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『卒業』
🐒side
教室のドアを開けた瞬間、いつもと同じ声が飛んできた。
ペニ「DDおっそ、w」
振り返ると、もういつものメンバーが揃ってる。
窓際に集まってるその感じも、机の並びも、全部見慣れてる。
はずなのに。
「…今日で最後って、まじ?」
なんて、口に出してみても、やっぱり実感はなかった。
らいむ「なにそれ、急に寂しくなってるじゃん、w」
笑いながら、らいむが肩を小突いてくる。
その軽さにつられて、こっちも笑った。
「いやだってさ。今日でこうやって集まれんのも最後じゃん」
そう言うと、近くにいたしゃけが直ぐに反応した。
しゃけ「集まろうと思えば集まれない?」
「高校で集まれんの最後じゃん、同窓会とかあるけどさ〜。」
しゃけ「そうか〜、あんま実感わかないな…」
うみ「いやそれな?」
また笑いが起きる。
ペニ「てか今日ゲームしね?」
どる「えー!!やろやろ、ヴァロラントね!!」
「俺もやる〜」
たくみ「俺も〜」
うみ「俺もやる!!!( 大声」
「うっさ、w」
そんな適当な会話も、いつも通りで。
黒板には、寄せ書きが書いてある。
真ん中には『卒業おめでとう』と書かれている。
皆の寄せ書きが書いてある中、一つだけ“世界政府”って大きく書かれている。
その横に、変な顔とか、意味わかんない矢印とか。
KUN「ほら、写真撮るぞ〜」
先生の声に呼ばれて、皆が一斉に動き出す。
その中で、ふとだけど思った。
これが終わるなんて、まだちょっと信じられない。
🐟side
シャッター音が、やけに大きく響いた気がした。
ひま「ちょ、今の絶対ブレてるって!」
陰キャ「いやお前が動くからだろw」
KUN「動くなよ〜、もっかい撮るぞ〜」
そんなやり取りの中で、もう一度スマホが向けられる。
笑って、肩組んで、変なポーズして、いつも通りのはずなのに、画面の中のそれが、少しだけ遠く感じた。
終わりなんだな。
ふと、そんなことを思う。
この瞬間も、この顔も、この空気も。
全部、ちゃんと残るんだなあ…。
がの「しゃけ、何ぼーっとしてんの」
声をかけられて、はっと顔を上げる。
「いや、別に」
適当に返しながら、もう一度皆を見る。
DDは相変わらず騒いでて、うみにゃさんはそれに笑ってて、
かえるくんやとーますくん、らーばさんは三人で仲良く話してる。
陰キャ転生はちょっと呆れた顔しながらもちゃんと近くに居て、
できおこさんは、、少しだけ、後ろに居る。
それぞれの距離感も、立ち位置も、全部いつも通り。
…なのに。
KUN「次ラストな〜?」
先生が言ったその言葉に、少しだけ引っかかる。
ラスト。
たったそれだけの言葉に、やけに重く聞こえた。
レオ「ほらしゃけ、入って入って」
手を引かれて、輪の中に戻される。
そのまま流されるみたいに並んで、また笑う。
カメラに向かって、いつもみたいな顔を作る。
これで最後。
そう思った瞬間、ほんの一瞬だけ上手く笑えなかった。
🦊side
ざわざわした教室の音が、少し遠くに聞こえる。
笑い声も、シャッター音も、全部同じ空間にあるはずなのに、どこか膜が張ったみたいにぼやけていた。
気づけば、少しだけ人の輪から外れている。
別に、意識して離れたわけじゃない。
ただ、なんとなく。
「……」
みんな、いつも通り楽しそうにしている。
DDが大声で笑って、じょぐがツッコんで。
その周りに自然と人が集まっていく。
その光景を、少し離れた場所から見ている自分がいる。
ああ、こうやって。
このまま、離れていくのかもしれない。
卒業したら、きっと今みたいに顔を合わせることもなくなる。
連絡を取ろうと思えば取れるし、会おうと思えば会える。
でも、今日で高校生活は最後。
今日が終わったら、距離が遠くなる。
そんな気がした。
陰キャ「…何してんの、こんなとこで。」
不意に、横から声が落ちてくる。
顔を上げると、陰キャさんが立っていた。
「別に」
短く返すと、陰キャさんは眉をひそめる。
陰キャ「別に、じゃなくて。呼ばれてたぞ」
「、、そう」
それでも動こうとしないと、軽くため息をつかれた。
陰キャ「ほら、こいって」
そう言って、当たり前みたいに手を引かれる。
強くもなく、でも迷いもないその動きに、少しだけ驚く。
「、、いいって、別に」
陰キャ「よくねえよ」
即答だった。
陰キャ「最後くらい、ちゃんといろよ」
その言葉に、ほんの一瞬だけ言葉が詰まる。
最後。
さっきから何度も聞くその言葉が、胸を奥に引っかかる。
「…別に、いなくても変わんないでしょ」
ぽつりと零した声は、自分でも思ったより小さかった。
でも、陰キャさんはちゃんと聞いていたっぽい。
陰キャ「変わるに決まってんだろ」
少しだけ強い声。
陰キャ「お前いないと、なんか締まんねえんだよ」
