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久しぶり ノベルさん。
書き方忘れました。ぴえん
こういうのは勘なんですよ😺
てことで、行ってらっしゃい
桜が風に揺られ、窓の向かい側が真っピンクに染まる。
窓から桜の花びらが入り、僕たちの楽譜を見事に隠す。
そんな中、教室にはいつも
彩り取りの音が吹雪かれていた────
2年1組 黄
高校2年生になったばかりだ。
僕の部活動は変わらず「吹奏楽部」。
変わらずということは、1年の時も吹奏楽部だったのだ。
僕が担当している楽器は「トランペット」。
トランペットは相変わらず、1年の時も今も
男女関係なく人気な楽器のひとつだ。
だから、みんながみんな担当できるわけでもない。
今は、メンバーは決まっているが、人数が多すぎた場合にはオーディションで決まる事もある。
そのくらい人気で重要性がある楽器を僕は担当している、と考えると体に重りが連なってくる。
今は4月下旬。
きっともう少しでコンクールの日程が決まるのであろう。
その日までの限られた時間を今からでも作っていく。
でも、それよりも前に決めることがある。
それは、
パートごとの人選だ─────
「昨日決まった、課題曲と自由曲の楽譜を配ります。」
「貰った人から各パート練習の教室に行くように。」
「3年生を中心に助け合いながら練習していきましょう。」
「はい!」
今日からパート練が始まる。
ここからが精神と体力勝負になっていくであろう。
でも実際は1度経験してある2年生の僕からしたら、少しだけレベルアップしただけで、きっと自分との勝負に時間を継がやすと思う。
僕はこう見えて”負けず嫌い”だ。
同じ同級生にも負けたくは無いし、下級生にも絶対負けたくはない。
ただ僕は、3年生の先輩にトランペットを吹いて欲しいと思っていたから。
僕の憧れの先輩。
3年2組 空彩 青先輩
きっと、僕がトランペットにした理由もここに隠されているのだろう。
僕は、先輩の音に何度惹かれたのだろう。
先輩のトランペットからは、音以外に
優しさ・悲しさ・切なさを感じる。
高い音の楽器なのに。
どうして感じるのだろうと、いつも疑問に思う。
そんな先輩と今年も一緒にパート練ができるだなんて…。
と、思っていると憧れの先輩の声が聞こえた。
「これで全員かな?」
「よし、!初めましてトランペットパートの皆さんっ!」
「トランペットのリーダーを務めます!
3年2組 空彩 青です!よろしくお願いします」
先輩の挨拶に続いて、副リーダーの挨拶が始まった。
その時先輩は、少し顔を赤らめてなんだかソワソワしていた。
そんな先輩が僕は大好きで憧れだった。
「それじゃあ、お名前だけでも、自己紹介してもらおうかな、?」
教室が一気にざわめく。
「どんな感じに?」とか、「ちょっとだるいね笑」などの話し声が聞こえ、先輩は見事に困り果てている。
僕は我慢できず、
「先輩が困っていますよ、」
と、言ってしまった。
僕は、やってしまった、と思い顔を上げると、
大好きな先輩がナイスポーズをしていた。
「へ、?」
僕は小声で呟いてしまった。
僕はいけないことをしたと思ったのに。
役に立ったなんて、思ってもなかった。
でも、先輩の役に立てたのならすごく嬉しい。
「それじゃあ、2年生から自己紹介を!」
「お願いします、!」
という合図から始まり、無事に僕の番を通過。
1番最後の1年にまでバトンが繋がれ自己紹介タイムは終了。
「みんな自己紹介ありがとう」
「それじゃあ、今日の課題に行きます。」
「今日は、1度、課題曲・自由曲の楽譜を順番に目を通して、音の確認をしてから、一段ずつ吹いていきます。」
「なにか分からない事がある人はいますか?」
