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週末の金曜日。
ついに恋人同士になってから初めて迎える夜。
二人は再び太智の家にいた。
あの夜とは違い、言い訳出来るものは何もない。
リビングのソファに並んで座る二人の間にはテレビの音すら耳に入らないほどの、密やかな緊張感が漂っていた。
仁「……なぁ、太智」
太「ん? なに、吉田さん」
仁人は手元にあるクッションの端をきつく握りしめ、少しぶっきらぼうな態度で切り出した。
仁「お前、会社では本当に普通だよな。今日も俺がミスしかけた書類、涼しい顔して先回りして修正してたろ」
太「あはは、当たり前やん!俺、吉田さんの優秀な部下やからね。……でも、今はもう仕事終わってるし、俺の恋人としての時間やけど」
太智がふっと笑って、持っていたグラスをテーブルに置いた。
その瞬間、太智の瞳から一人の男としての、熱く深い視線が仁人を射抜く。
太智の身体が仁人のすぐ隣へと滑り込んできた。
仁「……っ」
仁人は思わず身を硬くしたが、今度は逃げなかった。
太智の手が仁人の頬に触れ、そのまま眼鏡のフレームへと指先が伸びる。
太「外すで? 吉田さんの綺麗な目、ちゃんと見たいし」
優しく眼鏡を外され、ローテーブルに置かれる。
視界が僅かにぼやけた瞬間、太智の顔が目の前に迫り、唇が重なった。
仁「ん……ぅ……」
あの夜の口移しとは違う、驚くほど優しくて、けれど確かめるような、甘く深いキス。
何度も角度を変えて貪られるうちに仁人の頭の中は熱で満たされていく。
暫くして唇が離れると、太智は仁人のはち切れそうなほど赤くなった耳元に低く掠れた声で囁いた。
太「ベッド、行こ?」
その言葉に仁人の心臓が跳ねる。
仁「……分かった」
仁人はそう言って小さく頷くことしか出来なかった。
薄暗い寝室。
シーツに仁人の背中が沈み込む。
上から覆い被さってくる太智の身体はワイシャツ越しでも分かるほどに逞しく熱い。
太智の指先が仁人のネクタイをゆっくりと緩め、シャツのボタンを一つずつ外していく。
いつもなら突っぱねるところだが、今はただ、その掌の愛撫に、胸の奥が甘く疼くだけだった。
仁「……太智、お前…なんか、手慣れてんな……」
恥ずかしさを隠すように仁人が少し意地悪な声を漏らすと、太智の手がピタリと止まった。
見上げると太智は眉を顰め、拗ねたような瞳で仁人を見つめていた。
太「別に手慣れてへんよ。……俺、今まじで余裕ないの、分かる?」
仁「え……?」
太「大好きな人がやっと俺のものになってくれたのに、これ以上焦らされたら優しく出来ひんくなる」
太智の両手が、仁人の頬を優しく包み込む。
仁「っ、太智……」
愛おしさと胸を締め付けられるような熱さが混ざり合い、仁人は太智のシャツの胸元をぎゅっと掴んだ。
仁「……優しく、しなくても、いい……っ…。お前の…好きに、すれば良い…から…」
羞恥心の中で零したその言葉が太智の最後の理性を完全に吹き飛ばした。
太「……その言葉、後悔せんでな」
低く獰猛に響いた言葉の直後、仁人に激しいキスの雨が降り注がれる。
シャツが肌から滑り落ち、太智の掌が仁人の熱い肌を、躊躇なく、けれど慈しむように撫でた。
太智の指先が胸元から脇腹、そして腰へと滑り降りるたび、仁人は背中を小さく跳ね上げ、シーツを掴む手に力を込めた。
肌が触れ合う境界線からドロドロとした熱が容赦なく流れ込んでくる。
スラックスが足元に零れ落ち、無防備にされた仁人は、気恥ずかしさから太智の肩に顔を埋めた。
太智は枕元からひんやりとした潤滑剤を手に取ると、仁人の腿の内側を優しく撫でながら、後孔へと指先を滑らせた。
仁「っ、ぁ……! だい、ち……っ」
太「吉田さん、力抜いてな…痛くしたくないから」
じわりと侵入してくる異質な感覚に、仁人は太智の肩を強く掴んで身を強張らせた。
太智はそんな仁人の唇を優しく食みながら、人差し指をゆっくりと確実に奥へと進めていく。
狭く閉ざされた内壁が太智の指に吸い付くようにきつく締め付けた。
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仁「はぁ、……っ…、う…ぅ……」
太「ゆっくり息してな…そうそう…」
太智は中で指を曲げ、内壁の硬さを解すように、円を描きながら優しく、的確に内側を押し広げていく。徐々に二本、三本と指が増やされ、滑るような水音とともに、密やかな窄みがじっくりと作り変えられていく。
