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 もっと、お金が欲しい!もっと翔馬を助けたい…そればかりを考えるようになった。
3万5万と送金していくうちに、貯金残高がどんどん減っていく。でも、翔馬を助けたい。
 ___そうだ!仕事量を増やそう!
 単純に勤務時間を増やすことで、給料を増やそうと考えた。もともと翔馬にはフルタイムで働いていると嘘をついていたし、子どもたちも手がかからなくなってきたから問題はない。
 「フルタイムにしたいのでお願いします」
 始末書を書いて間もないのでマネージャーがどんな顔をするか少し気になったけど。
 「そうね、これから繁忙期になるからちょうどいい。よろしくね」
 「はい、ありがとうございます」
 時給制の仕事なので給料計算は簡単だ。ただ、社会保険や税金が少し上がってしまうのは残念だけど。
 「ねぇ、駒井っち。フルタイムにしたの?働くねぇ」
 「え?うん、頑張らないとね。これからどんどんお金が必要になるし」
 それが翔馬のためだとは言えないけど。
 「教育費にもオシャレにもお金かかるもんね」
 「あ、うん」
 由香理はいい人だけど、あまり深入りされたくはない。適当に返事をして離れる。
 
 昼休みになってスマホを開いた。翔馬からのLINEが届いていた。
 《ミハル!仕事頑張ってる?俺は俺を嵌めた奴を探し回ってるよ。なんとかして金を取り返すつもりだ》
 〈見当はついてるの?〉
 《多分…東京へ逃げてると思う。だから追いかけるつもりだ》
 〈追いかけるってどうやって?〉
 《新幹線、と言いたいとこだけど金がないから高速バスにするよ。なんとかそれくらいの金はあるし》
 ___またそうやってお金を使ってしまうの?
 言いたかったけど言えなかった。私が渡してるお金は生活費としてのものなのに。
 《あ、そうだ!スマホ代金の請求が来てたんだ。二万お願い!》
 〈え?一昨日送ったばかりだよ、もうないの?〉
 東京なんて行かなければそれくらいはあるはずなのに。
 《そっか。無理ならいいよ。しばらく連絡できなくなるかもしれないけど、我慢してね》
 ___それはダメだ
 〈あの、この前も言ったけど。お金は返してもらえるんだよね?私もそんなにないから〉
 《当たり前だよ。きちんと解決したら俺は元の社長に戻れるんだから。そしたら金ならある。すぐに返すよ。それまでの間だけ、頼むよ。こんなこと頼めるのはミハルしかいないんだよ》
 ___返してくれるのなら、いいか
 明日は久しぶりに会える。翔馬の住む街まで私が出かけていく。スマホ料金の二万も持って行かなければいけないことになったけど。
 〈スマホ料金、ちゃんと支払ってね〉
 《わかってる。そうしないと愛しのミハルと連絡もとれないからね❤️》
 最初の10万は返さなくてもいいと、私が言った。その後からは貸すと言った、問題が片付いたら返してくださいと。書面のようなものはないけど、その代わり口座に振り込んだ履歴を残してある。この金額だけはどうしても返してもらわないと。
 帰りにスーパーに寄って自分の貯金残高を確認したけど、628円だった。やはりもうなかった。
 ___仕方がない、いつかちゃんと返すから
 夫名義の生活費の口座から5万おろした。すごく悪いことをしている気分になる。
明日会ったら、借金だという約束をちゃんと取り付けておこう。もう一度スマホを開いて、LINEを送る。
 〈お金を渡せるのはこれが最後だと思う〉
 《うん、わかった》
 ___あれ?わりと簡単に引き下がる?
 《明日は会えるんだよね?》
 〈うん。11時17分着の予定だから〉
 《待ってる。愛してるよ、ミハル》
 お金がなくなった私のことは、もう必要がなくなるのかもしれない。どこか頭の隅でそう気づいている。
 でもやっぱり会いたい。