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スミマセン。脱出計画が"指導"してしまってます…… 生意気言ってスミマセン……
メイド服を身につけた優が俯きながら歩いている。
そう、脱走計画が始動したのだ。
その傍らにはひよりがおり、まるで大事なわが子を守る親鳥のようだった。
それを警備員は微笑ましそうに見守る。
内気な静香であったが、その素直な性格から使用人に愛されていたのだ。
その愛すらもう無駄なものとなるだろう。
そんなことを考えながらひよりはすすむ。
玲の大切な愛し子の脱走を手助けしたのだ。
最悪親子ともども殺されるだろう。
だがそれでもいいと思うひよりの愛はやはりゆがんでいる。
優が愛するほど受けた側は歪んでしまう。
ましてや、長年愛されてきた玲が歪んでしまうのは無理ないことだろう。
屋敷を出た瞬間。
二人は走り出した。
元々逃げ出す場所は決めていた。
彼女の友人、飛翔の居場所である。
ところが…飛翔の家に着いた瞬間目の前が真っ暗になったような気がした。
そこに立っていたのは玲であった。
いつものように笑みを浮かべておりそれが逆に恐れを抱かせる。
「れっ…玲?」
「ゆーう! 待ってたよ!」
甘ったるい声が優の鼓膜に反響する。
「なっ、なんでここに…」
それに答えることなく微笑むだけであった。
そしてひよりを睨み、言う
「よく、うちの子猫を逃したね」
ひよりは涼し気な顔で
「お嬢様には勿体無い方と思いまして」
ひよりはどうせ死ぬんだ一矢報いたいと言う気持ちであった。
「まあ、いいよ 可愛い優の姿を見れた訳だしね」
「さあ、帰るよ 優」
「いっ、いや! 帰らない!」
優は走り出す。
しかし元々玲の方が足が早い、それに監禁生活で足腰が弱っていたせいもあってか簡単に捕まった。
優は涙目でじっとこちらを睨む。
それでも叩いたりしないのは優しさというより甘さだろう。
「おやめくださ…え」
途中で言葉を区切ったのは後頭部を思いっきり殴られたからだろう。
「大丈夫、今は殺さないよ」
「この記憶は忘れてもらう。
ああ、それと交通事故には気をつけてね」
遠回しな殺害予告を織り交ぜながら玲は楽しげに笑う。
「さあ、助けてくれる人はもういない 帰るよ ゆーう」
優は絶望で目を染め、静かに瞳を揺らしたのであった。
闇は光を覆ってしまった。
もう覆ることはないだろう