仁「あ、ぅ……っ、だいち、もう……いい、だろ……っ…」
太「まだあかん。吉田さんのここ、もっと解さな俺の入らへんよ?」
粘膜をじっくりと擦るように広げられ、時折太智の指先が中の痼を掠めるたび、仁人は「ひっ、…ぁ、!」と短い悲鳴を上げて背中を反らせた。
太智はその場所に目星を付けながら、仁人の前が萎えていないことを確認する。
太「…そろそろやな」
十分に内側が熱く蕩け、熱を受け入れる準備が整った頃、太智はぬるりと指を引き抜いた。
仁「も、…はやく…だい、ち…っ…」
太「っ……煽んなや、」
目の前の可愛過ぎる生き物にしっかりと煽られ、仁人に聞こえない程度に太智は舌打ちした。
そして速攻でゴムを装着しては、太智は仁人に向き合う姿勢で、解れた入口に猛る熱を宛てがった。
ビクリと仁人の腰が跳ねる。
太「……挿れるで。力抜いてや…」
太智はそう優しく告げると、グッと腰を押し込み、二人の境界線がゆっくりと深く重なり合っていった。
仁「んぅ、っ……あ、……ぅ、ぁ……っ…」
初めて触れる熱量と中を占める質量に、仁人は反射的に太智の肩に爪を立てた。
息が上手く吸えず、視界が涙で滲む。
太智はそんな仁人の額の汗を優しく拭いながら、最奥までゆっくりと腰を進めた。
太「吉田さん中、温かいなぁ…」
仁「ばっ、……なに、いって……っ、はぁ…っ…」
太「ちゃんと全部入ったからなぁ、えらいなぁ」
仁「むだ、に…おっき、んだよ…っ…ば、か…っ…」
太「…………馬鹿はどっちや」
そう言って太智は一気に引き抜いてはばちゅんっと鈍く響き渡る水音と共に腰を打ち付けた。
突き上げられる衝撃が仁人の脳の芯まで響いて目の前に火花が散り、カヒュッと喉奥が空気を押し出して音を立てた。
仁「〜ッッ……!?!?」
そのまま太智は容赦なく、先程目星を付けた仁人の弱いところを何度も深く抉るように突き、激しい水音が寝室の静寂に生々しく弾けた。
仁「ぅあ゛ッ、!?やぁ゛……そこ、だめ……ッ、だいち、それ゛、ぇッ……!」
太「吉田さん、ここ好きなんやもんなぁ。もっと突いたるから」
自分の名前を呼ぶ仁人の声に完全に煽られ、太智の動きが更に激しさを増していく。
シーツが擦れ、ベッドの軋む音が鳴り響き、仁人は太智の身体にしがみついたまま、快感の波に只管溺れていくしかなかった。
会社では絶対に誰にも見せられない、上司の仮面を完全に剥ぎ取られた仁人の甘く甲高い声が、夜の寝室に何度も響き渡る。
有能すぎる部下の、底なしの愛と容赦のない衝動に包まれながら、二人の初めての夜は濃密な甘い熱に侵されて、どこまでも深く更けていった。
カーテンの隙間から差し込む朝の光が部屋の空気を白く染めていた。
仁人は自分の顔を覆う見慣れないシーツの感触に、ゆっくりと目を覚ました。
だが身体をほんの数センチ動かした瞬間、腰のあたりに不穏な衝撃が走る。
仁「ぎ、ッ…………!」
まともに声にならない悲鳴を上げながら、仁人はベッドの上で完全に硬直した。
全身を襲う怠さと鈍い痛み。
特に腰から下はまるで一晩中コンクリートの塊を抱えて走らされたかのように感覚が重い。
昨夜このベッドの上で太智にされた全てのことが、濁流のように脳内に甦る。
仁人は真っ赤になった顔を隠すように両手で覆った。
その隣から、ふっと微かな寝息が聞こえてくる。
恐る恐る視線をスライドさせると、そこには仁人を抱きしめるようにして無防備に眠っている太智の姿があった。
昨夜のあの猛獣のような獰猛さはどこへやら。
シャツから覗く太智の肩口には仁人が無意識に立ててしまった爪の痕がうっすらと赤く残っている。
それを見た瞬間、仁人の心臓がまたドクンと嫌な跳ね方をした。
まだ付き合って、一晩。
会社での自分の直属の部下が、本当に自分の彼氏になったのだという現実が、ようやく生々しく胸の奥に染み込んでくる。
太「……ん、……吉田さん……?」
シーツの擦れる音に気付いたのか、太智がうっすらと目をあけた。
太智はまだ半分閉じた目のまま、当たり前のように仁人をぐっと自分の胸元へと引き寄せた。
太「おはよ、吉田さん…いや、仁人」
仁「お、おはよう…って、呼び方…!」
太「恋人なんやからええやろ?」
仁「っ……まぁ、良いけど…」
太智は仁人の首筋にふにゃふにゃと顔を埋め、嬉しそうに鼻を鳴らす。
会社でのあの有能な若手エースはどこへ行ったんだと、仁人は頭を抱えたくなった。
仁「じゃなくて…っ…早く離せ…!腰が、マジで折れる……っ…」
太「あ、痛む? ごめん、昨日ちょっと張り切りすぎたなぁ」
