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いちごみるく
kz side
syから「彼氏と一緒に写真部入る!」なんて軽い調子で言われた日から、気づけばもう一週間が経っていた。
たった七日。けれど、妙に長く感じる七日間だった。
kz『はぁ…っ』
重苦しいため息が、静かな部屋の空気にじんわりと溶けていく。
sy『どうしたのため息なんてついて』
それに反応したsyが、昔からの変わらない柔らかな表情で覗き込んでくる。
言えるわけがないだろう。
その原因がお前たちだなんて__。
kz『てか、なんで俺が写真部なの知ってんの』
少しだけ視線を逸らしながら、話題を逸らすように問い返す。
sy『えー?優秀賞貰ってたじゃん』
当然のことのように、きょとんとした顔で返される。
――あの夏の日。
fuに半ば強引に連れて行かれた川辺。
照りつける日差しと、水面に反射する光。
その中で笑っていた、あいつの姿。
エメラルドグリーンの髪が、水のきらめきに溶け込むように輝いていた一瞬を切り取った一枚。
それを、なんとなく。
本当に、なんとなく総文祭に出した。
そして――たまたま。
本当に、たまたま優秀賞なんてものを取ってしまった。
あの時、嬉しさより先に頭を抱えたのをよく覚えている。
評価されたこと自体は、素直に嬉しかった。
でも、それ以上に――あの写真を知人に見られることの方が、どうしても落ち着かなかった。
fuにも見られて。
その上、syにまで知られていたなんて。
kz『syは今も、写真好きなんだな』
ぽつりと漏れた言葉に、syは迷いなく頷く。
sy『ずっと好きだよ。だって、kzが教えてくれたんじゃん』
真っ直ぐで、飾り気のない言葉。
その一言に、ほんの少しだけ口元が緩んだ。
rm『浮気か!sy!!』
バンッ、と勢いよく部室の扉が開かれる。
穏やかな空気を一瞬で吹き飛ばすように、あいつが現れた。
無駄に高い身長と、やたら通る声。
sy『んなわけないだろ。俺は一途だよ』
慣れた様子で手を振り払いながら、軽くあしらう。
rm『syは釣れないな』
sy『付き合ってんだから、もう釣られてるだろ』
あっさりと、なんでもないことのように言い切る。
嘘のない言葉。
だからこそ、重みがある。
俺は、こいつのこういうところが好きだった。
嘘が当たり前みたいに溢れてるこの世界で、ただ真っ直ぐに言葉を紡げるところが。
kz(でも、違うよな…)
syのことは好きだ。
けれど、それはきっと「友達として」の好きだ。
syが誰と話していようが、心はざわつかない。
でも――
fuが、誰かと話しているのを見ると。
特に、女子と笑っているのを見ると。
胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
kz『恋…だよな、、』
rm&sy『え…?』
二人の視線が同時にこちらへ向く
kz『え、なに…』
sy『kz、恋してるの?』
その言葉で、自分が口に出していたことに気づいた。
一気に血の気が引く。
kz『まあ、一応…』
sy『あの人嫌いのkzが、?!』
kz『うるせぇよ…』
隣に座り、嘘だろと言いたげな目を向けるsyを軽く小突く。
そんなsyに、rmはへばりついている。
sy『誰が好きなの?』
しかし、syはそんなこと気にもとめずに話を続ける。
kz『いやー、流石に…』
sy『言えないんならいいんだけどさ』
無理に詮索をしてこない。
これもsyのいい所、人嫌いな俺が一緒に過ごせた理由でもある。
kz『sy達はさ、クラスでもそんな感じ?隠したりしないの?』
聞いていいのかも分からない。
思わず零れたそんな質問。
sy『んー、俺がグイグイ行かなくてもrmが来るし、rmが言うから隠してないね』
〃『俺はrmのこと信頼してるし、好きだし、隠す必要もないかなって』
なんの照れもなく言い切る。
その関係が、少しだけ羨ましいと思った。
kz(俺は…fuに釣り合うのか、?)