一気に先輩の雰囲気は変わり果て、真剣モードに入った。
それと同時にみんなのやる気スイッチもオンにされた。
今日はきっとあまり吹かないと思うが、家でもう一度、今日行った事を復習しようかな、と思いながら、先輩の話について行く。
「それじゃあ、課題曲の方から」
「まず1段目、1段目の吹き出しは───」
「それじゃあ、今日はここまでにしようと思います。」
「あ、それと、今日吹いた段だけでも、もう一度復習しておくといいと思います、!」
「明日の練習では今日吹けなかった段から始めるので、!」
「はい、!」
「気をつけ!礼」
「ありがとうございました!」
今日の練習はここで終了。
僕的には、課題曲の方が少し難しそうだと、感じる。
それに課題曲には”ソロパート”がある。
ソロパート、それはその名の通り誰か一人しか吹けないことさ。
きっと、勇気のある人は立候補するのだろう。
僕は立候補はしないが…。
だって、なるべく先輩に吹いて欲しいのだもの。
先輩にとっては何度もあるコンクールでもいつも、”これが最後”という気持ちできっと臨んでいるのだろう。
でも、僕にはラストチャンスがある。
最後の1年でどれだけ自分を持ち上げられるか、が鍵になっていく。
大好きな先輩だからこそ、憧れの先輩だからこそ、僕は先輩になるべく枠を譲ってあげたい。
「今日のご飯なんだろ‐な‐、」
なんて呟きながら、僕はオレンジ色の光に照らされながら少し重いトランペットを背負い、街中を歩いていく。
「あ、」
「あれ、?笑」
「もしかして黄くん?笑」
「あ、はい!黄です、!」
「偶然だね笑帰り道に会うだなんて」
「そう、ですね!」
大好きな先輩。
やっぱり目の前で話すといつもより緊張が背中に走り、目を合わせられないのが悔しい。
「あ、そうだ」
「はい、?」
「今日は助けてくれてありがとね笑」
「あ、え?」
僕は思わず変な返事を返してしまった。
この時なんのことか全くもって分からなかったもんだから。
「ど忘れしちゃった?笑えーと、自己紹介の前の時!みんながざわついちゃった場面あったでしょ?」
「その時、先輩が困ってるよ‐、って!あれほんとに助かったよ‐!!」
「あ、ああ、っ」
「ほんと、ですか、?」
と、僕が聞き返すと先輩は僕の手をとって言った。
「ほんとっ、!笑」
「…、!」
不意打ち、だめですよ、先輩。
先輩は満面の笑みで僕と目がバッチリあった状態で言った。
僕はすごく嬉しかった。
あの時どうしてナイスポーズをしたのか、
先輩の気持ちと僕が予想していた気持ちが一致して、ソワソワした気持ちが一気に晴れた。
「やっぱり、黄くんリーダーとかめっちゃ向いてるよ‐!」
「…そうですかね、?」
「だって、君は周りに気遣いができるし、周りの事をよく見ててさ‐、!」
「僕とは大違いだよお‐…」
「あれ、もしかして照れてる?笑」
「な、!そんなことないですよ…、!」
こうなったのは先輩のせいだ…と心の中で呟きながら、まだ僕の顔は太陽のように熱くて赤かった。
でも、このくらいが丁度良かった。
先輩と後輩という関係がより作れた気がして、
きっとこれ以上の関係にはなりたくなくて、きっと”なれなくて”。
それが僕には丁度いい温度だから、それを保てるように接していきたいと思っている。
「…あ、そろそろ時間やばいなあ…、」
「ごめんね!長々と話しちゃって、!」
「と、とんでもないです、!!」
「それじゃ、またあしたね!」
「これから一緒に頑張っていこ‐!笑」
「はい、!」
あの瞬間、あの時間が僕にとって、
1番好きだった。
「うん!前よりみんな上手にリズムもとれてる!」
「でも、ひとつ惜しいところがあります、!」
「3段目、トランペットの音が〜、」
段々と僕たちトランペットパートは形になってきた。
これを完璧にすることが出来れば、あとは人選。
