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「例えそれを知ったとしても、未来は変えられる可能性は低いと思います」
「それなら何で葵さんは授業を抜け出してまで、誰かを助けに行こうとしてるんですか?」
「・・・・・。助けられた人もいました。救えた命もありました。でも、変えられない未来がそれとは比べ物にならないくらい沢山あるんです。私が、どうこうしても太刀打ち出来きないような大きな力が働いているんです。でも…助けたいんです。助けなきゃならないんです」
葵さんのこんなにも強い口調と険しい表情を見るのは初めてだった。
余程ツラい経験をしてきたのかがわかった。
「葵さんに未来を見る力が備わったのは、僕は運命だと思います。葵さんじゃなきゃ出来ない事だから選ばれたんだと思うんです」
「私は、そんな選ばれるような人間じゃありません」
「そんな事ありませんよ。だって現に葵さんは与えられた力を使って、色んな人の未来を変えようとしてきたじゃありませんか。結果はどうあれ、誰かの為に一生懸命になれる人間に、神様は力を授けてくれたんですよ」
「そう言ってもらえると嬉しいです。ありがとうございます。でも私は…‥」
きっと葵さんは能力を持っている事を望んでいないし、出来る事なら未来など見えずに普通の生活がしたいと思っているに違いない。
普通の人間なら…普通の高校生の女の子ならそう考えるのは当然だ。
「僕も出来る事があれば、何でも手伝いしますから…1人で色んな事を背負わないで下さい」
「私をずっと支えてくれるって事ですか?」
「ずっと…‥」
僕には“ずっと”の意味がわからなかったし、もしわかったとしても“ずっと”支えていくという自信が今の僕にはあるとは言い難かった。
少なくとも亜季ちゃんを好きな今の僕に、そこまでの覚悟が持てるだろうか?
「駄目ですか? 未来では紺野さんと私は…‥」
「えっ!?」
葵さんが見ている未来の僕らは、どんな関係になってるのだろうか?
「それより、紺野さんはこれからどうされるんですか?」
「千葉の事は、放っておいて帰ろうと思います」
「私も帰りますけど…」
葵さんは、何か僕の言葉を待っているようだった。
「一緒にかえっ…」
「はいっ! 帰ります!」
やっぱりそうだった。
もしかすると、この場面も葵さんには見えていたのかもしれない。
いったい葵さんは、どの程度の未来、どれくらい先の未来が見えているのだろう?
それから僕と葵さんは病院を出て、2km離れた駅に向け歩き出した。