蘭丸「はいっ、ここが僕の部屋だよ!」
軽やかな声に誘われて入った部屋は、まるで別世界だった。
透き通るガラスの照明、柔らかな白のカーテン、広すぎるベッドがひとつ。
晴明は思わず足を止めた。
晴明『……わぁ……』
蘭丸「びっくりした? この部屋、他の人には“無駄に広い”って言われるんだ〜」
晴明『そ、そんなことないです……すごく綺麗で……』
蘭丸はくすっと笑って、ベッドの端を軽く叩いた。
蘭丸「ほら、そこに座って? 立ってると落ち着かないでしょ」
晴明『あ、はい……失礼します』
ふかふかの感触に身体が少し沈む。
思わず肩に力が入るのを、蘭丸が見抜いたように首を傾げた。
蘭丸「ねぇ、そんなに緊張しなくていいのに〜。僕は君に酷いことなんてしない」
晴明『……っ、でも、僕……奴隷ですし……』
蘭丸「うん、制度上はね。でも、それって“誰かが勝手に決めた”ことでしょ?」
晴明『……え?』
蘭丸「僕にとって君は、ただの一人の人間”なんだよ。ここにいる限り、君は家族だから」
“家族”――
その言葉が胸に染みた。
誰にもそう言われたことのない自分に、蘭丸はあっけらかんと笑いかける。
晴明『……ありがとうございます……』
蘭丸「お礼なんていらないよ。あ、そうだ、ベッドひとつしかないけど、気にしないでね?」
晴明『えっ……じゃあ、僕は床で――』
蘭丸「やだやだ!そんなの絶対寒いって! 一緒に寝よ、僕の方があったかいから」
晴明『で、でも……!』
蘭丸「ん〜、じゃあこれは命令。家族としての!」
晴明『……ふふ、はい』
布団の中に滑り込むと、蘭丸の体温がじんわりと伝わってきた。
近くで聞こえる心音が、不思議と心を落ち着かせる。
蘭丸「ねぇ晴明君、明日はみんなを紹介してあげる。白虎ちゃんとか、命とか、明君、暗くん……とまぁ色々」
晴明『みんな優しい人たちなんですか?』
蘭丸「……まぁ、ちょっと口が悪い人もいるけどね。でも僕がいるから大丈夫」
晴明『……はい』
(……家族……か)
その言葉を何度も胸の中で繰り返しながら、晴明はゆっくりとまぶたを閉じた。
――夜。
目を覚ますと、蘭丸の穏やかな寝息が隣から聞こえる。
静かに起き上がり、喉の渇きを癒そうと廊下へ出た。
廊下の先、月明かりに照らされた影が一つ。
??「ん?お前は例の、、……。 」
低く、けれど優しい声。
黒の燕尾服を着た青年が、澄んだ青色の瞳の人が仏頂面で此方を見ている。
晴明『あっ……えっと、晴明です。ごめんなさい、水を飲もうと思って……』
命「別に謝らなくていい。」
そう言って、静かに歩き出す。
その仕草はどこか貴族のようで、夜気の中に淡い香りが漂った。
命「……なぁ…お前と、俺どっかで会ったことがあるか?」
晴明『え……? 僕……ですか?』
命「……いや、何でもない……」
その言葉の意味を問う前に、彼は少し微笑んだ。
命「部屋まで送る。……夜の廊下は危ないから」
―――
こうして、晴明の“最初の夜”は静かに更けていった。
佐野の口調が分からん、、どうしよう、
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