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気になったら調べればいい。それは現代社会においてはとても手軽であり最適解の行動……だと母が言っていた。
日頃からミーチューブを利用しているのだが、ホーム画面には私がよく見るアーティストや動物系が場所を取り、コスプレイヤーやミーチューバー系は見当たらない。
秘密は人に知られたくないもの、そう思っていた私は、まさかあえて人目につく方に進出している可能性があるなんて思いもしなかった。
私は急ぎ、『花蓮麻琴』の名前をスマホで検索すると一人の女の子のチャンネルがヒットする。紹介文を読みながら写真に目をやると久間が描いていた女の子がいた。
ブラウンの髪色に澄んだ瞳、一目見て綺麗だと口から零れてしまうほどの美少女。
黒髪でビー玉のような瞳……幼い頃の姿に囚われていた私は、花蓮麻琴と過去のあの子を重ねて面影を探す。
画面の向こうで喋る彼女は大人びていて、だけども上からではなく同じ目線で対話し、ときに無邪気な姿を見せる。
そう、私は最近この子に会っている。どこかのお店の前で……たしかショウウィンドウに飾ってあった服を見ていたとき……。
思い出そうとすると比例して頭の中の女の子は鮮明になり、綺麗な人だなと思ったこと、そして少し悲しそうな瞳を思い出す。
そのときは、あの子を感じなかったけど、今は画面の向こうにいる花蓮麻琴に僅かだが感じている気がする。
いや、感じようとしている気持ちが先行して、私がそう思おうとしているのかもしれないけど。
初恋の相手に再び会えたならばすぐに分かる自信があったのに、こうしてそれらしき人に会えたかもしてないのに確信を持てないでいる。
それはとてももどかしく悔しいけども、もう少しで手が届くかも知れないという高揚感も同時に感じる。
花蓮麻琴が初恋の人であり、もしも麻宏だったら……そう考え始めると居ても立っても居られずソワソワしてしまう。
頭の中でぐるぐると巡る考えがまとまることがないのは分かっている。じゃあどうするかと言えば本人に直接聞くしかないだろう。
チャンネルの概要欄を読んでみると、雑談形式の悩み相談なるものを行っていることを知る。
だが、パソコンは持ってないし、ましてマイクとカメラなんてものはないから、花蓮麻琴の配信に音声で参加するのは難しいと思ったが、会話は基本チャット形式、タブレットとスマホを使えばいけると分かって安心する。
考えすぎてもよくないと、今の勢いを持って麻琴のお悩み相談に送った、メールの返信があるのを祈るばかりだ。
なんて送れば採用されるのかもの凄く考えた。いきなり「私のこと覚えてますか?」なんてのはおかしいし、「昔会ったことがありますよね?」というも圧が強い気がする。
まさか「麻琴さんは麻宏なんですか?」とか送って避けられるのも困るし、無難に「初恋を叶えたいです」といった内容の相談を送ってみた。
返信を待つことに慣れていないというか、既読がつくとか、つかないのドキドキとは違う緊張感がある。
そもそもメールなんて日常で送ることもないから使い方が分らなくて、四苦八苦したなと思い出し笑いしながらスマホの画面を眺めているとメールの通知が入ってくる。
馴染みのない通知アイコンにドキドキしながらメールを開くと丁寧な文章が並んでいた。
要約するとこうだ。
『あなたの初恋を叶えたいとの相談、是非聞かせてほしいです』
スマホに並ぶ文字を読んで私は笑みを浮かべる。至福の笑みを浮かべているのが自分で分かるほどの笑みを。