勉強も運動もできて、顔もいい。
優しくて、周りもよく見てる。
kz(俺、勝てるとこひとつもないじゃん…)
胸が、じわじわと苦しくなる。
喉が締まるように痛い。
kz『あー、ごめん。俺帰るわ…』
syとろくに視線を合わせないまま、立ち上がる。
扉を閉める前に、rmの『追いかけなくてもいいのか?』なんて声が聞こえたけど、
syは無理に追いかけない。知っている。
小さい頃から一緒に育ったからこそ知っている。
小さい頃から一緒に育ったrmが知っているfuのこと。
高校からのぽっと出の俺が知っているfuのこと。
その差が急に重くのしかかる。
俺は、fuの何を知っているのだろう__。
校舎を出ると、空はすでに赤く染まっていた。
春の風が、どこか懐かしい匂いを運んでくる。
一人で歩く帰り道。
こんなにも静かだっただろうか。
kz『はぁ…会いた、、』
どのくらい歩いたのだろう。
いつもより静かな帰り道を重い足を引きずるように歩いていると…
ドタドタ__と、
大きく響く足音。俺は気になって後ろを振り返る。
fu『おーい!!kzー!!!』
見慣れた緑の頭が、こちらへ全力で走ってくる。
fu『はぁ、疲れた… なんで置いていくんだよ!』
〃『ちょっとそこの公園で休ませて』
俺が返事をする前に、無理やり手を引かれ公園へと連れていかれる。
kz『俺帰りたいんだけど』
本音とは真逆の言葉が口から出る。
本当は、fuに会いたかった。一緒にいたいはずなのに、それが苦しくてたまらない
fu『ちょっと俺の話聞いて行ってよ』
少しだけ陰りのある表情。
そんな彼はベンチに座り、俺を誘導するように隣を軽く叩く。
kz『話って何…』
少しの沈黙…
風が木々を揺らし、葉の擦れる音が小さく響く。
次の瞬間fuの口から発せられた言葉は――
fu『実は俺さ…会長から告白されててさ』
最悪なものだった。
こんなこと一番聞きたくなかったのに…
じわりと醜い嫉妬と独占欲が俺の心を支配する。
胸の奥が熱くなり、同時に冷たく沈むような感覚。
kz『…迷ってる?』
喉の奥が詰まるような感覚を押し殺して、なんとか言葉を絞り出す。
fu『うん。迷ってる』
短い返事。けれど、それが妙に重く響いた。
こんな最悪な状況でも、夕日に照らされるfuのエメラルドグリーンの髪が瞳が綺麗で…
そんな横顔から目が離せない。
fu『はじめて俺の外見とかじゃなくて中身を見て告白してくれたんだよ…会長』
その言葉に、胸の奥が強く軋む。
会長なんかより、俺の方がfuを知っている。
実はおっちょこちょいなところも、気配り上手で、人一倍周りを見てるところも。
緊張してる時、どうしようどうしようって言ってる割に完璧にこなす姿も。
全部見てきた。
全部が全部好きなのに…
会長なんかより、何倍も何十倍もfuのことが好きなのに__。
“男” だから…
fu『どうしたらいいと思う?…kz』
夕焼け色に染まったエメラルドグリーンの瞳と視線が通う。
逃げ場なんて、どこにもなかった。
kz『なんだよそれ。付き合えばいいじゃん…勝手に、、しろよ…ッ』
好きな人からの恋愛相談。これ以上に苦しいものはない…
ふと、溜まっていた涙が零れた。
気づいた時には、それはもう頬を伝っていた。
fu『kz…、?』
fuが焦った声を上げる。
でも、一度溢れたそれは止まることを知らなくて…
kz『最悪ッ…やめろッ…っ、ばか、』
涙を拭う余裕もなく、言葉だけが零れる。
その上、泣いてることなんて一目瞭然なのにfuは俺の頬を掴み無理やり、顔を覗き込んでくる。
逃げ場を塞ぐように、距離が一気に近づいた。
fu『その反応期待していい…?』
何か愛おしいものを見るような…
はじめて見るfuのそんな表情に戸惑い、困惑の声を上げる。
kz『はッ…何言っt…っ、』