きっとこれが1番緊張する瞬間なのだろう。
僕も、先輩も緊張している、って言っているくらいだから。
これまでの成果を出すのが本番だよ。
この言葉をくれたのは青先輩だった。
僕にとってはお守りのような言葉だった。
だからこそ、頑張りたい。
先輩も、頑張って欲しい。
「青先輩、!あの、分からない部分があって、」
「はいは‐い!どれどれ‐?」
「ここはね‐、、」
「なるほど、!家で練習してみます!」
「練習してきな‐?笑」
やっぱり、先輩の教え方はいつも上手だ。
誰にだってわかりやすい言葉で、話しやすい雰囲気で教えてくれる。
そんな先輩、青先輩以外に居ないくらい。
「ねぇ」
「はい、?」
「やっぱり、黄くんは枠絶対に確保したいと思ってるよね?」
「…、まあ、そうですね、笑」
「良かった笑」
「え?」
「そのためにさ、僕もやれる事はやりたいって思ってるから、!」
「でも、君だから絶対に枠とるんだろうな‐とは思ってたよ笑」
「なんだって、僕の後を継ぐ後輩だもんっ笑」
僕は心が、気持ちがむしゃくしゃしていた。
僕は、先輩に立って欲しい。でも、先輩は僕に立って欲しい。
僕は今分からない事だらけだった。
でも、僕はこの気持ちをそっと隠しておく。
先輩と一緒に立つために。
「そうですね、笑」
「あ、ごめん!!圧かけちゃったね、」
「い、いえいえ、!背中を押されました!」
「…そう?笑なら良かった笑」
と、いい、先輩は背を向けて自分の席に戻って行った。
僕は今でも変わっていない、きっと変わらないと思っている。
先輩には絶対立って欲しい。
でも、1番嬉しいのは先輩と一緒にホールで吹くことさ。
先輩にとってはきっとこのコンクールが終われば1番最後のコンクールでほんとうに最後の部活動になる。
だからこそ、だからこそ…。
先輩を僕が支えるんだ。
期待に応えるんだ。
先輩のためなら、なんだってやってやるんだ。
そう、僕は胸に誓った。
時は流れ、長かった夏休みも明けてしまった。
といっても、毎日部活動があり、学校にいることが多かったが、ここからがスタート。
まだ僕たちはスタート位置にしか立っていない。
再来週、人選が始まる。
みんなが待ち望んでいた事、みんながここまで頑張ってきた理由はきっとここにある。
僕もその中の1人さ。
きっと、先輩もね。
再来週に向けて、僕はこれまで以上に真剣に練習に励んでいこうと思う。
もちろん、先輩を支えながら。
僕の毎日のルーティンは放課後、1人でトランペット練習をすることだ。
先輩には立って欲しい。ただ、後輩や同学年には負けたくない。
最初に言った通り、僕は負けず嫌いさ。
だからこそ、あのホールに立って、先輩と吹いてみせるんだ。
吹きたいんだ。
「いいじゃんその調子笑」
「青、先輩?」
「まだ帰っていなかったんですか、?」
「うん笑上から綺麗なトランペットの音が聞こえたから、猛ダッシュでかけ昇ってきてさ笑」
「そしたら、君が笑ね?笑」
「…、丸聞こえでしたか?」
「そりゃね笑トランペットだもん」
「変じゃなかったですか、」
「え?笑うん全然笑」
「前より上達してるし、息継ぎも上手くなったでしょ笑」
「…そうなんでしょうか、ね笑」
「ほんとだよ‐!この僕の耳だからね‐笑」
と、冗談話をしてくる先輩。
2人きりだけど、緊張しなくて、空気が暖かくて。
それも、先輩の魔法なのかな。
なんて思っていると先輩がまた口を開いた。
「あ、まだ黄くんには話してなかったよね。」
「…?は、はい?」
「その感じビンゴだね、笑」
「すごく急な話なんだけどね、」
僕は、唾を飲み込み、トランペットを持っている手に力が入った。
「僕、秋のコンクールを最後にしようって思ってるんだ。」
「え、?」
僕は頭が真っ白になった。
先輩が今年のコンクールを最後に部活を辞める?
