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ルミチアさんからのリクエストです
国連×日本がメインですが、日本愛され要素あり
中々納得のいくものが書けず、遅くなってしまい申し訳ございませんでした
リクエストいただきありがとうございます
そして皆様、残り数十分ですが、良いお年を
会議は、いつも通り荒れていた。
怒鳴り声、責任転嫁、過去の蒸し返し。
日本はその中心で、声を荒げる国と国の間に立ち続けている。
「落ち着いてください。今は責任の所在より、被害を広げない方法を…」
言葉を選び、主題を戻し、場の調子を整える。
誰かが苛立てば先回りして宥め、
衝突が起きれば、緩衝材となり意見の角を取る。
その甲斐あって、“問題は先送り”という形で一応の決着がついた。
息を一つ吐いた日本は静かに頭を下げる。
「それでは、失礼します」
背筋も伸び、足取りも安定している。
誰が見ても、いつも通りの日本。
だが、ただ一人…国連は違った。
胸の奥で、鈍い痛みがジクジクと身を焼く。
「……同じだ」
かつて、世界中の衝突を背負い込もうとした頃。
私がやらなければ
私が間に立てば
そうやって……壊れかけた。
止められるまで止まらない。
頼られることを、断れない。
そして、壊れる寸前ほど、穏やかな顔をする。
日本は、あの立場に文句ひとつ言わない。
むしろ、当然のように引き受ける。
いつもの穏やかな笑みを浮かべて。
その姿は、記憶の自分と完全に一致している。
私は、救われた。
加盟国や他組織に権限を制限され、役割を分担されたことで。
けど、彼には救いの姿がない。
なら…今度は私が彼を助ける。
内線に手を伸ばしかけ、ふと止まる。
……違う。
今回は、話し合いじゃ足りない。
国連は、静かに立ち上がった。
*****
「日本。少し、私と話をしないか?」
静かなオフィスの一角。
華奢な肩に白手袋が優しく載せられている。
日本は一瞬だけ戸惑い、小さく頷いた。
「…ええ。少しだけなら」
「ありがとう。じゃ、行こうか」
立ち上がった日本を連れ、二人で部屋を去っていく。
その後ろ姿を、隣の席のドイツが怪訝な表情で見つめていた。
社長室。
重たい扉がギィと音を立て開き、閉まる。
そして、後ろ手に鍵をかける音が聞こえた。
椅子へ誘導することなく、国連は日本を見据える。
「日本、最近調子はどうだい」
「…いつも通り、普通です」
声の緊張が隠せていない。
「これは公的な面談じゃない。だから、ここでは正直になっていいんだよ」
「いつも通りですよ。少し立て込んでいるだけです」
日本が笑う。愛らしく、穏やかに。
…まただ。また、無理をしている。
「…ねえ。その”立て込み”は、君自身の問題かな」
その一言に、黒の瞳が一瞬見開かれた。
「え?」
「違うだろう。他国の衝突、感情、責任の押し付け。それを君が一人で受け止め続けている」
「現に、君の瞳が曇っている。君はもう限界なんだ」
国連の口元が、ゆっくりと弧を描く。
いつもより柔らかく、いつもより穏やかで…恐怖が背筋を駆ける。
「大丈夫。ここから先は、私が引き受ける」
一歩、音もなく近づく。
「……国連さん?」
「怖がらなくていい。君を傷つけるものは、もう来ない」
退く一歩に迫る三歩。
気づけば、踵に壁が触れ一人分まで距離が縮んでいる。
「争いも、怒号も、責任の押し付けも。君の柵を”外”に置こう」
国連は、静かに両腕を広げた。
まるで、愛しき者を迎え入れるように。
「おいで。私の腕の中は、平和そのものだよ」
嫌な程に優しい、穏やかな声。
日本の背中を、冷たい汗が伝った。
――違う。
これは、安心じゃない。
「……待ってください。それは……保護じゃない」
「いいや」
国連の笑顔は崩れない。
「保護だよ。君が自分で判断できなくなっているだけだ」
国連は、ほんの一瞬だけ言葉を切った。
まるで、それが最後の選択肢であるかのように。
「私には、”人道的保護のため、他国との連携を一時停止させる権限”がある」
言葉は静か。
しかし、その内容は穏やかではない。
「君を傷つける”世界”は、すべて遮断する」
「君は、ここにいればいい」
「誰も怒鳴らない。誰も君に期待しない。誰も、君を利用しない」
「……完璧な平和だろう?」
日本の心臓が、嫌な音を立てる。
「……僕は、一人で立っていたい」
震える一言に、国連の目が一瞬だけ細くなった。
「……それが、君を壊したんだ」
国連の腕が、ゆっくりと閉じられようとした、その瞬間。
ガチャリ。
静かな部屋に、不似合いな金属音が響いた。
「そこまでです、国連」
空気が凍り、国連の動きが止まる。
腕はまだ宙に浮いたまま。
「……EU?」
扉が開き、次々と人影が現れる。
「やはり、嫌な予感は外れていなかった。直接迎えに来るなどおかしいと思っていた」
「おい、日本。無事か?」
「……っ!」
真っ先に日本へ駆け寄るドイツとアメリカ。
思わず、庇うように立つ二人の背に回る。
それだけで、肺に空気が戻ってくる気がした。
だが…国連の視線は日本に向いたまま、
侵入者たちに、告げる。
「……邪魔をするな」
静かな声は明らかに”怒り”を含んでいる。
対して、ロシアが同じだけの低さで応える。
「邪魔だと?日本の意思を無視して、権限を盾に隔離しようとする。それが正当と言い張るのか?」
国連の暗い表情が、ほんの僅かに歪んだ。
「……理解できないのか」
ゆっくりと、口端が吊り上がる。
その表情は心底、憤っていた。
「私は、正しいことをしている」
