テラーノベル
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今回くっそ短い!!
春。
あの日と同じ、桜が咲き始める頃。
大学の卒業式を終えた帰り道、いふはひとり、あの川沿いの道を歩いていた。
肩にかかる桜の影。
風の匂い。
すべてが懐かしくて、少しだけ切なかった。
「……久しぶりやな。ほとけ」
つぶやいた言葉は、風に溶けた。
もう、何年も前になる。
“天使”の彼が、自分のもとを去っていった春。
それでも――いふは毎年、こうして桜を見に来ていた。
忘れないために。
そして、どこかでまだ“彼”が生きているような気がして。
「……あれから、俺も変わったで」
胸元にぶらさがった手作りのお守りを、そっと握る。
指先が震えていた。
まるで何かが“近づいている”ような、胸騒ぎがあった。
そのときだった。
「……いふ?」
聞き慣れた声が、風に混じって届いた。
その声に、いふは反射的に振り返る。
――そこに立っていたのは、紛れもなく“あの人”だった。
淡い青い髪。
少し背が伸びて、顔つきは大人びていたけれど――
間違えるはずがない。
「……ほとけ……?」
「……うん。……ただいま、いふ」
いふは、言葉を失った。
夢かと思った。
けど、その瞳は嘘じゃなかった。
「……なんで、お前……なんで今、ここに……」
ほとけは、ゆっくりと歩み寄りながら言った。
「天界での記憶は消えかけてた。でもね、ずっと君の声だけは、どこかで聴こえてたんだ。ずっと、胸が苦しくて……それで、気づいたの。僕は、君に会いに戻らなきゃって」
「……嘘やろ」
「嘘じゃない。僕、本当に……会いたかったんだ。君に」
涙が頬をつたう。
いふは走るようにして、ほとけを抱きしめた。
もう、言葉なんていらなかった。
ただ、そのぬくもりが、確かに“本物”だと伝えてくれた。
「……おかえり」
「……ただいま」
桜の花が、ふたりのまわりに舞う。
何度離れても、何度時を越えても――
ふたりはきっと、何度でも出会う。
それが、たとえ天使と人間でも。
心が惹かれ合った奇跡は、
必ず、また重なり合う。
―再会―
続きが読みたい方へ…
この“再会”のあと、ふたりはどんな日々を過ごしたのか。
現代で生きる“元天使”と、彼を信じ続けた青年の穏やかな暮らしや、
ふたたび迫る“選択”のとき――
コメント
2件
再会だぁ!感動だぁ!