そんなの信じられない。信じたくない。
どうして?何かあったの?虐められてたの?
色んな考えが浮かんできて、僕は心が押しつぶされそうになっていた。
あと1回、あったはずなのに無くなった。
あと1回がこれ”で’ほんとに最後だったのに。
これ”が”ほんとに最後になってしまった。
「…どうしてですか、。」
半分信じたくない気持ちと先輩と一緒に吹きたい気持ちが混ざった勢いで、質問してしまった。
「簡単に言えば、受験かな、笑」
「3年生はね、ほとんどの人が辞める理由としては受験なんだってね。」
「僕もその人たちと同じ輪に入るのかあ‐笑」
「…、そうなんですね、」
僕はある程度納得した。やっぱり、最終的には人生を優先した方が良い気がする。
これからまだまだ人生の道のりは長いはずなのに、部活だけに専念するのも圧がかかりすぎて、自分を追い詰めることになるだけだ。
僕が先輩の立場だったなら、きっと人生を選んでいるんだろうな。
先輩の気持ちがしれた、まだ僕の気持ちはむしゃくしゃしていたけれど、でも、誓ったんだ。
先輩のことを支えるって、だから、先輩が決めたことならそれに応えないと。先輩がほんとに最後のコンクールに出れるように。
僕も協力したい。
「僕、先輩の事、応援します、!」
「支えていきます、!!」
「…、ありがとう笑」
「やっぱりほんと、できた後輩だあ、笑」
「頭、わしゃわしゃしないでくださいよお、」
「髪の毛ぐしゃぐしゃです、、笑」
「ぐしゃぐしゃでも似合ってるよ笑」
なんて、先輩は言ってまた背を向けてしまった。
本当に、これが最後になる。
全て、先輩と過ごした場所も会話も、あと3週間過ぎで無くなってしまう。
そんな気がするとなんだか、もっと気持ちが整理しにくくなった。
悲しい、だけど、頑張って。
今はそんな気持ちしか頭になかった。
本番まであと1週間をきった。
そして、人選まであと1日。
僕の心臓はいつもより早くて、まだ前日なのに手が震えて、いつもより上手くトランペットを吹くことが出来ない。
本番になったらどうなることやら、
ふと横を見ると先輩がトランペットを口に当てている横顔が見える。
先輩もいつも以上に手が震えてしまっていた。
先輩も、本番どうなってしまうのだろうか。
そんなことを考えてしまう自分が嫌で僕は必死にトランペットを練習した。
そして、放課後。僕は最後の毎日のルーティンとしてる一人練習を始める。
「やっぱりいた-!笑」
「ごめんねごめんね-笑」
「僕も一緒にやっていいかな」
「…!もちろんです!笑」
本当に最後の練習を先輩とできるだなんて僕にとってはご褒美すぎた。
心臓がさっきよりバクバクしてきて、胸音が先輩に聞こえていないか不安になる。
そして先輩はこういった。
「明日だね。」
「…そうですね、」
「緊張してる?」
「まあ、」
「黄くんはメンタル豆腐じゃなさそう-、笑」
「え、えぇ、?」
「僕はみんなから豆腐すぎ笑って言われるんだもん、笑」
「事実かもだけどさ、!」
先輩、メンタルやられる人なんだ。
初めて知った。今まで、僕に見せてきた先輩の姿はいつも頼りになって、前向きで、僕よりずっと背が高い人だと思っていたから。
先輩も、やっぱり人なんだなあ、笑
なんだか安心している自分がいた。自分と少し近くにいる人なんだって思って。
僕は、’大丈夫ですよ”なんて言いたかったけれど、先輩の負担がかからないように、あえて口を開かず、ずっと閉じて、もしかしたら最後かもしれない先輩の話し声をトランペットを抱えながら僕は聞いていた。
「やっぱり、毎日聞く事にめっちゃ上手くなってる!!」
「ほ、ほんとですか、?」
「うん!笑もちろん」
最後の最後で先輩に褒めて貰えた。
嬉しい。すごく嬉しい、胸が嬉しいで溢れそうだった。
「大丈夫。これまで練習してきたものを見せるだけだから。」
「誰も君を否定なんてしない」。
「…、!」
何故か僕はその言葉が心に響いた。
ただ見せるだけ。誰も責めない。
