テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
47
106
言葉の重さ
部屋は静かだった。
👁️🗨️はソファの端に座ったまま、視線を落としている。
まだ呼吸は浅い。
少し間を置いて、ぽつりと言った。
「……友達に。」
声がかすれる。
「自分が犠牲になった時、それが正しいって言われました。」
その言葉が落ちた瞬間、部屋の空気が少しだけ重くなる。
Ი𐑼は表情を一切変えない。
驚きも、肯定も、否定もない。
ただ静かに聞いている。
👁️🗨️は続ける。
「それ聞いて……」
「やっぱり、そうなんだって思って。」
「自分が我慢すればいいんだって。」
言葉が途中で止まる。
喉が詰まっている。
「そうしたら、うまくいくって……」
沈黙。
その考えは、もう“信じている”というより、壊れかけた正しさの形をしていた。
Ი𐑼はようやく口を開く。
「👁️🗨️。」
短く。
「それは命令でも、真実でもない。」
👁️🗨️の目が少し揺れる。
「……でも、そう言われて。」
「言われたことは事実だ。」
すぐに返す。
逃がさない声。
「だが、“正しい”とは別だ。」
間。
Ი𐑼は一歩だけ近づく。
「犠牲を正しいと言う者はいる。」
「だが、それは“お前の責任”にはならない。」
👁️🗨️の手が膝の上で強く握られる。
「……じゃあ、私はどうすればいいんですか。」
小さな声。
すがるような問い。
Ი𐑼は即答する。
「犠牲になるな。」
「自分を削る選択を“正解”にするな。」
一拍。
「それは禁止だ。」
👁️🗨️の呼吸が乱れる。
「でも……そうしないと嫌われるかもって……」
「それも禁止だ。」
被せるように切る。
強い。
でも、断罪ではない。
“思考のルートを塞ぐ”だけの強さ。
Ი𐑼は静かに続ける。
「お前が壊れることで成り立つ関係は、成立ではない。」
「維持だ。」
「そしてそれは長くは続かない。」
👁️🗨️は目を伏せる。
何も言えない。
Ი𐑼は最後に短く言う。
「ここでは、その考えを使うな。」
「今は戻れ。」
「お前自身に戻れ。」
部屋は静かになる。
でもその静けさは、さっきより少しだけ“現実に戻る音”がしていた。
コメント
1件
かほさん、第33話読みました。この「禁止だ」の掛け合い、すごく好きです。👁️🗨️が「嫌われるかも」に対して「それも禁止だ」と被せるᲘ𐑼の言葉、あれは単なる命令ではなくて、思考のルートを断ち切るための一手なんですね。「成立じゃない、維持だ」という指摘も鋭い。自分を削ることを正解にしないというメッセージが、静かな部屋の空気にじんわり沁みました。二人の間に流れる信頼の重さを感じる回でした。