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「……湊さんは、あの頃から変わってないね……。いつだって、頼りになる……」
和葉がぽつりとそう呟くと湊は嬉しそうに目を細めた。
「そう思ってくれてるなら、もっと頼ってくれ。お前や詩音ちゃんの為なら俺は何でも出来る」
「……湊さん……」
まっすぐに向けられた言葉に和葉の胸が温かくなる。
そんな和葉を見つめる湊の胸には、やはりどうしても消えない疑問があった。
なぜあのとき、別れることを選んだのか。
詩音の父親はいったい誰なのか。
聞きたいことはいくらでもあるけれど、今それを口にしてしまうとこの穏やかな時間が壊れてしまいそうな気がしてその疑問を全て飲み込み、代わりに名前を呼んだ。
「和葉」
名前を呼ばれた和葉が顔を上げると、二人の視線が重なった。
そして、少しずつ距離が縮まっていき――そっと唇を重ねていく。
再び付き合うことができて、こうして互いに触れられるようになった喜びを改めて噛みしめ合っているさ中、
「ママ……おにーちゃん……」
「!」
突如詩音の声が聞こえたことで二人は慌てて離れた。
「詩音……」
和葉が振り返ると、後部座席で詩音が目を覚ましている。
「ママ、こっちきてぇ」
「分かったわ。今行くから」
詩音に呼ばれた和葉は一旦車の外へ出ると、後部座席へ回って詩音の隣に座り直した。
そんな二人の様子を見ながら湊は、
「えっと、この後、どうする?」
この後の予定を立てようと尋ねると、
「……しおん、おなかすいたぁ」
詩音が眠そうな声で答えたので、
「それじゃあ、どこかで何か食べていこうか?」
そう提案したのだが、和葉は少し考えたあとで控えめに口を開いた。
「あの……もし良かったら、家で食べない?」
「家で?」
「うん。スーパーに寄って材料を買って……その……」
そこで一旦言葉を区切ると和葉は少しだけ恥ずかしそうに視線を逸らす。
「記念日、だから……湊さんの好きな物、作るよ」
その言葉に湊の表情がパッと明るくなった。
「……いいのか?」
「うん」
「俺は嬉しいけど……これから帰って作るの、負担にならない?」
「大丈夫。まだ夕方だし、作る時間はいつもと変わらないよ」
「そっか。それじゃあ和葉の手料理、お願いしようかな」
「うん、任せて。ちなみに何が食べたい?」
「そうだな……」
湊は少し考えてから楽しそうに笑う。
「沢山あってすぐには決まらないから、スーパーで買い物しながら一緒に決めよう」
「うん、そうだね」
こうして、再び眠ってしまった詩音も含めて一緒に夕食の買い物へ向かう為、車はスーパーへ向かって出発した。
コメント
1件
「記念日だから湊さんの好きな物、作るよ」って和葉ちゃんの言葉、すごくじんわりきた…。湊さんの胸の内にある消えない疑問をあえて飲み込んだところも、今を大切にしたい二人の距離感が伝わってきて切なかった。詩音ちゃんのタイミング、絶妙すぎる(笑)でも家族三人でスーパーに行く流れ、すごく自然でほっこりしたよ。
鷹槻れん

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猫塚ルイ

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宇津Q
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