戦場なんかじゃない。ただ、自分と向き合う時間なんだって、教えてくれた気がした。
「そろそろ帰ろうか?笑」
「ですね、笑」
僕はさっきの言葉を胸に先輩と横に並び、夕日に照らされながら街中を歩いていった。
「さて、今日は待ちに待った、パートごとの人選を行いたいと思います。」
「今からどの順番で行くのか発表します。」
ついにこの時が来た。朝から僕は心臓がうるさくて、うるさいって心臓に言ってやろうかと思ったくらい。
周りのみんなの視点がほぼ、少し下に俯いている子が多い気がする。
それほど、みんな緊張しているんだろう。
先輩の様子も、なんだかバタバタしている。
今日は教室がシーンとする時間が多い。
そのため、余計に緊張感が走る。
僕も今にも汗が出てきそうなくらい。
「順番はこのように行きます。」
「順番じゃないパートの皆さんはいつものパート練習の教室で待機をしていてください。」
「はい、」
「それでは、準備が出来次第、パートごと呼んでいきます。」
結果、僕たちは5番目。
まあ、なんとも言えない番号だが、少し気持ちを整えれる時間があり、良かったと思う。
教室は、いつものみんなの暖かな空気ではなく、少し冷たい空気の方が多く感じた。
先輩も、今日は暖かく感じない、。
それくらい一人ひとり、緊張しているんだろうな。
ただ必死にトランペットで指練習をひたすらしていた。
音を出してはならないので、指練習だけ。
それでも、最後まで。
自分の納得のいく終わり方で終われるように。
「次、トランペット。」
「1年から順に1人ずつ教室に入ってもらいます。」
「そのほかの皆さんは廊下で、」
ついに始まった。ここからが本番。
順番は1年、2年、3年の順番。
真ん中は、まあまあありがたい方だ。
「まず1人目、」
1人の子が一生懸命トランペットを吹く音が聞こえる。ミスはほぼないし、音も安定していそう。
なんて考察していると焦りが出てくる。
僕は、最後の最後まで指練習を続けた。
「次、2年 如月 黄」
「はい。」
ついに呼ばれた。これは一発勝負。
でも、昨日言ってくれた先輩の言葉を思い出し、僕は堂々と立ち、トランペットに口を添えた。
なんとか、ノーミスでクリアできた。
僕はそのままパート練の教室に向かうので、先輩の音は聞けないけれど、心の中で頑張ってください、と唱える。
「先輩、頑張れ、」
「全てのパートが終わりました。結果は明日にはお伝え出来ると思います。皆さんお疲れ様でした。」
終わった。やっと終わった。
僕は疲れ果てて、ベッドにダイブしてしまった。
これまで頑張って来た事を振り返ると結構ハードだったな、なんて思いながら、いつの間にか僕は寝落ちしていた。
深夜1時、僕は飛び上がりさっさとお風呂に入り、2度寝をした。
「皆さんお待たせしました。今からパートごとの担当の人を1人ずつ発表していきます。」
「まず初め、フルート。」
ついに発表。僕たち、トランペットパートはなんと1番最後。
なんて酷いんでしょう先生は。
5番目に審査したのに、
それまで心臓がどくどくと昨日よりはマシだが、音がうるさい。
最後までもつのでしょうか、
「最後、トランペット」
来た。ついに順番が回った。
きっと1年生から順に発表すると想定すると、また真ん中だ。
真ん中が1番中途半端。
そして、人数もそんなに多くは無いので、安心することはまだまだ先。
そんな事を思っていると2年生の発表が来た。
「2年 2人目、佐々木 瑠斗」
「はい!」
あと、1枠。
「2年 3人目、如月 黄」
「、はい!」
やった、入れた。
良かった、
僕は一安心し、小さく息を吐いた。
そしてここから、3年生の発表。
先輩の2択がここで分かる。
僕は、自分より緊張していた。
「3年 1人目、石井 愛永」
「はい、!!」
あと2枠、
「3年 2人目、溝田 空」
「はい。」
あと1枠、、
「3年 3人目、矢野 刀也」
「はい、!」
「ぇ、?」
「以上、トランペットメンバーです。皆さん拍手を。」
先輩、?
