コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
少し強めの雨が降っているにもかかわらず、僕はころちゃんの手を握ったまま傘もささずに学校から数分の自宅へと向かった。
ころちゃんも傘をさそうなんて、一言も言わなかった。
雨粒によって制服のシャツが肌にじっとりとまとわりつき気持ちが悪いはずなのに、握り締められた掌の感覚の方がずっと僕の気持ちを無性に掻き乱した。
エレベーターでの沈黙が、上階に向かう度により息苦しく感じられる。
ころちゃんは相変わらず一言も話さない、らしくもなく借りてきた猫のように大人しくなってしまった。
(調子が狂うんですよ…)
いつもは煩いくらいに騒いで、僕の手を引いて連れて行くのは貴方なのに。
(これじゃあまるで、ころちゃんも僕のことを…)
💛「なっ….」
思わず声が漏れそうになった、ころちゃんはごっこと言ったじゃないか。僕の気持ちなんて露知らず。
(きっとすぐに飽きる)
そう脳内でモヤモヤとしているうちに到着の合図音がなり、降りると僕はすぐ目の前にある自宅のドアの前で止まった。
💛「いいんですか」
(いまもし、ここで)
グッと目を瞑る、最後の確認のつもりで笑って言おうとしたのに自分でも驚くほど低い声が喉を通過した。
緊張するに決まっている、僕が今からしようとしていることは友人を一人失う最低な行為なのだから。
(もう、お願いだから拒んでください)
💙「いいよ…」
ころちゃんはそこまで来てようやく声を発したが、少し震えていて僅かに上擦っているように感じる。
僕は今日、友人を失うことになるのでしょう。
でもそれを望んだのは、
そうさせたのは。
(僕じゃないですから)
(僕はあくまで頼まれただけ)
悪いのは自分ではない、と思い込まなければ立ってすら居られなかった。
💛「はぁ………分かりました」
鞄より鍵を取りだし、カチャリと無機質な音と共に僕は勢いよくころちゃんを室内に連れ込んだ。
💛「お望み通り、恋人ごっこの続きをしましょう」