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俺が母さんを守ってあげなきゃいけない。
そう思ったのは小学校低学年の時。
毎朝疲れて帰ってくる母さんにご飯を作ってあげて、寝かせてから自分は学校に行く。
そんな毎日を繰り返して気づけば中三の受験期になっていた。
高校に入学出来るようなお金は無いと分かりきっていたから今まで以上に勉強を頑張って、給付型の奨学金を獲得した。
他の家よりも少し貧しいだけ、母さんがヒステリックを起こすのも日常茶飯事、それを宥めてあげるのが俺の役目。
学校では優等生を演じる。
先生に頼まれたことは一切断らず、勉強が苦手な子に頼まれれば放課後残って丁寧に教えた。
成績はずっとトップクラス、部活には入らずバイトで生活費を賄っていた。
俺にとってこの生活は苦ではなかった。
自分よりも不況の人を見ると心に余裕を持てたからだ。
だから、母さんがそばに居てくれるだけで俺は安心して暮らせた。
だけど、母さんは本格的にダメになってしまったようだった。
狂ってしまった母さんは入院して療養している。
愛子さん-蓮くんのお母さん-は母さんの遠い親戚らしい。
そもそも親族付き合いすらなかった俺は今まで全く知らなかったけど、愛子さんはいつかこうなると思っていたらしい。
正直、1人で生活するのも大変で愛子さんの誘いに乗ってしまったがそれは正解だったようだ。
初対面の時の蓮くんは目の下に濃いくまを作っていて、体も細く、声も掠れていた。
そんな子を見ると今までの不安も一切に消し去って、嘘のように俺の心は安堵で満たされた。
普通ではないともう分かっている。
それでも自分を変えるだなんてすぐには出来ない。
歪んだ感情は少しづつでも削げばいい。
最悪、蓮くんが俺に依存してくれれば俺はずっと安心して生活できるから変われなくてもいい。
まぁそんなこと思ってるうちは本当に変われないんだろうけど…
でも俺、蓮くんとなら変われる気がする。
勝手な期待に過ぎないかもしれないけど、蓮くんとは上手くやっていける気がするから、だから…
だから、ごめんね蓮くん
俺が変われるまではそのままの君でいて欲しい