「今回のコンクールはこのメンバーで行ってきます、。」
「受かった人も、落ちてしまった人も、ここまでよく頑張ったと思います。」
「最後まで、全力で取り組んでいきましょう!」
「はい!!
先輩は、?
放課後、僕はまだ椅子に座っていた。
気持ちがまだ整理出来ていない。出来るわけない。
先輩が、先輩が落ちるわけ、ないとおもってた。
どうして、?
自分自身に問いかけてしまう。
もし、僕が先輩に圧をかけてしまっていたせいで、上手く吹けていなかったら。
僕は、先輩になんてなれない、
先輩は、ここまで頑張ってきてた、先輩は誰よりも上手かった。なのに、落ちた?
僕は、先輩と、吹きたかった。
吹きたかった、。
先輩に吹いて欲しかった、。
…なにも、分からないなあ、笑
「黄くん、そろそろ帰りな?笑」
「…、っ」
僕は勢いよく先輩に飛びつき、肩を両手で掴み、先輩を壁ドン状態にした。
「…、黄くん…、っ笑」
「…先輩、っ」
「…、残念だけど、僕はもうこれが本当の最後なんだってさ、」
「神様は酷いよ-、最後だったのに…。」
「こんなの、先輩らしくないです…、っ」
「…っ、そうだよね、笑みっともない先輩見たくないよね-、!笑」
「ごめんね、、っ笑」
「違う…っ、違うんです…っ!!」
「どうして…、っ先輩は、っ」
「先輩は、っ悔しくないんですか、っ!?」
「悲しくないんですか…っ、!」
「…、えぇ、?笑」
「いつもいつも、っそうやって誤魔化して、っ!!」
「先輩の気持ちなんて、一度もわかったことないくらい…っ、」
「せめて、最後くらいはっ、ほんとの先輩が見たかった…っ、」
「…」
気づけば、僕は目から涙があふれるようになっていた。
「僕は…っ、1番最初からずっと、先輩に憧れてたんです…、っ」
「先輩の、優しくて…でもどこか”切ない音”があるトランペットの音を聞いてから、っ」
「ずっと、ずっとっ、!」
「憧れの先輩である、そして、っ大好きな先輩と一緒に練習出来て、っもしかしたら、っコンクールであのホールに一緒に立てて、」
「それくらい、僕は先輩が大好きだった、っ憧れてた、っ」
「だからこそ、っ僕は…、っ」
「あのホールで、先輩と一緒に立ちたかった…っ」
「先輩と一緒に、っ!吹き”たか”ったっ!!」
「最後く”らい”は、っ!!」
「青先輩と、っ吹きたかったです…、っ」
気づけば、涙があふれるどころが、滝のように流れ続けていた。
先輩を困らせるに決まっているのに。
今まで黙っていたことを全部先輩に放り投げて、自分は何がしたいのだろうと、バカバカしく思ってしまった。
でも、言ってしまった事はもう取り返しがつかない。
今、後悔してしまっている自分が嫌になってくる。
そんな事を考え込んでいると、僕のほっぺたに手が触れた。
「…ん、っ…」
「…、笑」
「…ありがとう、全部、吐き出してくれて」
「憧れで大好きだなんて、嬉しいなあ…、っ」
先輩が急に黙った。
そして、僕のほっぺにあった手が下に滑り落ちていき、同時に僕も、先輩の肩に置いていた手を離した。
そしてしばらく沈黙が続いてから、先輩がまた口を開く。
「すごく、悔しい。」
「もう死んじゃうくらい悔しい。」
「こんな終わり方、信じたくない。」
「自分でも嫌だ。」
「再オーディションをしたいくらい。」
「何がダメだったのか、直接聞きたいくらい。」