いつも通りの、少し雑な言い方。
でも、それが妙に真っ直ぐで。
「……なにそれ、、w」
思わず、少しだけ笑ってしまう。
その瞬間、さっきまでのぼやけた音が、少しだけはっきり戻ってきた気がした。
陰キャ「いいからこいって」
また軽く腕を引かれる。
今度は、さっきみたいに抵抗しなかった。
輪の中に戻ると、誰かが「遅い」って笑って、
そのまま何事もなかったみたいに会話が続いていく。
ああ、
完全に一人になるわけじゃないのかもしれない。
そんなことを、少しだけ思った。
体育館に、歌声が重なる。
何度も練習したはずなのに、本番のそれは少しだけ違って聞こえた。
揃っているはずの声が、どこか揃いきらない。
それでも、前に進んでいく。
🐒side
ずっと前を見たまま歌っていた。
こんなふうに、全員で真面目に歌を歌うことなんて、もう無いと思う。
ふざけて笑って、喧嘩して、どうでもいいことで騒いで、
そんな時間が当たり前みたいに続くと思ってた。
(このまま終わるの、なんか嫌だな)
ほんの一瞬だけ、そんなことを思う。
🐟side
少しだけ目を伏せる。
響いている声も、空気も、全部がはっきりと焼き付けていく。
さっきまでの時間も、今この瞬間も、
きっと全部、後で思い出になる。
(ちゃんと覚えておこう)
そう思いながら、また顔を上げた。
🦊side
歌いながら息を整える。
さっきまで胸の奥にあった不安は、完全には消えていない。
卒業した後、自分がどうなるかなんて、わからない。
ここを離れても、大学でちゃんとやっていけるかな。
(でも)
少しだけ、視線を横に向ける。
すぐ近くに、陰キャさんの姿があった。
(……まあ、なんとかなるか)
⚡side
いつもより少し真面目な顔で歌う。
隣に居るやつらの存在が、やけに大きく感じる。
毎日顔合わせて、適当に話して、それが普通だった。
でも、その“普通”が、今日で終わる。
(マジで、いなくなるんだな。)
胸の奥が少しだけ重くなる。
それでも、声は止めなかった。
🌻side
できるだけ明るく歌う。
最後くらい、笑って終わりたかった。
泣くのは、なんか違う気がしたから。
(あ、KUN先生泣いとるやん)
こっちまで涙が出てきそうだ。
歌声が、ゆっくりと重なって、そして離れていく。
最後の音が消えた瞬間、体育館は静かになった。
ほんの一瞬の沈黙。
そのあと、大きな拍手が響いた。
それで、やっと終わったんだとわかる。
もう戻れないんだ、と思い知らされる。
でも、
それでも、少しだけ思う。
この時間は…きっと __
先生の話が終わり、教室に戻ると、さっきまでの緊張が嘘みたいに解けていった。
ペニ「終わったな〜」
ペニガキがそう言い、椅子にだらっと座る。
「いやマジでな」
こうたん「マジで疲れた!!」
そんな会話がぽつぽつと続いていく。
さっきまでの空気なんてなかったみたいに、またいつも通りの声が戻ってきていた。
でも。
どこか、少し違う。
「…で、この後どうする?」
なんとなく言う。
特に意味のない、いつもの一言。
なのに、誰も直ぐには答えなかった。
陰キャ「帰るしかなくね?」
とーます「打ち上げとかは?」
ペニ「いや今日はだるい」
どる「うん、今日は疲れたかな〜、」
じょぐ「それな」
小さく笑いが起きる。
そのまま、また少し沈黙が落ちる。
誰も、立ち上がらない。
帰ればいいだけなのに、その“当たり前”がやけに遠く感じた。
黒板に目をやると、朝と同じ寄せ書きが残っている。
“世界政府”って大きく書かれた文字。
たくみ「世界政府って面白いな、w」
たくみくんがそう言って、また小さく笑いが重なる。
その空気が、やけに優しかった。
また、一瞬の沈黙。
かえ「じゃあ…」
ふいに、かえるくんが立ち上がる。
かえ「帰るか」
その一言で、止まっていた時間が動き出した。
どる「…うん、そうだね」
らーば「だね」
椅子の音が、順番に鳴る。
鞄を持って、正門に向かう。
いつもなら、ただの帰り道。
なのに、今日はやけに長く感じた。
「じゃ、またな」
そう言った。
軽い声。
いつもと同じ、なんでもない挨拶。
がの「またね」
それが、あちこちで返っていく。
当たり前みたいに。
明日も会うみたいに。
でも、もう。
同じ形で集まることは、きっと無い。
門を出る直前、もう一度だけ振り返る。
さっきまでいた場所。
笑い声が残っている気がして、少しだけ立ち止まる。
正解なんて、分からない。
この先、何を選ぶのが正しいのかも、きっとずっとわからないままなんだと思う。
それでも。
あの時間を一緒に過ごしたことだけは、
間違いじゃなかった、って言える。
そう思いながら、ゆっくりと学校を後にした。
『 卒業、おめでとう 』
image : 正解
コメント
1件
最後まで、ありがとうございました。お疲れ様でした!最高でした!