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その後、育榮高校は2回戦、3回戦と勝ち進んだが、貴也の出番は訪れなかった。
そして、準決勝まで勝ち進み、その相手はインターハイ予選の決勝で負けてしまった、桐龍高校だった。
貴也はなんと、左ウイングフォワードとして、スタメンに選ばれた。
総監督からは、とにかく前線からハイプレスでショートカウンターも狙えるなら、狙っていけという指示が出ていた。
その指示を赤井が聞いて、さらに赤井が貴也に対して、もしボールを奪えたなら、スペースめがけてドリブルを積極的に仕掛けろというアドバイスを送った。
ついに運命のキックオフが鳴った。
貴也は、指示通りに得意のスピードとスタミナを活かして、相手にどんどんプレッシャーを掛けていった。
桐龍高校の選手はとにかく貴也のディフェンスを嫌がっていたが、すぐにガス欠になるだろうと、たかをくくっていた。
しかし、桐龍高校の選手の予想に反して、貴也は息を切らさず、走り続けていた。
前半は互いに守備重視の戦術だったため、膠着状態が続いている試合展開だった。
後半戦が始まり、引き続き貴也は前線からのディフェンスをサボらず、走りまくっていた。
そして、後半20分頃、ついに桐龍高校のディフェンダーが一瞬集中力を欠けてしまい、トラップミスをした瞬間、貴也がボールを奪い、ドリブルを仕掛けた。
相手ディフェンダーもすぐに貴也のドリブルをディレイさせようとしたが、貴也はスペースが空いているのを見つけて、裏街道ドリブルをしかけて、一気に相手を抜き去った。
あまりの貴也の初速の速さに、相手ディフェンダーは全くついていけていなかった。
少し角度があるものの、貴也とキーパーが1対1となり、貴也はとにかく思いっきり蹴り込むことを意識した。
あまりコース自体は狙っていなかったものの、たまたまゴールキーパーのニア上をぶち抜いた、ゴラッソとなった。
少し運が良かったゴールだったものの、動き出しからゴールまで素晴らしいゴールで、貴也は少し茫然自失となっていたものの、ベンチ含めて育榮高校のメンバーは喜びを爆発させた。
その勢いままに、育榮高校はボールを支配し、攻勢を強めていった。
貴也も同じように動き、チャンスを伺い、後半ラスト5分のとき、味方のクロスボールに対して、相手ディフェンダーがクリアミスしたところを貴也がセカンドボールを拾い、そのままシュートを打った。
このシュートもたまたま相手ディフェンダーの体に当たり、方向が変わったことで、ゴールに吸い込まれた。
貴也は2点目も奪い、そのまま終了のホイッスルが鳴り、貴也はこの試合のMVP的活躍となった。
貴也は試合終了の挨拶終了が終わり、チームMTGも終わると、一目散に赤井の元へ駆けつけた。
貴也「赤井さん!今日は今までの練習の成果を出せたような試合にできました!本当にありがとうございます!」
赤井「そうだな、まあシュート自体は、たまたま入った感じはあるけど、その前の動き出しやポジショニング、そして前線からの守備は本当に良かったと思う」
貴也「とりあえず、次の決勝も出られるように準備していきたいと思います。」
貴也と赤井は一定の満足感は得ていたものの、しっかりと気持ちは次の決勝戦へ向いているのだった。