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第13話「借り物は〇〇な人」
体育祭当日。
グラウンド。
(なんでこれやねん)
俺は紙を握りしめたまま固まっていた。
借り物競走。
引いたお題。
見たくないのに、
開くしかない。
ゆっくり、開く。
『好きな人』
(終わった)
一瞬で理解する。
これ、完全にあっきぃや。
周りもすぐ察する。
「え、やば」
「それあっきぃじゃん」
「行けよ!!」
(無理やろ)
顔、一気に熱くなる。
でも競技は進んでる。
行かなあかん。
重い足で歩き出す。
視線感じる。
(ほんま最悪)
その先。
観客席の前。
あっきぃ、
普通に立ってる。
腕組んで、
こっち見てる。
口元、少し上がってる。
(絶対分かってる)
目が合う。
逃げたい。
でも、止まれへん。
そのまま目の前まで来る。
距離、近い。
(無理無理無理)
「何引いた?」
あっきぃが普通に聞く。
(分かってるやろ)
「……言わん」
小さく返す。
あっきぃが、ちょっと笑う。
「じゃあ当てる」
「やめろ」
止めるけど、
止まらん。
「“好きな人”?」
(終わった)
一気にざわつく。
「やっぱり!!」
「言えよ!!」
顔、真っ赤。
もう無理。
あっきぃが一歩近づく。
少しだけ屈んで、
目線、合わせてくる。
上からじゃない、
ちゃんと同じ高さ。
「俺でいい?」
(……っ)
ずるい。
そんな言い方されたら、
断れるわけない。
小さく頷く。
ほんの少し。
ちゃんと伝わった。
あっきぃが、ふっと笑う。
そのまま急に距離詰めて、
「え、ちょ——」
言い終わる前に、
身体がふわっと宙に浮く。
これは、…
「っ!?」
お姫様抱っこ!?
一瞬で視界が上がる。
「な、なにしてんねん!!」
完全にパニック。
周り一瞬止まって、
次の瞬間。
大歓声。
でもそれより無理なのは、
逃げ場ないこと。
「下ろせ!!」
「嫌」
そのまま走り出す。
(ほんまに無理)
「歩けるやろ!!」
「今日は特別」
少しだけ笑う。
「お姫様扱い」
「誰がお姫様や!!」
叫ぶ。
でも、降ろしてくれへん。
むしろ、
少しだけ抱え直される。
その瞬間。
あっきぃが、ほんの少しだけ顔を寄せる。
耳元。
誰にも聞こえない距離で、
甘ったるい声で囁く。
「ぷりちゃん……俺のかわいいお姫様だよ」
(……っ)
思考、完全に止まる。
何も考えられへん。
一瞬で持ってかれる。
「っ、やめ……」
声、出ない。
さっきまでの抵抗、
全部消える。
気づいたら俺、
あっきぃの首に腕回してる。
(あかん)
自分でやってるのに、
止められへん。
あっきぃがくすっと笑う。
「ほら」
「ちゃんと捕まっててえらいね」
「違っ……!」
否定したいのに、
言葉にならへん。
周りはまだ騒いでる。
「ぷりっつくんかわいすぎ!!」
「今の反応やばい!!」
(聞くな)
でも、
もうどうでもいい。
さっきの一言が、
強すぎる。
そのままゴール。
降ろされる頃には、
完全に力抜けてる。
「あっきぃ……」
やっと声出る。
でも、
いつもみたいに強く言えへん。
あっきぃは少しだけ屈んで、
また目線合わせてくる。
「何」
「……あれ」
「どれ」
とぼける。
(分かってるやろ)
「言うな」
やっと絞り出す。
あっきぃ、ちょっとだけ笑う。
「じゃ、もう言わなーい」
(ほんまこいつ)
やっぱ意地悪。
コメント
4件
お姫様抱っこするとかイケメンすぎんか?!顔すぐ赤くなっちゃうぷりちゃんも可愛すぎる!
目線を合わせて話すとかイケメンの仕草だよ? あ、イケメンだった💛