「チケット2枚しか無かっただと?」
スティーヴが2枚のチケットを俺に見せた。
どうやらスティーヴで完売だったらしい。
「俺だって4枚欲しかったんだけど、もう席がいっぱいだからこれ以上増やせないって言われて」
「そうか…。」
ここまで来て見れないのは、悔しいな。
今からリュウに頼み込んで入れてもらうか?
いや、侵入しちまおう。
流石にサーカスに来たばかりのリュウにそんな事は出来ないだろうし。
「まぁ、買えただけ良かったじゃねえか。ところで、物は相談なんだが、俺をスティーヴん家泊めてくんねえかな?」
スティーヴは少し悩んでいたが、承諾してくれた。
俺はリュウとしばしの別れを告げ、スティーヴと一緒に劇場を後にした。
スティーヴの家は思いの外遠く、道中警察のパトカーが巡察していたので、その目をかいくぐりながら移動した。
そしてやっとの事でスティーヴの家に到着した。
「散らかすなよ。」
スティーヴは不満げな表情で俺を見ながら言った。
「当たり前だろ。」
そう言って俺はスティーヴの家に上がった。
初めて外国の家に訪れたが、外国の家というのは、日本とまるで違っていて、とても散らかそうとは思わない。
スティーヴは、静かにと小さな声で言い、まるで空き巣かのようにそろそろと家の中に上がっていった。
「お前、靴履いたままだぞ。」
「何言ってんだよ。靴履くだろ。いいから早く来いよ。」
スティーヴに促されて俺は靴を履いたまま家に上がった。
少しばかりの背徳感を胸に感じつつ、スティーヴの部屋に辿り着いた。
俺は部屋とドアを閉めると、ふぅと一息ついた。
「なぁ、ここお前ん家だよな?なんでコソコソするんだよ。」
「お袋になんか言われんの嫌なんだよ。」
まさに不良少年だな。
しかし、すごく汚ねえ部屋だな。
散らかす以前に散らかってんじゃねえか。
それにオカルト物のポスターが多いな。
コレって『ジェイソン』って奴か?
コレは吸血鬼か?
俺がポスターをマジマジと見ているとスティーヴが嬉しそうに話し掛けてきた。
「トラもオカルト系好きなのか?」
「好きっていうか、嫌いじゃないって感じだな。スティーヴは、こういうのが好きなんだな。」
「いいよな、こういうバケモンってさ。不死身で強くてさぁ。」
小学生とかによくある夢想ってヤツかな。
一宿一飯の恩って事で、付き合ってやるか。
「バケモンってのは、俺も好きだぜ。こういうヤツといっぺん喧嘩してぇもんだな。」
「バケモンと喧嘩って、流石にトラが強くても負けるだろ。こいつら全然死なないんだぜ?」
「そうか?このバケモンとか強そうだが、白目だから前が見えてねえ。視覚に入ってレバーブロー決められそうだ。若しくは、膝裏に蹴り入れて膝ついた所で顔面キックもいいな。」
「そんなんじゃ、コイツはやられないぜ?」
俺とスティーヴは、そんな話で盛り上がった。
夜は更け、スティーヴが眠りにつこうとした時、俺はにこやかにスティーヴにお願いした。
「シャワー浴びさせてくれ。あと洗濯も」
スティーヴはめちゃくちゃ嫌な顔をした。
「頼むから母ちゃんと仲良くして下さい。」
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