「剣ちゃん、いらっしゃい」
剣持「お邪魔します。…いつ来てもイベント事は大切にしてんだね」
「うん」
だって…あいつが大切にしてたから。
今日は七夕。あいつがいつも家に飾っていた短冊。いつもは剣ちゃん合わせて3つだったけど…今は2つ。それがどうしても、寂しいと感じてしまう。
「先輩達は?」
剣持「あともう少しで来るってさ」
「わかった」
作ったご飯をあっちに持っていこう。
「剣ちゃん。手伝って」
剣持「はいはい」
机と椅子は昨日のうちに出しておいてよかった。
ピンポーン
「あ、先輩たちかな…。剣ちゃん出てくれる」
剣持「了解」
「ーーー!」
「ーーー」
「ーーー」
ガチャ
「皆来たよ」
全員とも同じタイミングとか…待ち合わせでもしてたのかな。
「いらっしゃいです」
叶、加賀美、甲斐田「お邪魔します」
不破「おじゃましまーす」
葛葉「お邪魔します…うわっ。ひろ…」
叶「ていうか全然物ないね」
剣持「机と椅子も地下から取り出したんでしょ?」
この家には屋根裏部屋がない代わりに地下室がある。地下室と言っても、剣ちゃんや誰かが泊まる時などに使う布団や、机、椅子などがあるだけ。
不破「地下あんの? すげー」
剣持「琥珀はものに興味ないですから。でもめんどくさがり屋だから、性能がいいブランド品を選ぶんですよ」
…めんどくさいけど、やることはやってるよ。
甲斐田「白と黒で統一されてるけど、そういうこだわりがあるんじゃなくて?」
剣持「こいつは選んでないですよ」
叶「え? それって…?」
「剣ちゃんが選んでくれたり、実家から持ってきたりしました」
後は…あいつが選んでくれたり。…今覚えばあいつが俺の世界の中心だったんだな…。
加賀美「もちさんが選んだとか仲良いんですね」
剣持「まぁ中学からの仲ですし」
仲良くなったきっかけ…なんだっけ? あ、あれか。弓道と剣道で同じ武道だねって仲良くなったんだっけ。あとあいつ経緯で…。
「…ご飯できましたよ」
そう言うと皆の目が輝いた気がした。…気のせいかもしれないが。
葛葉「…美味そう」
不破「え、これ全部琥珀の手作り?」
甲斐田「すげー」
「はい。でも、味は保証しませんからね」
不破「いやいや。香りがもう、美味い」
香りが美味いってなんだ?
不破、甲斐田、葛葉「いただきまーす」
加賀美、剣持、叶「いただきます」
美味しいかどうかが気になってしまい、先輩たちの顔を見た。剣ちゃんはまずかったら、まずいって言ってくれるし、無理やりでも食わせる。
不破「…っ! めっちゃ美味い!」
叶「すげー、美味い」
「ありがとうございます」
よかった。不味くはなかったんだ。
先輩たちの笑顔を見るとほっとする。
剣持「良かったね」
「え…うん」
俺たち2人にしか聞こえないくらいの声量で剣ちゃんはそう言った。
気づいてたんだ。顔に出てたかな。
そう思いほっぺを触っていると、剣ちゃんに笑われた。
剣持「…ふっ。出てない。というか琥珀は顔に出なさすぎ」
「そう?」
そんなに感情が表に出ないタイプかな…? そんなことないと思うけど。
「そういえばさ、あの時も……」
思い出話や、配信、日常、そして願い事について、みんなで話して、楽しい夕食の時間は終わった。
「暇ですね。僕の家何も無いので」
剣持「何も無さすぎなんだよ」
そうかな? 別に欲しいものもないし、あれば買ったり、借りたりすればいいし…。
叶「んー。じゃあ、みんなで短冊でも書く?」
不破「あり」
葛葉「いいじゃん」
…紙はまだ余ってるし…。
「短冊持ってきますね」
そう言いながら、地下室に繋がる階段へ降りた。
「はい。どうぞ」
剣持「僕と琥珀はもう書いたんで」
不破「うーん。そやなぁ。2人は何書いたん?」
甲斐田「確かに! 気になる!」
剣持「…木刀を使って甲斐田の頭を叩きわりたい」
甲斐田「酷いっ!」
…そんなこと書いてたっけ?
加賀美「琥珀さんは?」
「…寝たい」
剣持「もう叶ってるよ」
「…そう?」
叶ってないよ。何一つ。失ったものは、二度と戻ってこないんだから。
そう思っていると、生ぬるい風が吹いた。それと同時に短冊に書いた文字が見えた。
…叶うわけないんだよなぁ。
もう一度、”一緒に生きたい” なんて。
「…夏が来たな」
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ここまで見てくださり、ありがとうございました!
最近投稿することは減っていたのですが、七夕だということを今日の登校時間に気づき、すぐさま作らせて頂きました!
皆様は短冊にお願いごとを書いたりしましたか?
僕は、一日を32時間にして、睡眠時間を増やして欲しい。と書きました…( ̄∇ ̄*)ゞ
神様がいてもいなくても、叶っても叶わなくても、願ってなんぼですよ!
皆様の♡により、いつも励まされています!
最近はとても暑いので、水分補給をして体調に気をつけて、お過ごしください!
これからもよろしくお願いします!
音宮