太智は悪びれもせず愛おしげに目を細めると、仁人の腰の辺りに手をそっと当てて、優しくじっくりと揉み解し始めた。
その手の暖かさと、昨夜とは異なる労わるような丁寧な手付きに、仁人の心も解されていく。
仁「……太智」
太「ん?」
仁「会社では、本当に、絶対秘密だからな」
精一杯の威厳を保とうと仁人が睨みつけるようにそう告げると、太智は一瞬きょとんとした後、今日一番の眩しい笑顔を咲かせた。
太「あはは、分かってるて!会社では吉田さんの完璧な部下、2人きりの時は仁人の恋人。…こうやって仁人を甘やかす特権も俺だけのものやからね」
そう言って、太智の唇が仁人の額に優しく落とされる。
太智の底なしの優しさに包まれて、仁人はもうこの心地よい重力から二度と逃げ出せないことを悟るのだった。
太「吉田さん、おはようございます。今週の進捗管理表です」
月曜日の午前9時。
オフィスの喧騒の中、デスクに向かう仁人の前に、いつも通りパリッとしたスーツを着こなした太智が立っていた。
仁「おはよう、塩﨑。ありがとう」
仁人は自然な動作を装って書類を受け取った。
しかし座り直す瞬間、スラックスの奥で腰に走った鈍い痛みに、一瞬だけ奥歯を噛み締めて表情を強張らせる。
2人で過ごした甘い熱は完全に隠し、普段通り仕事をこなす太智。
その徹底したオンの切り替えに、仁人は上司として安心しつつも、どこか胸の奥が落ち着かない。
太智は書類を渡すと「失礼します」と綺麗に一礼して去ろうとした。
その時、太智が仁人のデスクに1枚の付箋をスッと滑り込ませた。
そこには二言だけ書かれていた。
『腰、大丈夫? お昼、一緒に食べような』
心臓がドクンと大きな音を立てる。仁人は慌てて周囲を見回したが周りの社員は誰も気づいていない。
自席に戻った太智の方を盗み見ると既に受話器を耳に当てて取引先との会話を始めていた。
会社という空間で、誰にもバレないように繰り広げられる、二人だけの秘密。
仁(……ほんと、心臓に悪い。)
仁人は小さく息を吐き出すと、手元のペンを握り、その付箋の裏に素早く文字を書き込んだ。
『心配無用だ。昼は例の場所に集合。』
社内を通りかかった別の部下に書類を渡すついでに、仁人はその付箋を太智のデスクへさりげなく戻した。
数分後、太智がその紙に気付く。
太智は内容を確認すると、一瞬だけ嬉しそうに目を細め、パーテーション越しに仁人へと視線を送ってきた。
他の社員には絶対に分からない、口元だけで不敵に弧を描く、あのずるい微笑み。
付き合う前はその距離感に翻弄されてばかりだった。
けれど、今の仁人の胸にあるのは、確かな熱を帯びた愛おしさだった。
昼休み。
仁人は席を立ち、約束の場所へと向かった。
扉を開けると、そこには既に自動販売機の前に佇む太智の姿があった。
太「仁人、お疲れ様。はい、お茶」
仁「ん……お前、会社では本当に完璧だな」
受け取ったペットボトルの冷たさに息を吐きながら、仁人がいつものぶっきらぼうな態度で告げると、太智はへらりと笑って一歩、距離を詰めてきた。
2人だけの会議室。
一瞬で、上司と部下の境界線が崩れ去る。
太「当たり前やん。仁人の足を引っ張るような、格好悪い部下にはならんって決めてるから」
太智はそう言って仁人の手にそっと指先を絡めた。
太「でも今は2人きりやし、我慢せえへんよ? 」
耳元に吹きかけられる、少し鼻にかかった甘い言葉。
仁人は真っ赤になった顔を隠すようにそっぽを向いたが、その手を振り払うことはなく、そっと指先を握り返した。
太「なぁ、俺のこと好き?」
仁「……っとに、お前……!」
太「仁人」
仁「っ……すき、だ…」
太「ん、合格。俺も好き」
太智はそう言って仁人に握り返された手を引いては、そっと唇へと口付けた。
顔を真っ赤に染めてわなわなと震える仁人。
太「よっしゃ!午後からも優秀な部下、頑張るでー!」
仁「声がでかい!!」
会社では最高のチーム、プライベートでは誰よりも深い愛を分け合う恋人。
有能すぎる部下との甘く刺激的なオフィスの日常はどこまでも続いていく。
コメント
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初めてコメントさせて頂きます。最っ高でした😭嫉妬に狂ったブラック💙さんが好きすぎて、翻弄される💛さんが可愛すぎて、最初から最後までずッときゅんきゅんし過ぎて心臓と顔の筋肉がヤバいです…。 文章も会話と描写のバランスが良くめちゃくちゃ読みやすいし、センシティブも素晴らしく良かったです😭本当に素晴らしい作品を拝読させて頂きありがとうございました!