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アルメリア、あと少しですわ。シルに会うため、これ以上シルのような不幸な子どもたちを増やさないために貴女は頑張ってきたんでしょう? しっかりなさい。本来の目的を見失ってはいけませんわ。


そう自分に言い聞かせると深呼吸し、残りのお茶を飲み干した。


そのとき、首にかけていた鍵がドレスの内側に引っ掛かり、紐が首を擦った。


「痛っ! もう、これいつも引っ掛かってしまいますのよね」


そう言って、ドレスの内側に引っ掛かかった鍵を外していると、不意にあの箱の中に入っている書類全てに目を通していないことを思い出した。


先日書類を読んだときは、ルクが死んでしまっているという事実に動揺してしまい、呆然として続きに目を通す余裕などなかったが、重要な情報が書かれている可能性が高く、すぐにでも読んだほうがよいだろうと思った。

アルメリアは今日の執務を終えたら、すぐに屋敷に戻り書類の確認をすることにした。





幾分スッキリした面持ちで執務室へ戻ると、リカオンが出迎える。


「お気を煩わせてしまった僕が言うのもなんですけど、先程よりはお嬢様の顔色がよくなったように思います」


「ありがとう、とりあえず落ち着きましたわ。今日の残りの執務に集中しますわね」


アルメリアは笑顔でそう答えた。


屋敷に戻るとアルメリアはすぐに海の間へ向かい、箱を取り出すと鍵を開けた。そして、箱の中の書類を手に取り読んでいなかった残りの書類に目を通す。


書類にはルキウスが孤児院から逃げたとき『宝石』のデポに関する書類が持ち出され、その書類を取り戻そうと手を尽くしたが見つからずロストしてしまったと報告されていた。

そのため早急に『宝石』を『ヨベルのボワ』から『ヨベルのネ』のデポへ移し、『ヨベルのボア』のデポから速やかに撤収することが指示されている。


アルメリアは貿易を少し勉強していたこともあり、デポと言う言葉が一時保管する倉庫を指していることはわかったが『ヨベルのボワ』も『ヨベルのネ』もなんのことだかさっぱりわからなかった。


だが、そうして文面から『宝石』とは子どもたちのことであり、その子どもたちを何処かへ移動させるよう指示していることだけは理解ができた。


『ヨベル』とはもしかしたら教会の専門用語なのかもしれない。と思い、アルメリアはまずはルーファスに相談しようとしたが、ルーファスは現在ダチュラと接触している。

ルーファスを何度も呼び出せば、アルメリアと繋がりがあることが知られる恐れもあり、それは悪手だと考えた。

なので、まずは教会派閥であるリカオンに明日この言葉を知らないか聞いてみることにして、その書類と箱を隠し金庫へ戻した。






翌朝、城内の執務室でリカオンに尋ねた。


「『ヨベル』ですか? さぁ、僕にもちょっとわかりかねます。僕は教会派と言っても、ご存知の通り父とはあまり良好な関係ではありませんでしたので、教会にも熱心には通っていませんでしたから。役に立てなくて申し訳ありません」


「そうなんですのね、仕方ありませんわ」


そう答えると、誰にたずねればよいか考え、もう一人教会派閥の人間に知り合いがいたことを思い出す。しかも彼に会いに行っても誰にも怪しまれることはない。


「リカオン、ルーカスに会いたいからスパルタカスに連絡を取ってもらえるかしら? 私がいつもの見回りのついでに兵舎に寄るとから、その時間に合わせてもらえると助かりますわ」


「なるほど、フィルブライト公爵令息ならばなにかわかるかもしれませんね、わかりました。連絡して予定を調整いたします」


そう答えると、リカオンは一礼して執務室を出ていった。


昨日の今日なので、アルメリアはリカオンにどう接すればよいか戸惑っていたが、さほど変わりなく接してくれているので、少しほっとした。


そうして気を取り直すとその日の執務に取りかかった。






スパルタカスから、自分は護衛があるので会えないが、ルーカスに伝えておくのでいつでも訪ねてきてください。と返事があり次の日兵舎へ寄ることにした。


兵舎へ着くと、見張りをしていたカーマインがアルメリアを見つけてすぐに挨拶をした。


「お嬢様、おはようございます。今日こちらにいらっしゃることは統括から伺っております。部屋を用意しておりますので、こちらにどうぞ」


「ありがとうカーマイン。部屋まで用意してくれましたのね? 食堂でもよかったですのに」


そう言うアルメリアを案内しながら、カーマインはわずかに振り向きアルメリアに笑顔で言う。


「これぐらいのことは当然のことです。それに食堂にお通ししたら、それこそ兵舎にいる兵士全てが食堂に押し掛けて、話どころではなくなってしまいますよ」


「それも楽しいかもしれませんわよ」


そう答えると、横にいたリカオンが口を挟む。


「お嬢様、カーマインの言っていることは冗談ではありませんよ。ご自身が、兵士たちからも愛されている存在だということをお忘れなく」


「私が愛される存在だなんて、そんなことは……」


そう言ってリカオンを見ると、リカオンが真剣な眼差しでじっとアルメリアを見つめてくるので、思わず黙った。

そこでカーマインが言う。


「いえ、オルブライト子爵令息の仰ることは本当なんですよ」


アルメリアはどう返せばよいかわからず、話題を変えることにした。


「ところで、ルーカスは元気にやっているかしら」


「はい。奴を統括が引き抜いてきたと聞いたときには、そんなこと言ってコネで入ったんじゃねぇのかって思ってたんですが、剣術も体術もみるみる上達して、こいつぁただ者じゃねぇってなりましてね。みんなも驚いてますよ。それにしても、統括だけじゃなくお嬢様とも知り合いとはねぇ、あいつは何者なんです?」


「以前私がお世話になった方の、ご子息でらっしゃるの。スパルタカスとも知り合いとは知りませんでしたけれど」


これは、スパルタカスとも相談して決めたルーカスの設定だった。


「そうなんですか、お嬢様とも知り合いとはねぇ。それにしても統括はよくルーカスの素質を見抜いたもんです」


そう言って笑った。


カーマインは、こういった他人を評価するときに世辞を言うような人間ではない。ルーカスは本当に周囲から一定の評価を受けているようだった。


部屋で椅子に腰掛けルーカスが呼ばれてくるのを待った。


「お久しぶりです。わざわざここまでお越しいただいてありがとう御座います」


日に焼けてたくましくなったルーカスは、少し前まで歩くこともままならなかったあの頃とだいぶ雰囲気が違っていた。

悪役令嬢は救国したいだけなのに、いつの間にか攻略対象と皇帝に溺愛されてました

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