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夜中2時。タコは真面目らしく私に睡眠の必要さを説いて先に寝てしまった。
やりたいことがあるわけでもなく、探すつもりはない。ただ手持無沙汰。秒針だけが部屋に響いている。
じっと隣で寝ているタコを眺めていると、玄関の扉が開き廊下のスイッチが押される音がした。
別に彼が何をして帰ってきても私には関係ないが、布団からでてカーディガンを羽織る。
部屋から出るとちょうど目の前で鉢合わせた。
「あっ」
彼は何故か酷く驚いた顔をして私を見た。
何故焦っているのだろうか。私が起きていてはまずかったのだろうか。
「…。おかえり」
「ただいま。起きてたんだね、駄目だよ寝なきゃ」
そう簡素に私を咎めると、彼はくしゃくしゃと揉むように私の頭を撫でそそくさと浴室へ向かった。
触られてもなんとも思わないが、彼はあのタコと違い頭を撫でてくる頻度が高い。
理由は正直はっきりと分からない。タコが私に向けているものなのか、私がタコに向けているものなのか、それとも別か、はたまたもっと別か。
興味がないわけじゃないが、聞きたい感じでもない。今は。
別に嫌いじゃない。だが、可愛がってくれるのに対してどういう反応をしていいか分からないまま、ヨウからの感情を見て見ぬ振りをしている。上手く受け取れていない。
「おっ、ヨウじゃん。後ろのは新しい彼女?てか前シーズンまたランキング載ってたよな」
「あぁ~そんなやってなかったけど積み重ねがあるおかげかな。そっちこそ俺抜かしてったじゃん」
「よく言うぜ、お前のほうが絶対つえーのに。オープンばっかやってないで俺らにも構ってくれよー」
袋を何度も吸い込みかけながらずるずる飲み終わりのジュースを啜り目の前の会話を聞き流す。
時折これ見よがしにこちらを見られたが、エクスロ君の後ろに隠れているので知らないふりを続行。やはりリンゴ味は大抵美味しいものだ。
いよいよ袋が空になり売店に戻って袋を捨て、後ろを振り返ると話が終わったエクスロ君が私を追いかけてきていた。
「ごめんね、フレンドにオンラインになってるの見られたみたい」
そう苦笑気味に話すとエクスロ君は手を伸ばし、私の背後から手が見えないように撫でてきた。
多少のぞわぞわと背筋を這う恐怖と、ほんのりと胸が灯るような感覚に首を震わせ何ともないと返す。
それよりかは、先ほどの男性の言葉のように、私のような底辺プレイヤーなどに絡まず意義あるバトルをしたほうが良いと思うのだが。最近の彼からは以前のようなバトルに対する熱意が感じられない。否、以前がおかしかったのだが。
「前みたいに行ってこればいいのに」
「えぇ、冷たい事言うなぁ。俺ムイちゃんと遊びたいのに」
よくもまぁそんな口説き文句が出てくるなと冷ややかな視線を送ると、エクスロ君は笑うような声色に反し寂し気な表情をした。
何故か私は罪悪感を感じた。
「まぁ…なんていうか。順位とは別に楽しみを見つけたんだよ」
「Xマッチに行く頻度が減るくらい?」
「うん。ムイちゃんたちにもっと時間を使いたいなぁって」
「どうして?」
「…うーん、これは話が振り出しに戻ったね」
また苦笑するエクスロ君に首を傾げるしかなかった。
何も振り出しに戻っていないし、疑問は生まれるばかりなのだが。
バトルがすごい強い印象。その分顔も交友が広いと感じている。噂でランキング入りの話を聞くが、本人の口から一切語られないので真偽どころかヨウの話かすら怪しいと半信半疑。一方自分のことはお荷物だろうと思っているので、何故バトルの話を聞いてくれるのか分かっていない。
ムイ→ヨウ エクスロ君。ごく稀にヨウくん