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以津真天
いつまで、いつまで
あの日からずっと耳に響く。耳を塞いでもずっと。逃げても逃げても逃げられないような。そんな言葉
*
実家の2階、カーテンを締め切って電気も消えた薄暗い部屋。その中にいるのは俺ともう1人のオレ
いつの日からか引きこもりになってもう何年も部屋から出てない。1日1回部屋の前に置かれる食事とまだ使えるスマホが俺が生きてる証拠になるほど
俺をそのままコピーしたようなもう1人のオレは何かとうるさい
「なんで外でないの?」
「聞いてるー???お散歩しようよ!いいとこ見つけたんだ〜!」
見目はそっくりだが中身がまるで違う。何かと外に連れていこうとするし返事をしないといつまでも話しかけてくる
いつまでもいつまでもいつまでも
夜になるとオレは静かになる。いつも同じとこを見て昼とはうって違う。「何してるの」と尋ねても一向に返事はなにも返ってこず、──夜は何を聞いても返事は無い──昼に聞いてもいつの間にか違う話題になっている
だけど俺が寝落ちるその瞬間にはいつも
「いつまで、いつまで」
と
そこから俺の地獄は始まる。彼の世とも此の世とも違うどこか。だけどここが一番の地獄だ。夢が覚めるまで逃げても逃げても耳の裏から中までこびりついてくるみたいに、いつまで、いつまで と聞こえてくる。どこかに走り去ることもできずにずっとしゃがんで耳を塞ぐだけ。俺のせいじゃない。俺のせいなんかのじゃないと言い訳をして
あの日あの時起きたこと全部が全部夢だったと現実なんかじゃないと目を塞ぐ
あいつの声、言葉、聞こえるもの全部が全部聞こえてなんてないと耳を塞ぐ
そんなことで無くなったりしないのに
俺が寝てる間にオレがいつまで、いつまで放って置くのかと囁いてくる
耳を塞ぎたい目を塞ぎたい。全部なかったことにしたい。あいつは、元気で明るい水色髪のあいつは転けてしまっただけだし俺もあいつを殺してない。場所が悪かった、打ち所が悪かっただけ
けど、こんな俺でも叶うことなら
あの日からやり直したい
目を覚ますと隣にオレがいてマンションの屋上に引っ張った。なかなかに高いマンションだからここから落ちたらひとたまりもない
*
人の少ない路地裏。人が居なくなったせいかガラスや鳥の糞が散乱しても掃除にくる人は誰1人として居ない。あいつが借金を押し付けたりしなければ、借金をつくらなければ。小突いた拍子につまづいて運悪く頭にガラスが刺さらなければ。 あの時すぐに誰かを呼んでいたら。あの時逃げずにいたら
オレはあいつが化けた怪鳥だ
いつまでもいつまでも放ったらかしにするのか、と夜な夜な鳴いている
いつまでもいつまでも、と
8⁄10