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月下美人

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月下美人

3 - 第3話 「危険な快楽」

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2026年03月08日

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※花咲病の解説についてはオリジナルの要素が含まれています



「おはよ、!」

あぁ、ヤバいな、あれから吐き気が収まらなくて、水すらも飲めてない。…今日のレコ、失敗しないと良いんだけど、


「おはー」

いつもと変わらずに平坦な返事を返してきたのはwki。いつも来るのが早いのは僕だが、今日は珍しくwkiが一番みたいだ。


「mtkはまだ来ない?」

「うん。…先出ちゃったからわかんないけど、多分ちょっと遅刻してくると思う。」

「おけ。じゃあ練習してよーっと。」


…wkiと居る時は大丈夫だな…問題はmtkか。…どうしようもないよな、




「っごめん!遅れた、おはよ、!」

「おはー」

「おはよ、!ッ…!」


あ、これ、やばいやつだ。トイレ行かないと、


「ッちょっと、レコの前にお手洗い行ってくるね、!」

「「はーい」」





「っう゛、ぐ、ゲホ、ッゴホ、」

やだ、吐きたくなんか無いのに。…なんで僕がこんなことに、


「ッ、おぇ゛、ッ」


フワ、


あぁ、もう嫌だ、…レコ中は、耐えるしか無いか。……よし、行くか。



「ごめん、!おまたせ!」

「はーい」

「じゃあ始めよっか。…じゃあwkiから。」

「…よっし、」


レコはwkiからか。…良かった。

…?あれ、珍しくwkiが注意されてる。…え゛、もしかして今日、mtk機嫌悪い感じ、?

…あ、wkiが泣きそう。…mtk、レコのときだけ辛辣になるからなぁ、それだけ命かけてるってことなんだろうけど、


「もう良い。先にryoちゃんにやってもらうわ。」

「ッ……分かった。呼んでくる。」


「ryoちゃん…次だよ、」

「wki…大丈夫、?」

「…大丈夫だよ、ryoちゃんも頑張って、」


…wki、大丈夫じゃないな。…そんな泣き腫らした眼で言われても、……よし、僕がwkiの分まで頑張るしか無いよね。


「じゃあ始めます。」


〜♫、


「あ、」

やばい、ミスった。


「…ryoちゃん、練習してきた?…wkiは練習してきたって言い張ってたけど。」

「した。練習はちゃんと。」

…あー、気持ち悪くなってきた。…mtkの前じゃ吐けないだろ。


「それにしては、全然出来てないけど?…もう一回お願いします。」


〜♪、…


「ッ、」

気持ち悪い。…吐きそう。でも、言えない、


「…はぁ…また間違えたね。…ホントに練習してきた、?」

「ッ、してきた、よ」

気持ち悪さに思わず顔をしかめる。


「なに、?…その表情。気分悪いんだけど。」

「っあ、ちが、ちがくて…」

ホントにそろそろ耐えられない、


「…mtk、一回お手洗い行かせて、」

「はぁ、?レコ中に?無理があるだろ」


mtkの言う通りだ。…だけど、今は耐えられそうにない。


「…ごめん、ッ」


レコーディング室から飛び出し、トイレへ走った。



「ッ、ゴホ、う゛、ぉえ゛…、」


ふわ、


「ryoちゃん、レコ。途中で抜けるとかありえないんだけど。」

「あ、…」

まずい、mtkだ。


「ッ、…ぅ゛ぇ、ゲホッ、」

「…早く。みんな、待たせてる。」

「ちょ、と待って…ッぉ、え゛…」

mtkは僕が吐いていることに気づいていないようだ。


「…はぁ、…開けるよ、?」

「え、ちょ、待っ、!」


がちゃ、


「え、」


あ、終わった。鍵、閉めてなかった、…これ、どう弁解すれば良い、?…どうしよう、


「なにこれ…花、?」

「ッ!mtk、絶対触れないで!」

「っえ、ご、ごめん…」


珍しく声を荒げた僕にmtkは驚いている。そんな中、またもや吐き気が襲ってくる。


「ッ、ごめ、」

「え、ryoちゃん…?大丈夫、?」

「…ぅ゛、ぉえ゛、」


ふわり、


「え。…花、吐いた、の、?」

「…、」

まずい、バレてしまった。


「…忘れて、…僕は大丈夫だから。」

大丈夫じゃないけど。…でも今はとにかく、忘れて欲しいのだ。


「大丈夫じゃないでしょ。」

「…大丈夫だよ。」

そう言って、僕は笑った。…きっと、酷い顔をしていただろう。


「…今日はもう家帰りな。…体調、良くないんでしょ。」

「…分かった。ありがとね。」

僕はmtkの脇を通り抜け、足早に荷物を取り、家へと向かった。



「は、ぁ、」

どうして。こんなことに。…これから、どうすれば良い、?

…花咲病、調べてみるか。


【花咲病】

片思いや、心の奥底の感情を拗らせることでなる病気。

体から花が生えてきたり、花を吐いたりする。その花の種類は場合によって違い、その花の「花言葉」が心の奥底の感情と一致していることがあると言われている。

両思いになる、またはその感情が薄れ、失くなることで白いユリが吐き出され、症状が止まる。


「…花言葉、」

僕が吐いた花は、…月下美人、

月下美人の花言葉は、…危険な快楽。…、これが、僕の心の奥底の感情と一致している、って?…確かに、mtkと付き合っていても、そういう恋人らしい行為はあまりしてこなかった。でも、僕もそれに不満は抱いていなかったはずだ。…なのに、?

…あぁ、そういうことか。…僕が求めてるものの本質は快楽ではなく、「寂しさ」を埋められるもの。…夜に飲まれないように、寂しさを紛らわすために。…心底、面倒臭い体だと、思った。…このままではバンド活動にまで影響が出てしまう。…要は、寂しさを消すことができればこの症状は止まる、ということだろう。…でも、二人には迷惑をかけられないから。

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