「でも、もうチャンスはない。」
「今無くなった。」
「…、こんなのって、っ」
「…なんて言うんだろうね…っ、?笑」
先輩は1粒の涙を流した。
僕もそれにつられて泣きそうになったがぐっと堪え、先輩の話について行く。
「一言で表せば、後悔。ですかね、?」
「そうかもね、笑」
「僕も、後悔しています。」
「先輩と立てなかった事、それに加えて、先輩に色んな言葉を放ってしまった事。」
「後悔は一生。なんて言うじゃないですか、」
「でも、僕はそんなの信じません。」
「後悔は一生だなんて、それを思った事は一瞬だったのに。ずっと根にもつなんて、格好悪いじゃないですか、!」
「だから、先輩も─────」
僕は、誰かにハグをされた。
「遠回しに、僕格好悪くないって言ってる?笑」
「あ、、っすみません、っ、!!」
「んーん笑」
「でも、確かにそうだね笑過去の事は取り返し用が無いもの。」
「…それじゃあ、もし、この記憶が消えたら、僕たちはまた会えますか、?」
「ど-だろうね笑」
「もし、新しい記憶が出来たら、オーディションで僕が勝ち取るとこみせれるかもねっ笑」
なんて、先輩は言ったのですから、僕は堂々と絶対見せれますよと言った。
また後悔することも知らずに。
でも、僕はもう悲しくはありません。
僕の心にはいつも、先輩がいるのですから。
先輩も僕と同じで、負けず嫌いなんだって知れて新鮮だった。
今までの会話を振り返ってみると、なんだかくだらない話ばかりでした。
でも、僕たちにはちょうど良いのです。
先輩と後輩の関係でそれ以上の関係には”なる必要がなくて”。
僕はまだ、青先輩。と呼びたいのです。
と、ふと思えば、僕はまだ先輩にハグをされたままでした。
誰かに見られて変な噂でも流されたら、やばいので、先輩のためにも、そろそろお別れの時間にしようと思います。
「…先輩、あの、そろそろ離していただいても、?」
「…っちょっと、まってっ、…っ」
と、鼻をすする音が僕にはバッチリ聞こえました。
僕は勘が働き、先輩?と、声をかけた。
「あとちょっとだけ…、っ」
「…んふ、っ心の整理出来てからでもい-、?」
僕は見事にビンゴした。
先輩はきっと、泣いているんでしょう?笑
僕は、抱きしめられた体をぎゅっと返し、おまけに背中をさすった。
そして僕はこういった。
「もちろんっいいですよ青先輩、っ笑」
そして、本番。
僕は、僕たちは、目の前に大勢の家族、学校の先生、そして、仲間たち。
これを前にし、僕たちは、それぞれ楽器に口を添えた。
今はもう、聞けることの出来ない切なき音を頭の中で再生しながら、僕は堂々と、今、
優しくて、そして切ないような音を吹く。
ちゃんと見ててね、先輩。
「頑張れ-、っ格好いい後輩っ笑」
❦ℯꫛᎴ❧
切なき音よ 帰ってこい
あとがき
最後まで読んで頂きありがとうございました!約10000文字以上書きました、、。
今回の物語、「響けユーフォニアム」さんにめっちゃ影響されちゃいました、、✨️
今、めちゃくちゃ流れてくるんですよ、!!
気になっちゃうじゃないですか、影響されました。
やっぱり吹奏楽部って大変だけれど、1番青春かましてるんじゃね?って思います。。
そして、最終的に、自分でも物語の区切り点見つからなくて変になってしまいました、。
これがいつものルーティンですね。
ではでは、!次の物語で