違うだろ!はやく、はやく。
今そういうの良いから!
「ッちょオイ、見えないって…!」
「いや邪魔じゃん。どうせちゅーする時目瞑る癖に?」
「いや違っ、そういう話じゃね…ッん、」
少し乾燥した唇が遮るように俺の口を塞いだ。
ちゅ、と控えめなリップ音が響く。
「ぁ、ふっ゙…ぅ、ん…っ、」
そのうち、どちらからともなく舌が割り入れられ、ねっとり甘い水音に脳が支配されていく。
互いに吸い付き、体温で溶けてしまいそうなこの感じは嫌いじゃなかった。
「は…あ゙、ん゙ッぅ、う、……ん、」
隙間からは上擦った声が漏れ、悲しくも何ともないのに、心の中の何かが抑えきれずに目尻に涙を滲ませる。
たまらず彼の首の後ろに手を回した。
汗ばんだ肌も、エアコンの風の匂いも、何もかもが妙に生々しい。
でもこの生温さが心地良かった。
簡単に踏み入っちゃいけないこの感じが、背徳感を刺激する。 もっともっと、と馬鹿みたいにせがみたくなる。
精神的な快感がどうも頭にクラっと来た。
「…ん、ぁ…はは、ぐちつぼさぁ〜…キス好きだよねお前」
「……っは…いやンなことは…無いけどさ。別に」
しばらくお味を堪能したのち、彼はゆっくりと離れてそう言った。名残惜しさを感じつつも瞼を開け、それに応じて手を離す。
普通に目閉じたわ。クソが。
そんな事は直接言えやしないけど、その分心の中で呟かさせて頂く。少し乱れ気味の呼吸を雑に整えつつ、ノールックで隣のテーブルから眼鏡を探した。
カタリ。
眼鏡のフレームが机の上を跳ねた音。
そして、指の腹にレンズが触れた感触。
…いやこれ絶対指紋ついたし。
らっだぁは変わらず何か喋っているが、残念ながら俺にとっては視界が曇るガッカリ度の方が上回る。
特に何も聞かず適当に返事をすれば、開きかけの眼鏡がまた奪われてしまう。
「おいちょっと、テメコラ。それ俺のだよ、奪うな奪うな」
「ハ?お前話聞いてた?いや今からそれ掛けて逆にどうすんの?」
「何?いやどうもしないけど…」
「でしょ?ほら。じゃあ眼鏡掛ける前に俺に付き合ってって。どうせ途中で外すんだから」
そうやって、俺の大事な眼鏡の代わりに握らされたのはらっだぁのベルト。
奴の手は俺の腰に添えられ、宥めるように太ももやらお腹やらを優しく滑っていく。
憎たらしくも、ぴく、と身体が反応した。
外では、夏休みに歓喜した可愛いキッズたちの甲高い遊び声が聞こえる。
いや、いやいやいやいや…
「…お前いま何時だと思ってんの?」
・
・
・
「っあぁ!?今何時!?!?!?」
俺は得体の知れない何かに掻き立てられるようにして飛び起きた。
寝る前に付けたエアコンは切れているし、皮肉にも外は暗い。オマケに朝勃ち(朝ではなさそうだが)といった惨状。
慌てて枕元のスマホを確認すると、奴とのツーショットが背景のロック画面に、21:37の文字が。
「最ッ悪だ………」
思わず頭を抱えた。スマホを眺めながら呆然としていると、タイミングを見計らったかのようにらっだぁからのメッセージ通知が来る。
オイ、待て待て、待ってくれマジで。
「”今から家行くね” …?」
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処女作。
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