俺が喋り終わるよりも先に――
ちゅっ__。
いつも見ていたその柔らかそうな唇が自身の唇に触れる。
一瞬、思考が完全に止まった。
kz『…………』
強大な困惑で涙が引っ込み、声も出ない。
ただ、心臓の音だけがうるさいくらいに響いていた。
fu『kzは、俺とこういうことするの…いや?』
その言葉を理解したと同時に、ぶわっと顔に血が集まり、火照り出す。
kz『はへ…ッ、//』
まともな言葉にならない声が漏れる。
恥ずかしさと焦りで固まっていると、fuは優しく俺を抱きしめる。
その腕の温もりが、さっきまでの苦しさを少しずつ溶かしていく。
fu『回りくどいことしてごめん…泣かせてごめん。でも、ほんとはkzのこと好きなんだよ…』
〃『今日kzの反応見て、諦めるか決めようとして…こんなこと、、』
久しぶりに感じるfuの腕の温もりとつらつらと並べられる言い訳。
喜びと苛立ちという感情が同時に自身の中で渦巻く。
kz『ほんとッ…最低…っ、』
〃『けど、好き………、そんなとこも…好き、ずっと…好きだったッ…っ、』
ぎゅーっとfuの俺を抱きしめる力が強くなる。
少し痛いけど、それがfuからの愛情に変わっているようで…
それでいて、fuのフルーツのような甘い匂いと抱擁、言葉、姿が五感全てを刺激して心地いい。
fu『ごめん。めっちゃ好き…』
そんなことを言ったかと思えば、勢いよく俺から体を離す。
fuの温もりを感じなくなったこの体が無性にfuを求める。
そんな反応に、自分自身でも驚く。
kz『ん、俺も好k…』
俺が言い終わる前に、再度唇を奪われる。
腕が腰に回される。何度も角度を変えてキスをされ、息継ぎもままならない。
kz『ん、はッ……はふ、っ…//』
息が乱れ、声が震える。
最後に少し長い口付けをしたあと、ゆっくりと唇を離される。
それと同時に、枯渇していた空気が肺に取り込まれる。
fu『ごめん、止まんなくなりそう…』
完全に余裕をなくしたオスの目に変わったfuに、ほんの少し高揚する。
kz『んぐ、ッ…//……また今度ね…?』
fu『うん…』
しゅんっ、と分かりやすく落ち込むfu。
その姿が可愛らしくて、衝動的にfuの額にキスを落とす。
kz『今度の土曜日…俺ん家来て、?』
fu『…………//』
分かりやすく照れて、固まるfuにくすっと笑いが漏れる。
そして、俺はゆっくりとベンチから腰を上げ、立ち上がると…
kz『初恋キラーさんは回りくどいし、意外と積極的みたいだから…』
〃『…ね?』
そのままfuの方を向き、少しだけ意地悪く言葉を投げかける。
fu『え、それってどういう…』
kz『秘密…!!』
まだ困惑したままのfuを置いて、俺は夕焼けに向かって走り出す。
風を切る音と、軽くなった足取り。
さっきまでの重さが嘘みたいだった。
胸が痛くなるほど苦しくて、でも――
確かに幸せだった、初めての恋だった。
―完―
⋆˳˙ ୨୧…………………………………୨୧˙˳⋆
どもです✨
これにて『初恋キラー』完結となります!!
ですが、
1、2話くらい過去を掘り下げたり、この後の家デートとかの話を番外編としていつか書きたいと思います✍🏻
次回は多分読み切り‼️
良ければ感想ください💬
コメントくれる方ほんとに𝑳𝑶𝑽𝑬です🫶🏻💕︎︎
(〜🌾・ω・)〜🌾
コメント
5件
コメント失礼します! kzさんの反応が可愛い!って感じて最高です!😭
あぁぁぁぁぁッ!!本当にありがとうございます😭この話唯一ふうかざで見れてた小説だったんですよ!!めっちゃ最高でしたッ!!嫉妬で泣いちゃうかざねさんもそれを踏まえて告白のこと決めちゃうふうはやさんもどっちも好きです!!家デートめっちゃ見たい✨今忙しくて見れないかな〜って思ってたんですけど、今日は時間あったので見れました!!これからも頑張ってください!!