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「は?
なに、お前、恋占いとかやるの? カレン」
高校の帰り道。
いきなり占いの話をはじめた従姉妹のカレンに日向は言った。
「だって、私、いつもあんたと一緒なんで、他のイケメン寄ってこないのよ!」
「この間、沢田に言い寄られてたじゃん」
「沢田、イケメン!?」
「まあ、結構モテてるみたいだけど」
と言う日向に、カレンが言う。
「でも、日向が側にいたら、誰もイケメンに見えないんだけどっ?」
そのとき、扉の側にランプの飾ってある店から、怪しい呪文を唱えながら小学生たちが現れた。
「すいへーりーべー ぼくのふねー しゃらんら~」
カレンとふたり振り返りながら呟く。
「あれは役に立ったな」
「そうね」
日向は店の扉を押し開けようとして、その横にかけてあるランプを見た。
「父さんがこの店に車で飛び込んできたとき……」
「……いや、その回想の始まり方、怖いから」
人が聞いたら、なにごとかと思うわよ、とカレンが言う。
「猫とおばあさんを避けて飛び込んできたくせに。
『あれは、お前との思い出の詰まったこのランプに惹かれて飛び込んできたんだよ』
とか母さんに言ってるんだよ」
「おじさまは蛾……?
っていうか、好きな人がここにいると無意識のうちに思って、車で突っ込んでくるとかヤバくない?
なに、その死なば諸共みたいなの。
でもまあ、今でもラブラブだもんね」
「あ、そうだ。
週末、父親が帰ってくるってよ」
「……やめなさいよ、その呼び方」
紛らわしいから、とカレンは言うが、大吾に小さなときから刷り込まれているので、直らない。
「そうだ。
週末、私、あかりさんとおばあさまたちと堀様の舞台観に行くのよ」
「へー。
母さんー、カレンが恋占いしてくれってさー。
あと、『味津苦巣十酢』ふたつー!」
カランカランとドアベルを鳴らし、日向は、いつも人の多い、キャンプグッズも扱う占いカフェの扉を開けた――。
完