「争いを起こし、責任を押し付け、感情を日本に処理させてきた君たちが、どれだけ日本を消耗させてきたか
……本当に、分からないのか?」
皆の顔が俯く。
己の非を突きつけられ、二の句が継げない。
行動を起こした国連と、起こさなかった自分たち。
その絶対的な差に、怯んでしまった。彼を非難できるのかと。
数分にも思える沈黙の中、苦い表情のドイツが重い口を開く。
「……その言葉は正しい。たしかに俺たちは日本に無理を強いていた」
「だが、それと囲い込むことは別だ」
「別じゃない」
力強く、キッパリと言い切る。
「危険因子は排除する。それが、安全管理の基本だ」
「それに…限界は、本人が一番見誤る」
「だから、日本を世界から保護し、私が代わりに判断する。それの、何が問題だというのだ」
あまりにも堂々とした姿に、中国の眉間のシワが深まる。
「……正気か?」
「正気だとも」
「君たちは、感情で否定している。私は、理念と事実で動いている」
「それを”狂気”と呼ぶなら、世界の平和も、同じだろう」
長い静寂。
その時、日本が小さく、口を開いた。
「……僕の意思を、無視しないでください」
「心配してくれてるのは、充分にわかりました。でも…あなたの”保護”は、一線を超えてる」
「それに、皆さんも反省しているでしょう。もう”保護”にこだわる必要はないはずです」
震えながらもしっかりと伝えられた拒絶。
重力のままに俯いた瞳に灰色の雲がかかる。
「私が、どれだけ考えたと思っている」
怒りは、もはや隠されていない。
「……私は、間違っていない」
正義と正義の衝突。
交わることの無い主張は説得の無力さを暗示している。
呆れたよう深い息を一つ吐いたEUが、一歩踏み出した。
「…これ以上は、越権行為です」
国連が、ゆっくりとEUを見る。
「……君まで、私を否定するのか」
「ええ。理念も権限も、”本人の拒否”を踏み越えた時点で無効です」
「私は、彼を守っている!!!」
声が、初めて荒れた。
「誰よりも彼の苦しみを理解しているのは私だ!!君たちじゃない!!」
本心を剥き出した叫び。部屋に響く波が心を深々と突き刺す。
「だからこそです。これ以上の介入は、組織として看過できません」
「……やめろ」
寸分の距離。星々が強く輝く。
「頭を冷やしてもらいます」
次の瞬間、鋭い衝撃が国連の後頭部を打った。
視界が揺れ、伸ばしかけた腕が、空を掴む。
純白の身体が崩れ落ちるのを、EUが無言で受け止めた。
「……実力行使とは、やりすぎじゃないか?」
「いいえ」
中国の言葉に、きっぱりと答える。
「これ以上、日本を”守る名目で壊させない”ためです。…過労は、判断を歪めます」
床に横たわる国連を一瞥し、EUは日本の方を向いた。
「大丈夫ですか?」
「……はい」
まだ僅かに声が震えているが、目ははっきりしている。
「俺が介入せずに済んで、本当に良かった」
「あれはもう、止めるしかなかったな」
アメリカとロシア。超大国ですら焦りを覚える勢い。
当事者である日本は複雑な表情で、苦い笑みを浮かべた。
「……助けてくれて、ありがとうございます」
その言葉に、EUはわずかに目を細める。
「当然のことをしたまでです」
「…さあ、帰りましょう。君がいるべきはここではない」
*****
静かな部屋のソファ。
横になっている国連が、ゆっくりと目を開けた。
天井を見つめたまま、しばらく動かない。
「……なるほど」
声は、思ったよりも落ち着いていた。
「強制停止、か。昔を思い出すな」
自分を抑え込んだ“処置”を、否定もしなければ怒りもしない。
ただ、受け入れている。
近くから足音がして、EUが視界に映った。
「目が覚めましたか」
「ええ。ご迷惑をおかけしました」
その言葉は、形式的でありながら、決して嘘ではない。
「……日本は」
「今は、休んでいます。“守られること”に怯えない場所で」
「……そうか」
睫毛が伏せられ、小さく息を吐いた。
「私は、間違ってはいない。愛する者を最悪の結果から守ろうとしただけ」
「……でも、彼の恐怖を見落としていた」
「それが、一番の問題です」
「分かっている」
荒ぶる自分を見つめるよう、遠くを眺める視線を落とす。
「私は“安全”を作ろうとした。でも、彼が求めていたのは“選べる余地”だった」
「……皮肉だな。平和の象徴が、誰かの自由を奪いかけるなんて」
乾いた笑い声はどこか泣きそうな震えを持ち合わせている。
一拍おいて、EUは再び国連を見据えた。
「だから、我々がいます」
「一人で背負わないための、組織です」
淡々と宣うそれは励ましのつもりなのだろうか。
国連は穏やかに笑った。今度はただ純粋に。
「……そうだったね」
ゆっくりと体を起こし伸びをひとつ。
空色の瞳は冬の空のように澄んでいた。
「今回は、退こう。日本の元へは行かない」
「“今回は”、ですか」
「ああ。彼が笑っているなら、それでいい」
「……今度は“正しい方法”で、守ってみせるよ」
その言葉は誓いのようで、同時に、執着の名残でもあった。
コメント
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あけましておめでとう御座います 新年早々神小説をありがとうございます! 国連×日本には貴方様の日本受け小説「愛の証」でハマりまして…貴方様の書く日本さんが心配すぎる余り行き過ぎた保護(という名の執着)をしようとする国連さんが大好きです! 日本さんもただ流されるだけでなくきちんと自分の意見を言っていて、その意見を尊重してくれる他国の皆様やEUさんがいたから国連さんも元に戻れたのだと思いました。