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耀聖(ようせい)
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声良の書庫
35
カエデが羽根を空中に走らせる。
宙に浮かんだ術式から、小さな炎が次々と飛び出していき、等間隔に整列。真っ暗な空間に小さな灯りが灯っていった。
「ここが資料室です」
埃とカビの匂いが充満している広い空間に、古びた書物や歴史を感じさせるような美術品らしきものが乱雑に置かれていた。
「色々な意味で凄いわね……」
「すみません。ここは先代の王により、限られたものしか入室を許されていなかったので。私もここまで酷いとは思っていませんでした……」
「自由に使っていいのか?」
「一応私かスズのどちらかが同行するという条件にはなりますが……ティアシャ様が先ほど仰ったよう、自由にお使いください」
そう言い、カエデは床に散らばっている書類を拾い上げ、整理を始めた。
「私は整理をしています。終わりましたら声をかけてください」
「私も精霊に関係ありそうな本探してこようかな」
そう言うと、カエデとエラリスは部屋の奥へと消えて行った。
「俺たちも、とりあえず魔女に関係しそうな本を集めてこようぜ」
「そだね。上でルシオとアルテアも待ってるし。とりあえず本の選別を先にしちゃおうか」
小さく頷き目を合わせた2人は、床に散らばってた本を一冊ずつ拾い、ペラペラと捲りはじめていった。
⸻
本を読んではしまっていくエラリスと、一冊ずつ丁寧に本をしまっていくカエデ。
「あなた、精霊術師?」
「そう」
視線を本に向けたまま答えるエラリス。
「なにか精霊と契約する目的があるんですか?」
「目的?」
本を読む手を止め、カエデに視線を移すエラリス。
「精霊術師は珍しいもので。力を手に入れたいとか、歴史に名を刻みたいとか……魔女を倒したいとか……何か目的があるのかなと思いまして」
「おばあちゃんが精霊術師だったんだよね」
「はい。そう仰っていましたね」
「でも、ほとんど会ったことがないから、どんな人だったのか知らないんだ」
「??」
「ゼフィリアからおばあちゃんの冒険の話を聞いて、少しドキドキしたの」
「……」
「私の知らない、おばあちゃんの話を精霊達が知っているから、もっと色々おばあちゃんの話を聞きたい……って言うが理由なのかな」
「……」
本をしまいながら、ふと笑うカエデ。
「あと、おばあちゃに負けたくない。もっと集めてやるっていうのもあるかも」
「……そうですか」
先ほどよりも少しだけ大きく笑ったカエデが、手に持っていた何冊かの本の表紙に一つずつ目を通す。
そしてそのうちの一冊をエラリスへと渡した。
「見つけられるといいですね」
「ん。ありがと」
”魔法と精霊術の違い”と書かれた本をカエデから受け取るエラリス。
自分が手にした本と合わせた2冊の本を手に持ち、フィニス達の方へと戻っていった。
⸻
玉座の間
「お、戻ってきたようじゃな」
地下の資料室から戻ってきた4人に気づいたティアシャが、フィニス達へ視線を向ける。
「お、お疲れさん。何か見つけたか?」
その声に反応し、ルシオとアルテアも視線を向けた。
「どうだろうなぁ……いくつか本を持ってきたのと、試したいことがあったから戻ってきたけど。そっちは?」
手に持った資料を軽く持ち上げて見せた後、フィニスがルシオ達の手元に視線を移す。
「無事に終わりましたよ。あとはこの書類をヴォルガムに送り、玉印が押されれば無事に両国間の情報共有と復興支援……つまり、同盟が結ばれることになるはずです」
「うぬ。して……試したいこととは何じゃ?」
「あぁ、それはね」
そう言った後、エラリスの方を見るニティア。それに釣られて全員の視線がエラリスへと集まった。
「まずは直接聞ける相手に話を聞こうと思ってな」
フィニスの言葉に、小さく頷き、両手に持った本を床に置いたエラリスは、両手に魔力を込め始める。
うっすらと手が光出した片方の手には風が。もう片方の手には水が集まり始めた。
「なんじゃ……?!」
「あぁ……なるほど」
「また撫でさせてもらえるでしょうか……」
エラリスの手から光が消えた瞬間……
ポポン!
『どうしたの?呼んだ?』
『どうした?呼んだか?』
両手の先に現れたのはゼフィリアとリヴァレー。
『うわっ……リヴァレーもいるじゃない……』
『うるさいと思ったらゼフィリアか……』
『はぁ〜!?!?』
目が合うや否や、さっそく言い争いを始める2人に、苦笑いをするフィニス達。そんな中、1人だけ目を大きく見開き、2人を食い入るように見ている存在……
「おぉ!これが精霊か!!思ったより可愛らしい姿なのじゃな!!」
目を輝かせたティアシャだった。
『あ!フィニスー!!』
そんなティアシャの事など気にも止めず、ゼフィリアがフィニスに気づき、飛びかかろうとするも……
『うげっ』
エラリスに襟を掴まれる。
『ゲホッゲホッ……何するのよ……』
『全く……もっと精霊として威厳を保ってもらいたいものだ……』
そう言うリヴァレーは……すでにアルテアの腕の中に収まっていた。
「2人にお願いがあって呼んだんだよ」
襟を掴まれたままパタパタと羽根を動かしているゼフィリアがエラリスを睨みつける。
『なによ……他の精霊のことなら話せないわよ』
「違う、その話じゃないんだ。お前達はエラリスのおばあちゃん……エルシアとも契約してたんだろ?」
フィニスが2人に尋ねる。
『あぁ。してたぞ。それがどうした?』
アルテアに撫でられながらリヴァレーが気持ちよさそうな顔で答える。少しだけ羨ましそうな眼差しでアルテアを見ているニティアの頭を軽く叩いて、フィニスが続ける。
「黒い魔女。ノクスと戦っただろ?その時の魔女について、話が聞きたいと思ってさ」
「もちろん、それよりも前に魔女と戦った経験があるんだったら、その時の話も聞きたかったのよ」
叩かれた頭を摩りながらニティアが精霊達に視線を向けた。
『私たちも、戦闘中ずっといたわけじゃ無いわよ……?』
「それでも構わない。聞かせてくれ」
『……』
チラッとリヴァレーを見るゼフィリア。リヴァレーもその視線に気付いたのだろう。気持ちよさそうに細めていた目をゆっくりと見開いた。
『いいぞ、話でやる。ボクはエルシアの時だけじゃ無い。何度か魔女との戦闘で呼び出されているからな』
コメント
1件
ああ、このエピソード、すごく良かったです……! エラリスがおばあちゃんのことを知りたくて精霊術師になったんだって分かるシーン、じんわり来ましたね。それでいて「負けたくない」って活力にもなってるのが、エラリスらしい前向きさで好きです。最後にゼフィリアとリヴァレーが並んで現れるところ、思わず「おおっ」って声が出ました。ティアシャ様が目を輝かせてるのも可愛くて、和みました。魔女との過去の話、これからどう展開するのかすごく気になります!