それから数日間、悠真とは連絡を取らなかった。
正確に言えば、取れなかった。
悠真の「好きだけど、これが正しいのか」という言葉が頭から離れなくて、どう返事をすればいいのか分からなかった。
学校の帰り道、玲奈が隣で私の顔を覗き込んだ。
「華恋、大丈夫?」
「……大丈夫、なわけないよね。」
私は苦笑しながら答える。玲奈は何も言わず、そっと私の手を握ってくれた。
**《悠真》「今日、電話できる?」**
そのメッセージが届いたのは、夜の9時過ぎだった。
私は深呼吸して、震える指で通話ボタンを押した。
**「……もしもし。」**
**「華恋、久しぶり。」**
悠真の声はいつもと同じだった。でも、どこか優しすぎて、それがかえって悲しかった。
しばらく沈黙が続いた後、悠真が静かに口を開いた。
**「俺たち……別れようか。」**
心臓が大きく跳ねた。
分かってた。そうなるんじゃないかって。でも、実際に言葉にされると、こんなにも苦しいんだ。
「……それが、悠真の出した答え?」
**「……俺たち、このまま付き合ってても、どんどん苦しくなる気がするんだ。」**
「でも、私たち、好きでしょ?お互いに……まだ好きでしょ?」
**「好きだよ。だけど、それだけじゃダメなんだって、最近思うんだ。」**
悠真の声は震えていた。でも、それ以上に優しかった。
「……わかった。」
自分でも驚くくらい、あっさりと答えてしまった。
「ごめん、華恋。」
「謝らないで……私も、ちゃんと考えてたから。」
本当は、まだ別れたくなかった。
でも、悠真が言ったことは正しい。
無理にこの関係を続けても、私たちはどこかで壊れてしまう。
「……悠真、ありがとう。」
「え?」
「付き合えて、すごく幸せだったよ。」
悠真は何も言わなかった。でも、電話の向こうで、彼が涙を堪えているのが分かった。
「さよなら……じゃないよね?」
私が最後にそう言うと、悠真は小さく笑った。
**「ああ。さよならじゃない。」**
通話を切った後、私は静かにスマホを置いた。
涙が頬を伝って落ちていく。止まらなかった。
「好きだけど……好きだけど……」
この選択が、正しいのかどうかなんて、今は分からない。
でも、今はただ、泣いてもいいよね——?
ーー続く。